工場から会社へ 社員にモノづくりの喜びを 技術屋の新たな地平のために(有限会社本間製作所 インタビュー③)

本間製作所のこれから、目指すところ

金沢シーサイドライン南部市場駅から歩いて10分、巨大な工場や倉庫が立ち並ぶ工業団地にたどり着きます。団地の一画に小さいながらも存在感を示すのが、有限会社本間製作所です。1988年の創業以来、旋盤加工・フライス加工・複合加工に特化した事業を展開。多品種中量、あらゆる金属加工品を提供できる同社ですが、多くの苦難を乗り越えたからこその今であり、技術屋の新たな地平を見るべく、その歩みを止めることなく挑戦を続けています。

第三回目の今回は、本間製作所の数々の取り組み、本間製作所の目指すところについて、二代目代表取締役の本間政貴氏(以下、本間氏)に話をうかがいました。

有限会社本間製作所 代表取締役 本間政貴氏

 

絶え間ない挑戦

前回、就任当時から売上が倍増したものの、そこに安住することなく、さまざまな取り組みをされているとのことでした。どのような取り組みをされているのでしょうか。

本間氏:売り上げが上がっても、それはお客様に恵まれたからだと思い、慢心しないように気を付けています。これは社内メンバーにも言っています。加工屋として満足せず、次の加工技術にチャレンジを続けています。

次に、営業に関する取り組みです。新しいお客様、新しい製品を獲得し続けることは健全な経営のために必要だと感じています。6年ほど前に営業として1名を仲間に迎えました。私は町工場の父のやり方しか知らず、営業のあるべき形は手探りであるからこそ、彼と一緒に周って勉強しています。

 

御社はどういった組織体制になっているのでしょう。

本間氏:社員7人、役員3人の全部で10人の会社です。製造4人、出荷2人、営業1人で、製造は現在グループ制を敷いています。当社は旋盤でも大きく分けて自動盤と主軸固定型旋盤(ターニングセンタ)の2種類を備えて、幅広いニーズに応えています。技術的に自動盤と主軸固定型の両方を習得することが難しく、このすみ分けを使って、2つのグループに分けています。グループと言っても製造は4人ですから2人ずつに分けるしかなく、組織図が完全に機能しているとは言い切れません。しかし、今後規模が大きくなり階層分けが必要になった時、いきなりリーダーをやれと言われても無理ですから、今のうちに少しでもマネジメントについて知ってもらいたい、そんな思いでグループ制にしています。

設備の段取りをする社員

 

デジタル化の取り組みのひとつとして、独自の生産管理システムがあるそうですね。

本間氏:3年ほど前に、独自の生産管理システムを作り導入しました。このシステムは受発注管理だけでなく、川崎の叔父の会社、当社の間で業務連携ができ、業務効率を高めています。メーカーからの月700件の取引も本システムをフル活用しています。また、在庫管理、図面管理などの機能も持たせていて、社員の実績管理にも役立てています。作業指示書に担当者の名前や検査記録を記載しますが、同時に品物を上げてもらい良品をカウントしその数を実績登録します。こうすることで、ある図番の良品実績をデータとして収集できるようになり、人事評価に役立てています。

 

月700件とは件数として相当多い印象です。見積書の作成はどうされているのですか。

本間氏:出来るだけ継続案件は継続見積の適用をお願いしています。見積書の作成は基本的に私が担当していますが、これではまずいと思い技術講習会で共有したところです。また、以前はすべて私一人で見積書を作成していましたが、案件化しないものでも面白い図面がたくさんあって、そうした図面の工程を社員と一緒に考えたくて、最近では社員にも意見を聞きながら見積をしています。

当然その分作成に時間もかかりますが私にも社員にもプラスになっています。

 

「技術屋が技術で飯を食う」ために

本間製作所の将来の展望についてお聞かせください。

本間氏:私が代表就任時から売上は増加したわけですが、いろいろな要因が重なり、ここのところ減少しています。人間って単純で弱いと思うのは、一時期良い結果が出たら、油断しているつもりがなくても、どこかで隙ができてしまう。だから客観視する目と努力を常とすることを心掛けなければいけないと痛感しています。製造業自体が逆境や変革の中にありますが、ここで下を向いても何も変わりませんから、今までと違う世界が広がっていくのだと前向きに捉え、あと3年で売上を1.5倍にすることを目標にしています。そのために、みんなで創意工夫し、機械も導入しながら、目指していきます。

 

目指している業界や市場はあるのでしょうか。

本間氏:化石燃料から電気に変わっていく流れは今後ますます加速していくと思います。その中では、削り屋としては銅合金の加工技術向上を目指しています。削り屋からすると、銅のような粘りの強い材料は少しネックなんです。銅でも難なく連続して削ることができれば強みになり、電極などを扱う市場にアピールできます。ほかにも、六角穴にチャレンジしています。六角穴は従来であれば、量産物であればプレスでドカンドカンと大量に加工していくのですが、お客様は単品物を希望されています。そうするとプレスでは採算が合いません。切削でも小径の六角穴であれば専用ツールみたいなものはあるのですが、対辺が17㎜の六角穴だとツールを使えず、今は工場長の主軸固定型グループが集まって、どう作成していくのが良いか立ち上げをやっているところです。こうした前向きな取り組みをコツコツ続けて、今の苦しい状況を好転させていきたいです。

 

最後に今後成し遂げたいことについて、お願いします。

本間氏:「技術屋が技術で飯を食う」という王道を素直な形で実現できれば理想です。技術の中身は変わっていきますし、ライバルもいて険しい道のりですが、独自の発想を信じて貫けば一線を越えられると思います。私はモノづくりに喜びを感じてもらいたいという思いが一番にあります。「俺はこんなモノをつくれるんだ」と、やりがいを感じて胸を張って言える、そんな人を一人でも多くしたいと思っています。だから、当社では技術を伸ばした者にはしっかりと評価し、もっと高みを目指してもらうようにしています。お客様や工業会の先輩後輩、川崎の叔父、社内メンバーなど周囲に感謝を忘れず、慢心せずコツコツと積み上げていき、モノづくりに喜びを感じる技術屋を増やしていきたいと思います。

 

「技術屋が技術で飯を食う」 理想実現に向け遠くを見る本間氏


業種   金属製品製造業(旋盤加工・フライス加工・複合加工の機械加工業)

設立年月          昭和63年4月2日

資本金              5,000,000円

従業員数          7人

代表者              本間政貴

本社所在地      神奈川県横浜市金沢区鳥浜町2-62

電話番号          045-778-6674

公式HP           https://honma-ss.co.jp/

この記事の著者

山崎貴彦

山崎貴彦中小企業診断士

群馬県出身、群馬県在住。大学卒業後、地元の農業協同組合に就職。融資審査、債権管理、経営企画、各種会計、リスク管理など幅広い業務に従事する。2023年に経営コンサルティング会社へ転職し、中小企業を中心とした経営支援に従事。2022年中小企業診断士登録。趣味はサッカー・旅行。

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