町工場の技術を活かしたマスクケース(株式会社富士テクノマシン)

金属削り出しのみで作られた匠の技

株式会社富士テクノマシンは、大型薄物加工をはじめとした金属加工を行うメーカーである。これまで同社は思い切った投資やノウハウの蓄積でさまざまな事業環境の変化に対応してきた。また、近年ではコロナ禍を契機に自社開発製品の販売を行うなど、新たな取り組みを展開している。
ここでは、同社の匠の技を活かした自社開発製品を紹介する。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響による需要減少を埋めるため、自社で開発・製造したのが「マスクケース匠」だ。一見、板を加工した形状にみえるが、すべてアルミを削りだすことで作られているのが特徴だ。BtoBの製品では色にこだわることはないが、本製品は消費者向けの製品であるため、6色のカラーバリエーションを作成し、楽天市場に開設したECサイトで販売した。
側面の突起も曲げ加工などは一切使わずに、金属削りだしのみで作られている。それでもパチンと閉まるのは、高精度の金属加工技術の表れである。
模様もすべて削り出しであり、デザイン製品にも対応できる可能性を感じさせる。
コロナ関連製品の需要は一巡しているため、既に販売は終了しているが、制作した製品は1万円という価格にも関わらず、すべて売れた。「金属削り出しのみで作った製品」という匠の技が評価されたことがわかる。
同社では、コロナ関連製品の販売における成功体験から、自社製品の開発アイディアを探すようになったという。最近ではキャンプ用品店などからのニーズの聞き取りを行っている。
例えば、テントを地面に固定するペグと呼ばれる杭では、刀メーカーが開発した「打刀」(うちがたな)という製品が話題となっている。シンプルな形状でありながら、技術とアイディア次第で消費者の心を捉えることができる。
このような事例を参考に、同社の技術や経験を活かすべくさまざまな案を検討しているという。いかに消費者に響く自社製品を産み出していくか、本マスクケースは、同社の新たな挑戦を象徴する一品である。

すべてアルミ削りだしで作られた形状

蓋を締めたところ

ECの販売画面

この記事の著者

齊藤慶太

齊藤慶太中小企業診断士

2020年5月中小企業診断士登録 東京大学大学院卒業後、ITコンサルタント、メーカー海外工場駐在・経営企画を経て現在はIT企業で新規事業開発に携わる

この著者の最新の記事

関連記事

ページ上部へ戻る