社員に経営者視点を持ってもらうには?
~「お金のブロックパズル」を使って会社の利益を自分ゴト化する~
みなさんの会社では、こんなことはないでしょうか?
・会社が赤字なのに、社員は平気な顔をしている。危機感が足りない。
・材料の残りや、使いかけの消耗品をどんどん捨ててしまう。もっとコスト意識を持って欲しい。
・決められたことはきちんとやるけど、新しい提案が少ない。もっと高い視点で、改善提案をして欲しいのに。
どうすればいいのか…とお悩みの社長さんは多いようです。
今回は、社員が経営者視点を持つにはどうすればいいのか?何がハードルになっているのか?を考えてみたいと思います。
自分の給料はどこから生まれているのか?
「会社が赤字でも、自分の給料は変わらない」「今までなんとかなっているし、今後もなんとかなるんじゃないの?」と考える社員も多いようです。
会社が赤字になると、どこからかお金を調達し赤字分を埋め合わせないと、社員に給料を払うことはできません。社長は、資金繰りで毎月苦労しているのに、社員にはその苦労が伝わっていない。そもそも、そんなことを悟られたくないと社長が陰で頑張ってしまうことも多いようです。
会社の現状を全てオープンにすることが正解とは言い切れませんが、危機感を持ってもらうためには、ある程度の情報開示が必要です。
「お金のブロックパズル」で、自分の給料・ボーナスの源泉を確認してみると…
前回ご紹介した「お金のブロックパズル」を使うと、会社全体のお金の流れが一目でわかる。社員にもわかりやすいと好評です。こちらのリンクからおさらいしてみましょう。
社員の給料・ボーナスは、人件費のブロックです。ちなみに、社長の役員報酬も人件費のブロックに含まれています。
そして、人件費はどこから生み出されるかというと、粗利から配分されていることがわかります。
仮に、粗利より人件費の方が大きい状況では、確実に赤字(利益がマイナス)です(図2)。
現状の数字を確認して、本来はどのくらいの粗利が必要なのか、話し合ってみましょう。
赤字の場合は一目瞭然で、「お金のブロックパズル」が正方形ではなく、下に出っ張った形になります。こうならないようにしたいのです。
赤字が続くと、自分たちはどうなるのか?
赤字ですぐに会社が倒産するわけではありませんが、資金調達が追い付かず、手元資金が尽きた時は雇用を守れなくなります。
赤字が許されるのは期間限定です。何年も赤字続きでいいわけがありません。赤字になった場合、いつまでに黒字化するのか、具体的な目標・計画を社員にも伝えることが大切です。
社員教育の中で、会社のお金の流れや現状の数値について伝える。会社が永続し、社員が安心して働き続けるにはどれだけの利益が必要かを理解し、一緒に頑張る気持ちを育てたいものです。
社員一人一人が出来る貢献とは?
では、なぜ社員は自ら動こうとしないのか。個別事情もあると思いますが、「自分一人が頑張ってもどうにもならない」という諦めや、「自分が何をすれば会社の状態が良くなるのか、わからない」という理解不足が原因かもしれません。結果的に、会社のことが他人ゴトになってしまい、本来の力が発揮されていないとしたら、とても残念なことです。
では、社員が経営者視点を持ち、会社の利益を自分ゴトとして捉えるには、どのような手段が効果的でしょうか?
一つの手段として、「お金のブロックパズル」を使って、会社全体のお金の流れと個々の社員の役割を結びつけてみましょう。自分が頑張ったら会社にどのように貢献できるのかを、数値で見えるようにするのです。
仮に、売上が3%増加、粗利率が1%増加、労働分配率が1%減少、その他固定費が1減少したら、会社の利益はどれだけ増えるでしょうか? 前回の記事も参考に計算してみてください。
各ブロックの小さな改善を積み重ねることで、利益は5から7.8へ、56%増と大きな成果につながります。各ブロックについて「このくらいは、やれば出来そう!」と思える数値を目標にするのがポイントです。
ちなみに、労働分配率を1%減少(すなわち1%の生産性向上)させても、人件費の絶対額は25から25.7へ増えています。このことから、粗利の増加と労働分配率の減少(生産性向上)をセットで行えば、生産性を向上しながら人件費(社員の報酬)を維持・増加できることがわかります。
「お金のブロックパズル」は、会社の組織図でもある
「お金のブロックパズル」の各ブロックは、会社の組織図に対応していると言えます。
例えば、売上を増やすのは営業、商品企画・開発、サポート担当の役割
変動費を減らし、粗利率を上げるは、仕入れや生産担当の役割
労働分配率を下げる(生産性を上げる)のは、人事や生産担当の役割
その他固定費を減らすのは、管理部門の役割などです。
このように各社員が、どのブロックに対して貢献できるかが視覚的に理解できると、会社全体に対する自分の役割が明確になります。範囲や影響する度合は違うかもしれませんが、各自が貢献できるブロックがどこかにあるはずです。
間接部門の社員の方には、間接的な貢献を言葉にしてもらうことがよいでしょう。たとえば営業サポートのスタッフの方は、営業の売上増加に間接的に貢献しています。直接的でなくても、一人一人が会社全体の数字に関わっているという実感を持つことが大切です。
仕事には、自分一人でできること、チームでできること、複数のチーム・部門が協力して成し遂げることなど、色々なレベルがあります。
部署やポジションに関わらず「お金のブロックパズル」を一緒に見ながら、各自の貢献について話し合ってみると、みんなが協力して利益を生み出していることがわかります。自分にできることと貢献度合がわかれば、やる気も出て、もう他人ゴトとは思えません。
会社全体の数字と、各自・各部門の活動状況を結び付けて話し合う場を定期的に持つと、経営者視点を持つ社員が増えていきます。
「うちの社員はどうかなぁ」「そんなにうまくいくかな?」と最初は懐疑的だった社長さんも、実際にやってみると社員が自発的に動き出し、若手社員から面白い提案が出てきたりして、期待以上の効果に驚かれることもあります。
あなたの会社でも、社員と一緒に考える活動を始めてみませんか?