町工場発のオリジナル商品と金属加工でお客様へ貢献(有限会社ミツミ製作所 代表取締役社長 山田賢一様 インタビュー②)

臨機応変に時勢に乗ることを大切に

有限会社ミツミ製作所は葛飾区立石の町工場で設計・表面処理・組立も行うCNC自動旋盤を使った金属加工業である。部品加工のみならず、個人向けのオリジナル商品であるコマやけん玉にもファンが多く、町工場発の製品として葛飾ブランドの認定も受けている。本記事では全三回で代表取締役社長の山田賢一氏に話を伺っていく。第二回では、パートナー企業とのオリジナル商品の開発の取り組みや同社の強み・特徴について取り上げる。

有限会社ミツミ製作所 代表取締役社長 山田賢一氏

 

パートナー企業と協力したオリジナル商品展開

オリジナル商品の販売にはBASEやECサイトを活用されているようですが、どのように取り組んでいますか

山田氏:オリジナル商品はパートナー企業との共同開発製品で、ECサイトBASE(ベイス)での販売は私が管理をしていますが、他のECサイトでの販売はパートナー企業が主導してくれています。当社のような「町工場との共同開発」を一つのブランドとしてPRしてもらう一方で、製品そのものに魅力を感じてくださるファンのお客様に刺さるような動画や冊子など、販売促進用資材の製作などを協力して頂いています。手間やノウハウが必要な部分を引き受けて頂けるので、大変助かりますね。製品はふるさと納税の返礼品として使って頂くこともあります。クラウドファンディングサイト「Kickstarter」で多くの支援を頂いた多機能コマ「Yen Spin」もパートナー企業の方に多大な協力をいただきました。

 

オリジナル商品の開発拡大はどのように行ってきたのでしょうか。

 山田氏:パートナー企業との共同開発製品という形をとることが多いですね。例えば、けん玉の「大空66%」は、日本けん玉協会公認の競技用けん玉「大空」のミニチュアをアルミの削り出しで製作するコンセプトをヨーヨーショップスピンギア(以下、スピンギア)様から頂いて、どこまで精工に作れるか現場と調整しながら仕様を固めました。他にもスピンギア様とNSKマイクロプレシジョン株式会社と3社の協力で何年も連続して共同開発製品を発売しています。地球ゴマの「TOKYOジャイロ」もその一つです。地球ゴマは、昔は学校の教材に必ずあったものですし、このTOKYOジャイロは一度回すと20分くらい回り続ける特徴を持っていて、お客様との話題にもなる面白い商品です。

TOKYOジャイロ

 

現在、金属加工とオリジナル商品はどのような割合で扱っているのでしょうか。

山田氏:オリジナル商品を始めた当初は数パーセント程度で、売上のほとんどは切削加工によるものでした。それが今はある程度の割合で売上に貢献してくれるようになっています。また、BASEを通じた問い合わせをきっかけに大口契約につながったケースなど、ECサイトやふるさと納税で当社を知って頂いて、そこから加工の依頼に発展するケースもあるので、間接的にビジネスの拡大につながる側面もあります。

臨機応変に時勢に乗る

切削加工された製品はどのような分野で使われているのでしょうか。

 山田氏:今は医療関係が多いですね。父の代では長く付き合いがある同業者や商社を通して納入することが多かったので、そこから時代に応じてお客様の売り先が移り変わってきました。お客様が元々数社だったのが私の代になってからは、インターネット経由で、100社近くに広がりました。インターネットで知り合ったお客様の動きに対応して、納入先が移り変わっている感じですね。成長分野を狙って飛び込み営業というのも悪くはないですが、マンパワーも少ないので現実的ではないです。当社の需要をお客様に押し付けるよりも、お客様の需給を認識してどうリーチするかを考えるのが大事だと思いますね。いくら絵空事を描いても外部的な状況が変わることもあるので、臨機応変に対応することがすごく大切ですね。成功例をなぞってうまくいくわけでも、失敗例を避けていれば成功するわけでもないので、固定概念を持たず、臨機応変に時勢に、いい波に乗ることを考えるようにしています。

 

加工に用いる自動旋盤機

 

そういう中で御社の強みや個性はどういったところにあると思いますか。

山田氏:部品メーカーはどこでもそうだと思いますが、差別化が難しいのです。魅力的な市場があれば他社が参入してきますし、同業者の使っている工作機械や加工方法というのも、ある程度はお互いに分かります。だから技術があっても、同業者との差別化は難しいのです。何が違いかというと、私がやってきたことが当社の個性になっていることだと思います。当社が積み重ねた技術と経験を見込んで部品のOEM先として選んでくださるお客様や、当社商品に興味を持ってECサイトでレビューを書いてくださるお客様等がいらっしゃって、そういった一つ一つへの対応を確実に重ねることが、結局はオンリーワンにつながっているのだと思います。


業種   金属加工業

設立年月          1990年8月2日

資本金              3,000,000円

従業員数          6人

代表者              山田 賢一

本社所在地      東京都葛飾区立石2-28-14

電話番号          03-3691-7370

公式HP           https://mitsumi-seisakusyo.co.jp/

この記事の著者

鈴木俊治

鈴木俊治中小企業診断士

2022年中小企業診断士登録。埼玉県中小企業診断協会所属。早稲田大学法学部卒業後、鉄鋼メーカーにて海外営業等を経験。現在は医療機器メーカーでマーケティング職に従事するとともに、企業内診断士として支援活動を行なっている。

この著者の最新の記事

関連記事

ページ上部へ戻る