レーザー加工機導入を機に、効率化、高付加価値化を追求(有限会社尾熊シャーリング 代表取締役 尾熊稔文様 インタビュー②)

お客様がお客様を呼んできてくれる

有限会社尾熊シャーリングは、長きにわたり板物の切り・曲げ加工を行っている会社である。特に厚物や長尺物の加工に強みを持ち、サイズの大小やロット数にも柔軟に対応し、多くの顧客の支持を得ている。

本特集では、同社の強みやものづくりへの想い、将来への展望など、代表取締役の尾熊稔文氏にお話をうかがっていく。第二回では、会社の運営や業界団体との関わりについて取り上げる。

同社代表取締役 尾熊稔文氏


家族的な会社

会社の組織、運営体制について教えて下さい。

尾熊氏:当社は従業員も少なく、いわば「家族的」な会社です。例えば、家族に何かあったら「大丈夫?」と、声を掛けますよね。それと同じで、従業員は家族の延長のような感じです。私も時間があれば、事務所から工場の方にふらっと行って、従業員に「大丈夫?」と声を掛けています。それが、日頃のコミュニケーションですね。今はまだコロナが続いていてできませんが、コロナ以前は、忘年会や暑気払いなどの懇親を会社でやっていました。経営理念については特に明文化していませんが、思いとしては「地域に密着してものづくりに励んでいく」といったところでしょうか。

従業員は5名、私たち役員を含め8人の会社で、以前は従業員を曲げ部隊とレーザー部隊とに分けていましたが、昨年から従業員全員が機械の操作をできるよう多能工化しました。今では全員工場にある機械をひととおり操作できるようになり、誰かが休んでも他の従業員がフォローできる体制に改めました。そして、さらに並行して作業ができるように、CADをもう一台追加で導入しました。

従業員の年齢構成は、60歳代がひとり、あとは20代、30代から40代前半です。比較的若いですね。勤続年数は、20代を除いて12、3年くらいだと思います。従業員の採用はホームページでも募集をしますが、基本はハローワークですね。現在、募集はしていません。今の人数がベストだと思っています。人が増えすぎても、仕事がなくなったときの負担が大きいですから。

 

飛び込み営業で顧客を獲得したことも

営業活動は、どのようにされていますか。

尾熊氏:レーザー加工機を導入した後、2007年ころ、新規開拓は相当力を入れて飛び込み営業をしました。当社で出来そうだなと思う工場へ直接飛び込むのですが、お話を聞いていただける方もいればすぐに断られることもありました。きつかったですが、でも売上を増やすためにはやらないといけないと思い頑張りました。その頑張りの甲斐もあり、今もお取引している大口のお客様のうち半数程度は、飛び込み営業で獲得したお客様です。最近は飛び込み営業をしなくても、お客様がお客様を呼んできてくれて、通常に戻ると受けきれないことも考えられるような状況です。

 

展示会などには、参加されるのでしょうか。

尾熊氏:一度だけ、大田区産業プラザPiOで行われる展示会に出展したことがあります。私と家内のふたりで対応しましたが、当社のような規模だと、出展の間主力が会社に不在となり、業務が回らなくなってしまいました。展示会で名刺を集めても仕事が滞ってしまうため、その後フォロー営業もできなくなってしまう。その結果、あまり成果も得られず、無理に出展する必要はないと思い、今は出展を控えています。展示会に出展している間、会社の主力が抜けてしまい業務が回らなくなることは、町工場ではたまに聞く話です。

また、当社はかつて受発注商談会も参加し、そこで接点を持ったお客様もかなりいましたが、今は参加していません。理由は、数年前から商談会のスタンスが変わったからです。以前は商談会終了後にパーティーがありまして、その時の名刺交換が受注に結びついたりしましたが、今はそれが一切なくなってしまいました。さらに、我々は大田区の企業で大田区の企業と商談したいと申し出ても、1社しか商談できないとか、地方から来る人がメインになるなど、いろいろと制約も増えたため、参加しなくなりました。

ただ、今ではお客様も紹介され、たくさんの会社様とお取引させていただいています。展示会や商談会に無理に出る必要もなくなりました。

 

コロナウイルスの影響はありましたか。

尾熊氏:もちろん、ありました。コロナ禍で、3割から3割5分くらいは売上が落ちました。取引先が動かないから、取引も止まるという感じです。最初にコロナが出た時は多少の影響はありましたが、それほど影響はありませんでした。ひどかったのは昨年(2021年)で、一番きつかったです。その間は、雇用調整助成金を活用したりして、何とかしのいできました。大田区からの無利子融資も利用しました。1年くらい厳しい状況が続きましたが、2022年の夏頃から徐々に仕事が出てきて、今もかなり注文が入ってきています。まだコロナ前までは回復していませんが、だいぶ戻りつつある状況です。

ところが、今度は円安やウクライナ危機の影響で、原材料費や電気代が高騰しました。加工費はあまり変えられるものではなく、なかなか価格に転嫁できずに最初は苦しみましたが、最近はこのような状況をお客様にも理解していただいています。

 

横のつながりが大事

製造業の業界団体にいくつか加盟されていますが、そのうちのひとつ、「YMクラブ」とはどのような集まりでしょうか。

尾熊氏:YMクラブとは、大森工場協会という親団体の下にある青年部の集まりです。製造業を中心とした若手経営者が集まって活動しています。メンバー同士で勉強会を開催したり、親睦会を行ったり、お互いの工場を見学するなど、毎月集まって会合を行っています。製造業の経営者同士、みんなで頑張っていこう、技術力を高めていこう、というのが集まりの目的です。私は入会したのが27、8年前です。かつては幹事としてクラブの運営にもいろいろと関わってきました。いまは幹事を外れ、一会員として参加しています。

YMクラブに参加する会社同士、取引先になることもあります。しかし、YMクラブをはじめ、業界団体の集まりは、仕事につながるかどうかとは別の話だと私は考えています。例えば自分が「不渡り食っちゃった、みんなどうしてる?」とか、経営で行き詰まった時に「誰々さんは、どうしました?」といった話をして、「ああした方がいいよ」「こうした方がいいよ」と意見をもらう。それが基本だと思っています。そのような情報交換を重ねるうちに、「尾熊さん、これちょっとできない?」といった話は、後からついて来ればいいと私は思っています。もちろん、仕事につながれば、それはそれでよし、ではありますが。

高い付加価値を生み出す同社の工場

 


業種   金属加工業

設立年月          1963年6月1日

資本金              3,000,000円

従業員数          5人

代表者              尾熊 稔文

本社所在地      東京都大田区西六郷4-35-13

電話番号          03-3733-6977

公式HP           https://ogumashearing.co.jp

 

この記事の著者

浜田健嗣

浜田健嗣

2021年中小企業診断士登録。大学卒業後,鉄道会社に入社。主に経理・財務を担当し,再開発事業やショッピングセンターの運営にも携わる。「○○で地域を元気に」をモットーに活動中。

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