一本のシャフトに世界を描く ~確かな技術と思い~ (岩城フィルム化工株式会社 インタビュー③)

これからも「人」とともに歩んでいきたい

スチールやカーボンのシャフトへの特殊塗装を行う岩城フィルム化工株式会社は、昭和31年に創業しました。以来多くの人や地域とのつながりの中で事業を続けてきました。「人」が大切なのは今も昔も変わりません。そして、会社や自分を育ててくれた地域への思いはますます強くなっています。

第三回目の今回は、当社が大切にしていることや思いについて、代表取締役の岩城大輔氏に話をうかがいました。

岩城フィルム化工株式会社 代表取締役 岩城大輔氏

 

「人」とのつながりが販路の拡大の近道

販路を広げるためにどういったことをされていますか。

岩城氏:一つは当社ホームページへのお問い合わせです。当社で対応できそうな内容であれば、こちらから出向くか、当社にお越しいただいて一緒にサンプルを見ながら打ち合わせすることで、新たなお客様を獲得しています。

もう一つが、毎年横浜で行われている「ジャパンゴルフフェア」へ行くことです。当社はゴルフメーカーさんの商品を塗装するのが生業で自社製品はなく、当社が出展することはありません。しかし、そのフェアには日本全国のゴルフメーカーさんが集まります。また、夜には関係者の会合もあります。そういった場所に顔を出し、塗装のご要望がある企業を紹介していただき、後日商談をするといったやり方をしています。販路を開拓するのも業界内の人たちとのつながりが大切だと実感しています。

 

販売面ではどういった課題がありますか。

岩城氏:やはり価格です。材料費や運賃の高騰が続いていますが、5~10%だった値上げ幅が30%程度へと大きくなっています。さらに値上げの頻度も高まっています。納入先に値上げを依頼して認めてもらっても、すでに次の値上げの依頼が原材料メーカーさんから来ている、そんな状況に直面しています。

運送費も同様に高騰が続いています。これは製造原価ではありませんので、製品価格を上げずに運賃を外出しにして見積りするなど工夫しています。しかし、納入先の事情によっては製品単価に乗せざるを得ないケースもあります。その場合、運賃相当分も製品価格が上昇してしまう悩ましさがあります。もちろん当社としては、研究開発を通じて技術力を磨き、より付加価値の高い製品を提供することで満足度を高めていきたいと考えています。

 

付加価値の高い製品を生み出すには従業員の方々の技術も大切だと思います。どのような教育をされているのでしょうか。

岩城氏:一概に塗装と言っても当社の塗装は車や外壁の塗装と違い、特殊な技能です。過去の経験は忘れてもらい、一から覚えられるよう丁寧に指導します。その意味では未経験者でも十分働ける職場です。

シゴキ工程:塗料カップの下のゴム穴にシャフトを通すことで塗料を塗布し、引き抜きながら余分な塗料をシゴキ取る工程。引き抜くスピードで塗料の厚みを調整する技が求められる。

最初の3か月は仕事の流れをつかむために試用期間として、材料を拭いたり袋詰めをしたりなどの簡単な作業から始めてもらいます。そして周りの従業員と会話をしながら仲良くなってもらい、1、2週間たった頃から専門的な工程に入ります。当然人には向き不向きがありますので、試用期間を通してさまざまな工程を学びながら自分に合う仕事を見つけてもらいます。そして最終的に、この仕事に魅力を感じ、ここで腕を磨きたいと思った方に入社していただきます。その後は弊社ロゴが入ったオリジナルジャケットを身に着けてもらい、自分に合った技術を伸ばせるようにしていきます。

最近は従業員も若い方が大分増えてきました。コミュニケーションも仕事の後の遊び方も様変わりして、飲みに行ったりするだけではなく、まっすぐ家に帰りオンラインゲームをつないで遊ぶなど多種多様になりました。時代ですね。

当社の作業ユニフォーム:背中のロゴ(左)

当社の作業ユニフォーム:左胸のロゴ(右)

 

社長が会社経営において一番大切にされているものは何でしょうか

岩城氏:それは間違いなく人です。まずは何と言っても従業員の皆さんです。当社で働くことにやりがいや喜びが感じられ、それによって給料が上がっていき、この会社で働いていてよかったなと思える会社にしたいです。そのためには現場はなるべく工場長に任せて、私は仕事を取る方と、万一何かあった際に頭を下げる方に徹するようになりたいと考えています。

次に地域の方々です。当社は70年近くこの地域で事業を営ませてもらってきました。葛飾の産業とともにあったわけです。ですから、自分一人ができることは限られているとしても、この地域で私と同じような2代目社長や、自分で会社を起こした方々との交流を通して、地域全体を盛り立てていければと考えています。

葛飾区には多くの町工場があります。その仲間たちとともに何かを仕掛けていくことで、もっといろいろなものが生み出せると信じています。

 

当社独自の世界観を形にしたい

そんな社長が今後、取り組んでみたいことは何でしょうか。

岩城氏:丸い棒以外のものを作ってみたいです(笑)。それは四角いものを塗りたいということではなく、自社ブランドの完成品を世に送り出せるようになりたいということです。当社は塗装業ですので、お客様の製品に塗装することが生業です。もちろんそれが一番大切な仕事であることには変わりはありません。しかしそれだけですと、当社独自の製品として見せられるものがないのです。確かに、いきなり利益を得るのは難しいかもしれません。ですが「これが私たちの製品です」と誇りを持って世に送り出し、当社のことを知っていただけるようになりたい。そしてより多くのお客様へ当社の技術をお届けしたい。そう思い、私たちならではの何かを日々探し求めています。

 

有り難うございました。御社ならではの、はっとさせられる製品を楽しみにしています。

シャフトの色見本:色とりどりに光るシャフトに見ていて飽きることがない

 


会社名:岩城フィルム化工株式会社

業種   ゴルフシャフト・釣り竿などへの装飾塗装

設立年月          昭和31年12月25日

資本金              10,000,000円

従業員数          16人

代表者              岩城大輔

本社所在地      東京都葛飾区東四つ木2丁目8-2

電話番号          03-3691-2397

公式HP           https://www.iwakifilm.co.jp

この記事の著者

湯山聡

湯山聡

中小企業診断士 埼玉県出身。1973年生まれ。早稲田大学卒業。ITコンサルティング、マーケティングに従事後、電機メーカーに転身し商品企画、新規事業開発に携わる。地域活性化を貢献したいとの思いから中小企業診断士を目指し、2021年11月に登録。現在は、中小企業の新規事業立ち上げや経営革新計画の支援を中心に活動中。東京都中小企業診断士協会 城南支部所属。

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