一本の丸い棒に表現される世界 「葛飾町工場物語」認定製品(岩城フィルム化工株式会社)

色とりどりに装飾塗装されたきらびやかなゴルフシャフト

岩城フィルム化工株式会社は、カーボン、FRP、スチール、アルミパイプなど、長尺物への特殊な装飾塗装を得意とした企業である。多くの独自技術を有し、葛飾ブランド「葛飾町工場物語」にも認定されている。

岩城フィルム化工株式会社の匠の一品、それは色とりどりに装飾塗装されたきらびやかなゴルフシャフトだ。それは、当社が長い時間をかけて行ってきた数々の技術開発の粋を結集し生み出されている。ゴルフシャフトの色と言えば、クロームメッキされたシルバーか、カーボンのブラックが一般的で、シャフト自体にデザインを加えることはほとんどない。まさに機能に特化したパーツである。しかし、ゴルフ人気が高まり、ファッショナブルな商品が求められる中で、個性を表現できる唯一残された領域と言われていたのもシャフトだった。

当社商品のカラーサンプル

 

長年の研究開発により実現した顧客リクエスト

同社へのクラブメーカーやシャフトメーカーからの要望は難易度の高いものだった。まず求められたのが、カーボンシャフトへの塗装。カーボンは、その軽さやしなやかさが特長としてあるものの、ピカピカと光る銀の光沢や反射にも得がたい魅力がある。3年に及ぶ研究開発の末、この両者を融合させたのが、RMP(Real Metal Plating)という技術だ。試行錯誤を繰り返し、通常の銀鏡メッキの反射率が95~97%なのに対し、RMPの反射率は99.9%を実現させた。

次に求められたのが、クロームメッキの光沢そのままに、無研磨で塗装することだ。メッキは表面が滑らかで塗料が剥離しやすい。研磨しメッキを剥がしてから塗装することは可能だが、メッキの光沢ある質感はそのままにしたい。塗装の既成概念を覆すことで生まれたのがクロームメッキ上に塗装を施す技術VSP(Various Steel Plating)だ。

このRMP、VSPという二つの技術によって、従来できなかったシャフトへの装飾塗装が可能となった。

同社の独自技術は他にもある。例えば全体グラデーション技術。従来のグラデーションは異なる色の境目のぼかし塗装のことを指し、色の境界部分のごく幅の狭い範囲の処理に限られていた。一方当社の全体グラデーション技術はシャフト全体を通して色が変化していく、自然で本来のグラデーションとなっている。実現方法はもちろん企業秘密だ。

また、従来文字や塗分けによるデザインを表現するのに使われていたのはマスキング塗装だったが、当社は特定の場所だけ色を載せないようにする抜き加工という技術も保有している。この技術により、マスキングでは表現できなかった小さい文字や細かいデザインも表現できるようになった。さらに、ひび割れた質感を出すCracking painting技術や、伝統工芸である漆の津軽塗を参考にした研ぎ出し技術も保有している。

ゴルフシャフト塗装サンプル:同社の技術の粋を集め装飾塗装を施されたシャフトは、見た目ではスチールとカーボンの区別はつかない

さまざまな表現を可能にする技術を有しているからこそ顧客からは突拍子もないリクエストが舞い込んでくることがある。「風がそよぐイメージで塗装してほしい」、「桜が満開の気分を表現してほしい」といった内容だ。

これこそ同社の真骨頂。それは、単なる塗装ではなくアートと言える一品となる。もちろんこれらは、機械による大量生産ができるものではない。熟練の職人が一本一本集中して作り上げる、丸い棒に込められたもう一つの世界なのだ。


会社名:岩城フィルム化工株式会社

業種   ゴルフシャフト・釣り竿などへの装飾塗装

設立年月          昭和31年12月25日

資本金              10,000,000円

従業員数          16人

代表者              岩城大輔

本社所在地      東京都葛飾区東四つ木2丁目8-2

電話番号          03-3691-2397

公式HP           https://www.iwakifilm.co.jp

この記事の著者

湯山聡

湯山聡

中小企業診断士 埼玉県出身。1973年生まれ。早稲田大学卒業。ITコンサルティング、マーケティングに従事後、電機メーカーに転身し商品企画、新規事業開発に携わる。地域活性化を貢献したいとの思いから中小企業診断士を目指し、2021年11月に登録。現在は、中小企業の新規事業立ち上げや経営革新計画の支援を中心に活動中。東京都中小企業診断士協会 城南支部所属。

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