町工場の力をお客様に届ける ~ 株式会社BANTEC 番場岳志社長インタビュー②

BANTECと共に歩む、大田区東蒲田の町工場 「有限会社栃木製作所」

前回は、大田区の町工場のネットワークを支える株式会社BANTECの事業を中心としてインタビューを行った。今回は、創業時からBANTECを支える大田区東蒲田の栃木製作所を紹介する。BANTECと現在の協力体制を築いた経緯、またこれからどのように共に歩んでいくのか、代表取締役の青木新一氏に話を聞いた。

(左)BANTEC 協力会社 栃木製作所の青木新一代表取締役、(右)同 青木新二工場長

これまでの歩み

栃木製作所の概要を教えてください。

青木氏:当社は1966年に父が創業しました。私は21才の時に当社に戻り、1981年から41年間、事業を続けています。創業当時は旋盤加工がメインでしたが、現在はマシニングセンターでの金属部品の切削加工を得意としています。これまで取り扱い実績がある製品は、車関係の部品や、半導体製造装置、OA機器といった装置の部品で、年間1000種類の部品の加工を行っています。当社の受注はすべてBANTECからの依頼案件となります。

 

どのような加工が可能なのでしょうか。

青木氏:マシニングセンターを使った切削加工においては、図面ではどのように加工するべきか分かりづらい製品も、栃木製作所なら加工できるとの評価を受けています。当社は治具を内製するので、加工難易度が高い高精度の製品にも対応できます。CADやCAMがなく加工工程設計が難しかった時代から、お客様の要望を実現するために加工方法を一生懸命考える文化があります。

 

卓越した技術力

職人の技術力を称えられて、表彰されているそうですね。    

青木氏:はい、「平成21年度(2009年度)大田区ものづくり優秀技術者表彰」の中で、「大田の工匠100人」に選ばれました。この賞は推薦で選ばれるもので、他社が敬遠する難加工技術の高さを評価していただいたようです。

図1 青木新一代表が受賞された、「大田の工匠100人」の記念品

 

 

同賞における選出理由の中には、顧客の評判が高かったこともあったと思います。顧客の要望にどのように応えてこられたのでしょうか。

青木氏:光学機器メーカーの取引先の要望で、1990年代から検査に力を入れていました。当時の他の町工場では、十分な検査ができないことが多く、例えば、ねじ穴加工後にねじゲージで検査をせず、タップが立ってさえいればいいという、お粗末な考えも一部ありました。そのような環境でも、当社は高い品質を担保することでお客様の要望に応え、評価されたのだと思っています。

 

最大の危機

これまでの事業を振り返ってみていかがですか。

 青木氏:浮き沈みが激しかったです。

父の代ではオイルショックによって車関係の受注が途絶え、一時期貸工場にしていました。代替わりしてから、半導体製造装置の量産部品を中心として一定の受注を得られるようになりました。半導体装置はステッパーと呼ばれる半導体露光装置で、量産部品を生産していましたが、半導体バブルがはじけたころ、受注が途絶えてしまいました。

 

どのように受注減を挽回したのですか。

青木氏:新規顧客の発掘には苦労しました。

色々な伝手を使って受注をいただけないか声をかけていたのですが、ある時、当社で使っていたコピー機の営業に頼み込んで、コピー機の部品メーカーを紹介してもらい、ありがたいことにそこから試作部品の引き合いがありました。競合他社がいましたが、当社でしかできない加工内容があったので受注を獲得することができ、その後腕の良さが認められて、継続的な案件をいただけるようになりました。当時は、日本の光学機器メーカーが新たなOA機器を開発するという時代で、多くの試作案件をいただいて、経営が安定するようになりました。OA機器の部品の製造は要求が厳しいものが多く、部品ごとに工夫しながら乗り越えていき、技術力も向上していきました。

図2 (左)奮闘する若き青木新一代表(出所:平成21年度(2009年度)大田区ものづくり優秀技術者表彰冊子より)、(右)長年愛用するマシニングセンター

 

 

BANTECとの関係について

BANTECとはどのような経緯で関係を持つようになったのでしょうか。

青木氏:BANTECの番場社長が志村精機さんで勤務されていたころからの縁です。志村精機さんからは多くの案件をいただいており、主要な取引先の一つでした。番場社長が独立されるということで、当社の工場の一部をお貸しし、二人三脚で事業を進めています。

 

BANTECに期待することは何でしょうか。

青木氏:これまで通り、検査体制を充実して高い品質の維持管理を担ってもらいたいです。加工した人が検査すると、どうしても思い込みから測定ミスが発生してしまうので、現在の体制は理想的だと思います。

また、コストについては、下請けメーカーにとって、昨今は販売価格の低減要求がかなり厳しい状態です。感覚的には30年前の半分の販売価格になっているイメージです。そのような状況で継続的な受注を取って利益を上げていくことは難しいので、販価に反映できるよう付加価値を高めていきたいですね。


事業内容          試作加工全般、金属精密部品加工、3D加工、精密板金加工、オリジナル製品の製作

設立年月          2011年5月

資本金              3百万円

代表者              番場 岳志

本社所在地      東京都大田区東蒲田2-12-3

電話番号          03-6336-6822

公式HP           http://www.bantec2010.com/

この記事の著者

齋藤宏晃

齋藤宏晃

中小企業診断士 2021年中小企業診断士登録。神奈川県在住。3児の父。 得意分野は製造業×管理会計。日本の産業を盛り上げたい想いで、プロボノを中心に診断士活動を行う。

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