- 2022-6-21
- 取材・インタビュー
BANTECが描く、町工場との未来
大田区の町工場のネットワークを支える、株式会社BANTECのインタビュー。第三回目となる今回は、番場社長が描く今後の事業展開を聞いた。既存の試作品を中心としたB to B事業だけでなく、量産やB to C事業にも果敢に挑戦していくなど、番場社長の奮闘ぶりに迫っていく。
現在の課題
創業11年目を迎えて、経営状況はいかがでしたか。
番場氏:創業当時は引き合いが数社あり一定の売上がありましたが、仕事がなく工場が稼働しない時期がありました。影響が大きかったのは2018年頃に勃発した米中の貿易摩擦で、メーカーの開発が滞り当社の試作受注が激減しました。その結果、主力のOA機器向けの受注が頭打ちとなり、値段を安くしないと売れない競争過多な状況が今も続いています。また、受注が減少したことにより、協力会社の生産キャパシティを十分に活用できなくなり、連鎖的に経営状況が悪くなったので、とても厳しい状況です。
たとえ受注を得られたとしても、2次下請けとなる我々や栃木製作所のような協力会社はさらに厳しいコスト要求を受けます。この製品がいくらかかるかというコスト積み上げの見積りではなく、受注をとるための価格ありきの見積りをすることもあり、収益が以前の半分程度になっていて、設備投資も難しい状況が続いています。
現在の課題は何でしょうか。
番場氏:営業面では、受注を安定させるために、新たな取引先を獲得しないといけないと思っています。
生産面は、技術力が高い栃木製作所のような協力会社を増やして一社にかかる負荷を分散し、お客様への対応能力を高めたいですね。
それらの課題解決のために、取り組んでいることはありますか。
番場氏:展示会の出展を進めています。昨年は「産業交流展」や「新価値創造展」といった展示会に出展し、フォロー営業にも注力した結果、数社から引き合いが来ています。お客様だけでなく、新たな協力会社の開拓も進めており、展示会の効果は大きいです。
また、ホームページの改修を計画しており、当社のことに興味を持った潜在顧客が情報を得やすい環境構築を進めています。
今後の展望
今後の展望を教えてください。
番場氏:やはり受注を安定化させることが一番の経営目標です。受注がなく工場が稼働しない状況をなにより危惧しています。協力会社が安心できるよう安定的な売り上げを立てたいです。また、「他ではできないけど、BANTECならできる」という高付加価値の製品を継続して受注し結果を出していく必要があります。そのために、新たな受注先と仕入先(協力会社)の開拓が必要不可欠ですね。
BANTECは試作生産事業の割合が大きいですが、どういった事業展開を考えていらっしゃいますか。
番場氏:これまで半導体製造装置やOA機器等の特定の業種に絞っていたため、業種ごとの景気の浮き沈みの影響を大きく受けていました。そういった景気の変動に耐えられるように、これまで十分に入り込めていなかった他業種、特に自動車関係の試作に参入したいと考えています。すでに下請け先が確立している他分野では参入障壁は少ならからず存在しますが、自社の競争力を高めるためにも協力会社のラインナップをそろえ、参入を実現したいです。
協力会社の獲得に関しては、技術力があっても営業ができない町工場はたくさんあります。そのような会社と協力してチームで戦っていくために、これからも協力会社の開拓を図っていきたいです。品質管理の観点から目の届く範囲で生産管理を行いたいという想いがあり、万一品質問題が起きても即日対応したいので、関東近隣を中心に探しています。
そのほかの事業についてはいかがでしょうか。
番場氏:量産にも取り組みたいです。大田区の仲間で中国に工場を保有している会社があります。高精度のものづくりは難しいですが、量産が可能な体制が整っており、現在も引き合いが来ているので今後の展開に期待しています。
また、B to C事業にも取り組んでいます。例えば、住宅用の金属製デザイン表札やオーダーメイドのホットサンドメーカーですね。ご希望の刻印をデザインしてホットサンドに焼き入れすることができます。(詳細は次回の匠の一品のコーナーで紹介します。)。
こういった新製品を投入して、協力会社と共に事業拡大を図っていきます。
事業内容 試作加工全般、金属精密部品加工、3D加工、精密板金加工、オリジナル製品の製作
設立年月 2011年5月
資本金 3百万円
代表者 番場 岳志
本社所在地 東京都大田区東蒲田2-12-3
電話番号 03-6336-6822
公式HP http://www.bantec2010.com/