アルミを削り出して製作した縄文土器(株式会社マテリアル)

アルミを削り出して製作した縄文土器

同時5軸加工技術の継承

高度な切削加工技術で成長を遂げてきた株式会社マテリアル。その加工技術の高さを示す一品が、アルミを削り出して製作した「縄文土器」だ。製作のきっかけは、同時5軸加工技術を継承するためだった。同時5軸加工とは、マシニングセンタの中でも、直線軸XYZの3軸に2軸(回転・傾斜)軸の合計5軸を持つマシンを使用して、5軸を同時に動かしながら切削加工をする加工方式のことである。複雑な形状の加工ができることに加え、一度セッティングをすればその後の段取り替えが不要で加工時間の短縮が図れるなどのメリットがあるが、各軸の設定に誤差があると、その積み重ねにより大きな誤差が生じるため、作業者の熟練や高度なプログラミング技術が必要と言われている。

 

設計・加工プログラム作成に数週間

技術継承の師匠役は取締役の須賀宗政氏だ。もともと、同時5軸加工は須賀氏しかできなかった。彼は、かつて「下町ボブスレー」プロジェクトで複雑な形状の部品を同時5軸加工により製作していた。その技術を継承することが目的だった。弟子役は加工課でリーダーを務める竹内祐介氏だ。その竹内氏が、須賀氏から「自分で『難しいな』と思うものを選んでくれ」と言われて選んだのが、縄文土器の中でも複雑な形状が特徴の火焔土器だった。火焔土器を選んだ理由は、「たまたま、インターネット上で3Dデータを見つけたから」というが、取締役の細貝龍之介氏によれば、この火焔土器には、同時5軸加工の技術を修得するためのすべての要素が備わっているという。

製作は竹内氏が須賀氏から指導を受けながら行った。しかし、予想以上に線が細かく、製作は困難を極めたそうだ。加工時間はたかだか16時間だが、CAD/CAMソフトで設計・加工プログラムを作成するのに数週間を費やした。

 

大田区から表彰

製作したアルミ製「縄文土器」は大田区から高い評価を受け、「大田の工匠 技術・技能継承」として表彰された。以来、展示会に参加する際には、アルミ製「縄文土器」は展示ブースの両サイドを飾り、自社の技術力のアピールに一役買っているという。その加工技術は同業他社から見ても「すごい」と感嘆の声が漏れるほどの精巧さで、常にブースに立ち寄る人たちの注目を集めているという。
まさに、マテリアルの技術力の高さを具現化した一品である。

「大田の工匠 技術・技能継承」を受賞した取締役の須賀宗政氏と加工課リーダーの竹内祐介氏

この記事の著者

吉田樹生

吉田樹生中小企業診断士

1975年愛知県豊田市出身。東京都在住。神戸大学経営学部国際経営環境学科修了。日系ITベンダーにて海外営業を担当した後,米IT調査会社を経て,現在は米ITベンダーの日本法人に勤務。インド駐在経験をもつ。2021年中小企業診断士登録。ITとファイナンスを武器に中小企業のグローバル戦略を支援することが目標。

この著者の最新の記事

関連記事

ページ上部へ戻る