町工場の力をお客様に届ける ~ 株式会社BANTEC 番場岳志社長インタビュー①

BANTECの役割

大田区東蒲田を拠点としている株式会社BANTECは、協力会社となる町工場とのネットワークを築き、高付加価値製品を提供する企業である。アメリカンフットボールの現役の選手でもある社長の番場氏は、一つの製品の完成まで多くの障壁を取り払いながら、優れた技術をもつ町工場の力を顧客に届ける役割を担っている。連載の初回となる今回は、BANTECの事業について深掘りし、番場氏の人柄にも触れた。

(左)BANTEC 番場岳志社長、(中央) 協力会社の栃木製作所、青木新二工場長 、(右)同 青木新一代表

 

商社+αの事業とは

事業内容について教えてください。

番場氏:BANTECは、自社設備と大田区を中心とした協力会社のネットワークを活用し、製造業を中心としたお客様の製品開発~製造までを一貫支援しています。

大田区には独自の技術や高いレベルの技能を持った職人の方々が多くいらっしゃるのですが、独自性を保つために小規模経営を行っている会社がほとんどです。そのような会社に初めて仕事を発注する製造業の方は、どの会社にどのように依頼すれば分らないケースが多いようです。

BANTECではお客様と大田区の協力会社との間に立ち、町工場の特長を生かしつつ、QCD(品質・コスト・納期)のパフォーマンスを最大限に高められるよう事業に取り組んでいます。

 

事業形態としては、商社ということでしょうか

番場氏:商社の機能に加え、品質やコスト、納期といったQCDの観点で付加価値を高めています。また、自社に検査設備を保有し、協力会社から供給された仕掛品の最終検査を担当します。さらに、コストや納期のコントロールを確実に行うため、協力会社の生産管理や原価低減検討、そして材料供給までを担い、協力会社には製品加工に専念していただける体制を整えています。

図1 BANTECの生産体制

 

これまでどのような製品を手掛けられたのでしょうか。

番場氏:光学機器をはじめ、自動車や携帯電話の部品、オーディオ部品等で、多様な業種の製品に対応しています。主に取扱うのは金属や樹脂の機械加工や板金加工で、試作がメインですが量産も対応しています。お客様からの依頼を受けた際、その内容から各社の得意技術や納期を考慮し協力会社を選定して依頼します。

図2 当社製品例 (a)光学機器部品(b)携帯電話試作部品(c)板金加工部品(d)微細加工用治具

 

顧客や協力会社とはどのような関係性を持たれているのでしょうか。

番場氏:既存のお客様は13社で業種は多岐にわたりますが、私が一人で窓口対応しています。主力となる協力会社は5社、全体では10社ほどあり、それぞれ機械加工や板金加工といった得意分野があるのでお客様の依頼内容に応じて協力会社とチームとなり協力いただいています。

 

一人で全体を管理するのは大変ではないですか。

 番場氏:実際には私一人ではなく多くの方々の協力を得て、このような運営が成り立っています。技術のある協力会社のネットワークを強化し生産キャパシティを増やしていくことは大変な面もありますが、チームでお客様の期待に応える仕事にやりがいを持っています。近い将来、当社の人数を増やすことも検討しています。

 

どういった経緯でこの事業を始めようと思ったのでしょうか。

番場氏:もともとは大田区の*株式会社志村精機製作所で働いていました。のちに当社の主力協力会社となる栃木製作所ともこの時に出会いました。その後商社で経験を積み、2010年に独立し個人事業主として当社の基となる事業を始め、2011年に当社を設立しました。設立当初から、技術力のある大田区の町工場とパートナーになれたことと、友好的なお客様からの引き合いがあって事業運営の自信になりました。

 

*So-Zoでは、株式会社志村精機製作所のインタビューも行っています。

その1その2その3匠の一品

 

代表のパーソナリティ

体格ががっしりとされていますが、何かスポーツなどをされていましたか。

番場氏:アメリカンフットボールの選手として活動しています。高校生の時からなのでキャリアは長いです。いわゆるディフェンスのポジションで、相手を体で受け止め、勝利へ向かうための道中の壁を取り払うような役割です。

 

肉体的にも過酷なスポーツを現役でこなされているのですね!

これまでお話を伺っている中でも、スポーツマンらしい誠実なお人柄が感じられます。周りの方に印象を伺ってみましょう。

 

栃木製作所 青木代表:体育会系ということもあってか、性格がはっきりしていて仕事がやりやすいですね。また、展示会といった新しいことにも果敢に挑戦していく気概があります。礼儀正しくて誠実なところが、お客様に好かれていて、番場氏のパーソナリティで引き付けているところがあると思います。

図3 アメリカンフットボールをプレーする番場社長(photo by H.Saito)

 

BANTECの特徴

BANTECの強みは何ですか。

番場氏:高い技術力を持つ協力会社によって、お客様の希望通りの加工が可能な点と、QCDの観点で材料発注から検査・納品までの全体をサポートする当社がうまく組み合わさることで、提供価値を高めているところです。

 

どのように生産管理を行っているのですか。

番場氏:お客様から引き合いがあった際、加工する協力会社を選定します。

選定においては技術力に加えキャパシティも勘案しますが、協力会社の生産管理を当社が行っており業務を直接調整できるため、通常では断られるような納期の案件も柔軟に対応が可能です。大田区の町工場は分業体制が基本で、そのような町工場を複数コントロールすることは非常に手間が掛かりますが、そこを当社が管理するので、お客様のメリットは大きいです。

また、加工用の材料の在庫は持たず、都度購入して協力会社に供給します。そのため、製品形状を基に協力会社と相談して最適な材料を選ぶことができ、在庫を持たずとも材料費を抑えられています。

 

品質はどのように担保されているのでしょうか。

番場氏:生産時に協力会社で1次検査を行いますが、さらに高い品質を担保するために、当社では第三者の立場で2次検査を行います。町工場で精度の高い検査を実施することは難しい場合があるので、お客様の要望を満たすためには当社のような客観的で高精度の検査体制が必要です。当社では3次元測定器などの最新の検査装置を有しており、1/1000 mmのオーダーで品質管理が可能です。

図4導入している3次元測定器

 

 


事業内容          試作加工全般、金属精密部品加工、3D加工、精密板金加工、オリジナル製品の製作

設立年月          2011年5月

資本金              3百万円

代表者              番場 岳志

本社所在地      東京都大田区東蒲田2-12-3

電話番号          03-6336-6822

公式HP           http://www.bantec2010.com/

この記事の著者

齋藤宏晃

齋藤宏晃

中小企業診断士 2021年中小企業診断士登録。神奈川県在住。3児の父。 得意分野は製造業×管理会計。日本の産業を盛り上げたい想いで、プロボノを中心に診断士活動を行う。

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