変革は充実した人生のために~株式会社城南村田 青沼社長インタビュー【第2回】

階段を上って初めて見える景色

城南村田は現代表の祖父が創業した紙卸売業の城南洋紙店を起点に、金型メーカーのトーマックを吸収合併、ムラタ洋紙店の営業権を取得するなど、市場環境の変化に合わせてM&Aを行い、事業領域を大きく変化させてきた。変革をけん引してきた青沼 隆宏代表に話を伺った。

株式会社城南村田 代表取締役社長:青沼 隆宏 氏

承継に大切な時間をかけたコミュニケーション

M&Aで事業承継される際に気を付けていることはありますか。

2005年に行った真空成型金型を手掛けるトーマックのM&Aでは、当初10年間は事業に手を付けませんでした。朝礼を始めたり、事業計画書を作成し銀行と毎月のミーティングを始めたり、製造の指示書がなかったので段々と手順を整えたりといったことはしましたが、現場や営業面は変えませんでした。中小企業は仕組みで事業が回っているところは少なく、個人プレイヤー頼みというところが多いです。M&Aをする際に、事業規模や顧客基盤などを検討して買収後の事業計画を想定しますが、顧客とのつながりを個人で持っているような社員が離れてしまうと、前提が全く違ってきてしまうので慎重になりました。

 

そんなに時間をかけて取り組む必要があったのですね。

城南洋紙店は祖父が創業した会社なので、私が入社した時点で、いずれ3代目として社長になると社員からは認識されていました。しかしトーマックの場合は、業績に問題が無かったという事もありますが、在籍する社員から見ると青沼って誰だ?というところから始まります。中小企業同士のM&Aは互いに社名も知りません。そこには大きな溝がありますから、私という人間を理解してもらって受け入れてもらうためには、やはり時間が必要です。2ヵ月に1回のペースで懇親会を開いて互いの溝を埋めていきました。

 

2021年にM&Aをした北海道のプレス金型、加工を手掛けるスズキ工業所ではいかがですか。

スズキ工業所は事情が少し違っていて、私はまず北海道に引っ越しました。これが大きいと思います。北海道の社員からすると、私が東京から自分たちの地元に引っ越してきたというのは単純に嬉しく、溝はそれだけでも埋まります。トーマックの経験からの反省点も活かしています。トーマックでは10年間、変えないよう気を付けましたが、スズキ工業所では最初から言うべきことは言っています。M&Aから時間が経ってしまうと、社員は現状が追認されたと感じ、以前の企業文化の悪い部分もそのままで良いと考えてしまいます。また、M&Aで方針が合わず人が辞めることに対しては、こちらがいくら留めようとしてもダメなものはダメです。業務を個人に依存しすぎないよう早めに会社を仕組化していくことが重要です。

北海道のスズキ工業所は笑顔あふれる町工場だ

祖業の紙卸売業を2017年に売却されたのは、新規事業が軌道に乗ったからでしょうか。

紙の事業に関してはいつの時点で手放すか、ずっとタイミングを計ってきました。時代の変化によって元から右肩下がりの事業でしたが、東日本大震災時に受けた事業のダメージは特に大きかった。だからそのタイミングで売却する選択肢もありました。それでもすぐに売却せず、6年待ったのは若い社員が居たからです。彼らが食べていくことを考えて、真空成形金型の仕事を覚える時間を待っていました。

勉強は強制。人材育成と成功体験。

社員が新しい事業を覚えていくため、どのように取り組まれましたか。

紙卸売事業に居た社員がすぐに金型の営業を出来るわけではありません。会社として金型の知識を教える体制を作りました。ただし本人にやる気がないと、いくら教えても結果がついてきません。基本的に勉強は強制だと思っています。成長は階段のようなもので、上の段に登ってみないと上の景色は見えてきません。下の段で景色がまだ見えていない人に、上に登ったらこんな景色が見えるよ、という話をしても全く伝わりません。だからそこに行くためには強制。苦しいかもしれないけれど、やれた時に初めて見えた景色に感動も出来るはずです。結果が出せるのは、強制される勉強に対してある程度応えて取り組める人です。過去に階段上の景色が見えた成功体験がある人は、強制的にやらなければならない状況で、上の景色が見える経験の想像が出来るため、勉強に取り組むモチベーションを持っている気がします。

過去の成功体験が新たな取り組みのモチベーションになるのですね。
そういった意味では、ものづくりは良い仕事です。出来なかったことが出来るようになる。1年間コツコツやってきたことが成功体験になります。ものづくりは現物があるので、最初は出来なかったことが今では出来るようになっていることを実感できます。出来上がるまでのスピードが変わるとか、見た目の品質が変わるとか、そうしたものづくりの諸々が面白くなってくると、また自分で何かしら工夫を考えるようになります。

真空成型トレー技術を活用したフェイスシールドが高く評価された


目指すのは会社の規模ではなく人生の充実感

M&Aの目的は事業の拡大でしょうか。

事業の規模や売上高を大きくすることは目的ではありません。事業を広げていった先に売上は伸びるかもしれないし下がるかもしれない。それは偶然の要素も大きいと思います。我々がこれだけ売上を伸ばしたいと希望しても、そんなに簡単なものではありません。事業の規模を拡大したいという想いはそこまではありません。大事なのは、自分たちの人生を使って仕事をしているということ。それは私だけではなく社員の皆がそうです。だから充実感のある人生を送ってもらいたい。仕事を通してすごく面白い経験をしたと思ってもらいたいし、一人一人が幸せになって充実感を感じてもらいたいという想いが強くあります。そのために時代に合わせて事業を変化させています。


【企業情報】
業種   真空成型トレーを主とした金型・パッケージ製造業

設立年月          1965年6月1日

資本金              4,000万円

従業員数          14人

代表者              青沼 隆宏

本社所在地      東京都大田区蒲田本町1丁目9番7号

電話番号          03-5744-3555

公式HP          https://www.jonan-murata.jp/

この記事の著者

岡本崇志

岡本崇志

演出、CGディレクター、プロデューサーとして映像分野で長年活動。CM、アニメ、企業VP、展示会映像、プラネタリウム、VR映像にて演出、制作、プロモーションを経験。 現在は、経営コンサルタントとして映像・写真などビジュアルをを用いた販売促進、マーケティング支援、補助金支援などを行っている。

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