工場から会社へ 社員にモノづくりの喜びを 技術屋の新たな地平のために(有限会社本間製作所①)

旋盤加工・フライス加工・複合加工の技術集団 有限会社本間製作所

金沢シーサイドライン南部市場駅から歩いて10分、巨大な工場や倉庫が立ち並ぶ工業団地にたどり着きます。団地の一画に小さいながらも存在感を示すのが、有限会社本間製作所です。1988年の創業以来、旋盤加工・フライス加工・複合加工に特化した事業を展開。多品種中量、あらゆる金属加工品を提供できる同社ですが、多くの苦難を乗り越えたからこその今であり、技術屋の新たな地平を見るべく、その歩みを止めることなく挑戦を続けています。

第一回目の今回は、創業からこれまでの沿革、事業の内容など、有限会社本間製作所について、二代目代表取締役の本間政貴氏(以下、本間氏)に話をうかがいました。

有限会社本間製作所 代表取締役 本間政貴氏

 

有限会社本間製作所とは

御社の創業からこれまでの沿革について教えてください。

本間氏:有限会社本間製作所(以下、当社)は、先代であり、私の父である本間正純が1988年に立ち上げました。もともと私の祖父が川崎市で旋盤屋を営んでおり、婿である先代が祖父のもとで修行の後、横浜市泉区で創業に至りました。当初より旋盤加工をやっていたわけですが、仕事は祖父の会社より受けており、基本的には大手メーカーの医療機器の部品で、売上の9割を占めていました。その後、事業の拡大に伴い工場が手狭になり、2004年に現在の横浜市金沢区に拠点を移すこととなります。泉区では工場は賃貸でしたが、引っ越しをして自社物件となりました。さらに月日がたち2013年、先代から私へ代表を引き継ぐこととなり、今に至ります。なお、現在では川崎の祖父の会社は叔父が代表を務めております。

 

本間氏は学校卒業後、すぐに御社に入社されたのでしょうか。

本間氏:いいえ。私が中学に入るころにはバブルが崩壊しており、景気が悪く世の中がどんよりしていました。類に漏れず家業も厳しい状況でした。学生ながらに稼いでこなければと思い、わからないながらもテレビや新聞からITという言葉にたどり着きました。まだ、PCもインターネットも一般家庭に普及していない時代でしたのでITの専門学校に進学させてもらい、そこからITの会社に就職しました。在籍中も家業のことがずっと気になっていました。3年ほど在籍し、社会人経験を積んだところで何を勘違いしたか、「私が家業に戻れば、厳しい状況も何とかなるのではないか」と思ってしまった訳です(苦笑)。

勤めていた会社には良くして頂いておりましたので頭を下げて退職させていただき、当社に入社しました。

 

御社の事業について教えてください。

本間氏:当社は旋盤部品の製造を主とし、旋盤部品に+α(フライス加工や偏芯加工など)の加工を加えた複合加工品を多く手掛けております。それらをNC上で出来る限り完成品にできることが、当社の強みだと思っています。また、自動給材機(バーフィーダー)を使って、バー材(棒鋼)からの連続加工も得意としています。簡単に言うと、金太郎あめのように連続加工をしています。創業当初より医療機器関連の部品を製造してきたこともあって、単品加工から量産加工まで、幅広い生産対応も可能です。

バー材。金太郎あめのように連続加工することが得意

 

医療機器関連の部品を製造してきて、多品種中量生産を可能としたのはなぜですか。

本間氏: CTなどの人間を診断するための装置の部品ですから、決して誤作動や故障を起こす原因をつくってはいけません。現場で使うためには厳格な手続きが定められており、試作を行い、医療機器として認可申請を行います。認可が下りるまで1年、あるいはそれ以上かかったりします。ようやく認可が下りると正式に生産することになるのですが、その数量はロット数十個、数百個、数千個の場合もあり、部品によってさまざまです。そうした背景もあって、単品にも量産にも対応できる必要があり、自ずと今の体制になりました。単品の試作屋さんと、数万個の量産屋さんの二極があって、当社はその二極の隙間を狙っていこうと考えています。

 

現在でも医療分野が売上げの大半を占めているのですか。

本間氏:当初は医療分野が9割を占めていました。ここ数年で言うと、3~4割となっています。かつて、海外転注やユニット発注など様々な動きの中で、大きく受注が落ち込んだ時があり、過度な依存の怖さを知りました。展示会等であえて違う業種のお客様を増やしていって、リスク分散の観点でこうなった形です。医療分野以外の業種は本当にばらばらです。偉そうに選べる立場ではないですが、出来る限り業種をばらけさせたいという思いがあります。お客様は全体で100社くらいお付き合いさせて頂いております。ただ、年に一回くらい発注されるお客様もいますので、アクティブに動いているお客様はそのうち3割くらいでしょうか。

 

お客様の地域はいかがですか。

本間氏:関東圏が圧倒的に多いです。もともとのお客様よりご紹介して頂く事が多いですし、緊急対応が必要な時など近場の方が良いと言うお客様は多いかと思います。ただ、最近では富山県や京都など西方面のお客様から引き合いがあったりと、少しずつ遠方のお客様も増えてきています。

 

そのような遠方のお客様からの問い合わせがあるなど、御社はどのように販路開拓をしているのでしょうか。

本間氏:販路開拓については、展示会、ホームページ、ご紹介、営業と二人で開拓するなどしています。展示会は、テクニカルショウヨコハマに毎年出展していて、もうかれこれ10年ほど出展を続けています。毎年さまざまな出会いがあり、多くの取引などにつながっています。ホームページでは、こちらが発信する内容とお客様のニーズが一致するように心がけ、多品種中量で生産ができることをアピールするため、具体的な加工品事例を画像や動画を使って紹介するコーナーを設けています。富山のお客様もホームページから「特殊ネジ」をキーワードに当社にたどり着いて頂けたようです。

毎年テクニカルショウヨコハマに出展

 

ここ最近の御社の売上や利益はいかがでしょうか。

本間氏:やはり物価高騰は厳しいです。鋼材価格が一昨年(2022年)から大きく上がり、電気代も上昇しています。月に10万円以上電気代が上がっています。さらに人に関するところで、賃上げの流れや有料広告を出して人集めをしなければいけない。あらゆるコストがプラスとなっています。現状では景気後退の流れもあり、踏ん張りどころだと思います。世間の空気も少し元気がないように感じるので、社内は皆で盛り上げながら私の入社時のころの空気に戻らない様にしたいと思います。

 

入社時の空気とは一体どういったものなのか、次回お聞かせください。


業種   金属製品製造業(旋盤加工・フライス加工・複合加工の機械加工業)

設立年月          昭和63年4月2日

資本金              5,000,000円

従業員数          7人

代表者              本間政貴

本社所在地      神奈川県横浜市金沢区鳥浜町2-62

電話番号          045-778-6674

公式HP           https://honma-ss.co.jp/

この記事の著者

山崎貴彦

山崎貴彦中小企業診断士

群馬県出身、群馬県在住。大学卒業後、地元の農業協同組合に就職。融資審査、債権管理、経営企画、各種会計、リスク管理など幅広い業務に従事する。2023年に経営コンサルティング会社へ転職し、中小企業を中心とした経営支援に従事。2022年中小企業診断士登録。趣味はサッカー・旅行。

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