- 2021-8-5
- 経営全般
SDGsは事業活動の共通言語
SDGsってなに??
最近よく聞くSDGs(エスディージーズ)。17のゴールとアイコンをよく見かけますし、ドーナツ型のバッジを襟元に付けている方も増えています。
SDGsとは何なのでしょうか。SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略です。2015年9月の国連サミットで採択されたもので、国連加盟193か国が2016年から2030年の15年間で達成するために掲げた目標です。こんな風に聞くと、国連?開発目標ってなに??国や、余裕のある大企業がCSRとかのためにやるものじゃないの?と思われるかもしれませんね。
しかし、中小企業にも身近なものなので、一緒に見ていきましょう。
製造業との関係
先に挙げたカラフルな17のゴールを見てみてください。1つ1つが独立しているものではなく相互に絡み合っていますので、分けにくいものではありますが、業種によって関連性の高いものはあります。
例えば、製造業の場合でしたら、17のゴールのうち「12つくる責任つかう責任」や「9産業と技術革新の基盤をつくろう」はピンときやすいですね。さらに製造過程において日常的に気を付けられていることは何でしょうか。排気・排水への留意やエネルギー効率等の観点を考えると、ゴールの「6安全な水とトイレを世界中に」や「7エネルギーをみんなに そしてクリーンに」、「11住み続けられるまちづくりを」も関わりが深いことがわかります。そして、取引先や他業種との連携もあれば、「17パートナーシップで目標を達成しよう」も関わってきます。このようにイメージしていくと、SDGsを今まで意識したことがなくても、日常業務と17のゴールが意外と関連してそうだな、ということがわかります。
ではそもそも、なぜSDGsを意識する必要があるのでしょう。
SDGs、やらなきゃいけない雰囲気??
日本は世界の中でも豊かな生活を送っています。実は世界中の人が日本人並みの生活を送ろうとしたら、地球は2.9個分必要と言われています。これは“エコロジカルフットプリント”といい、地球1個分以上ということは、我々の社会・経済活動による環境負荷が地球のキャパシティをはるかに超えてしまっていることを表しています。それぞれの地域や国だけではなく、全世界的に環境、社会、経済のことを考えていかなければ立ち行かなくなることから、2030年までに取り組まなければならない目標が17のゴールとなったわけです。
実は消費者の意識の高まりから、企業が適正な手段で材料を調達しているか、環境に配慮した事業活動をしているか、ということに関心を持つ人が増えてきています。また、若者の企業に対する見方にも変化が出てきています。いまや小中学校ではSDGsを教科書で学習する時代になっているので、自身の給与や待遇だけではなく、就職先の企業がSDGsに取り組んでいるか、自分がその企業に入って事業活動を通じて社会に貢献できるか、といった視点が、就職活動においても重視されています。
SDGsのメリット、取り組まないことでのデメリット
このような流れから、SDGsを意識して事業活動を行うことは、消費者や将来の担い手となる若者の採用にもつながります。また、従業員にとっても自分たちの日常業務が社会にいい影響を与えているということがモチベーション向上にも役立ちます。
そして、SDGsで事業を見ていくことで、あらたなビジネスチャンスが生まれます。SDGsの17のゴール=現代の日本を含む世界のニーズそのままです。SDGsと結びついているということは、その課題や強みに商機があることを意味します。時々「SDGsで儲けるなんて!」と目くじらを立てる方がおられるのですが、そもそもビジネスの力も使って持続可能な社会を作っていこうというのがSDGs。従来からのCSRのように慈善活動の意識ではなく、課題を本業に取り入れることで、日々の業務を通じてSDGsを実践していくことが可能になります。課題を本業に取り入れることがSDGsのいいところです。日々の業務が社会課題の解決につながります。
さらに、メリットという観点だけではなく、社会的な側面をおざなりにすることのデメリットが今後は大きくなってくる可能性があります。過去には、サプライチェーン上流の輸入元工場における児童労働が発覚したことで不買運動が起き、それにより大きく売上を低下させた企業や、育休復帰後の男性社員を左遷したことが判明し、時間とお金をかけて採用した新卒者の内定辞退が相次いだ企業の事例もあります。さらに、大企業はグローバル化の観点からもSDGsには敏感で、取引先企業にも調達先を明らかにすることや、廃棄のルールを守っているかなど、適正水準をクリアしないと取引ができなくなるというしくみをすでに取り入れているところもあります。
SDGsに取り組むメリット ・新卒者の採用につながる ・自社の社会からの評価と従業員のモチベーション向上 ・新しいビジネス・サービスのチャンス ・消費者、社会、取引先とのリスクマネジメント |
ただ、「しなければならない!」という気持ちだけで取り組むと疲弊してしまいますので、まずはできることから始めることが大切です。
何から取り組めばいい?
では、実際には何から始めればよいのでしょうか。企業がSDGsを推進するにあたり、SDG Compassというものがあるので、参考にしてみるとよいでしょう。
(https://sdgcompass.org/wp-content/uploads/2016/04/SDG_Compass_Japanese.pdf)
その中のバリューチェーンマッピングというものをご紹介します。
例えば製造業を一例にやってみましょう。
①まず商品の設計から廃棄までのサプライチェーンを真ん中に置きます。
②その工程ごとに及ぼされる影響を考えます。上には正の影響を、下には負の影響を書き出してみます(全工程に及ぼすものは右端などに書きます)。
③書き出した②にSDGsの17のゴールを紐づけてみます。
こうして商流ベースで考えてみると、見えづらかった様々なゴールとの結びつきが見えてきます。
自社の取り組みを整理した後は「ビジネスにつなげる」
自社で今やっていることをSDGsのどのゴールに結びついているかを理解したら、さらに視野を広げてみましょう。
前述の①~③を行った後、④として、負の側面があればそれを小さく、正の側面は企業の強みとして伸ばす取り組みが今後できると考えられます。その中から自社にとって何が一番重要か、何を最優先に取り組まなければならないか、を検討してみます。
例えば、金属加工業であれば、自社の強みを超えて金属の素材自体に注目し、「リサイクルしやすい」「加工しやすい」「熱しやすく冷めやすい」という強みを17のゴールのどれかの解決につなげられないか?と考えてみるのも一つです。
取り組み事例
外務省ウェブサイトのJAPAN SDGs Action Platformでは、様々な業種での取り組みを見ることができます(https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/case/index.html)。
その中から、SDGsを本業に結びつけ、ビジネスチャンスを広げているある金属加工業での取り組みをご紹介します。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
事例:株式会社ナンゴー(https://www.nango-kyoto.co.jp/pdf/sdgs_nango.pdf)
本業の金属加工技術を活かし、京都府のものづくり企業50数社が集結し顧客の試作開発の相談に応じる「京都試作ネット」という取り組みや、一般的には頼みづらい中途半端な注文に特化した「中途半端net」を運営しています。これらの取り組みは「9産業と技術確信の基盤をつくろう」のゴールに結びついているとともに、業界の横のつながり、サプライチェーンでの縦のつながりを作ることで「17パートナーシップで目標を達成しよう」のゴールも体現しています。この他にも「7エネルギーをみんなにそしてクリーンに」に該当する環境保全や、「3すべての人に健康と福祉を」として社員の健康増進への取り組みなど、様々な活動を展開されていることが伺えます。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あらためてSDGsというフィルターを通して自社を見つめ直すことで、「もしかしたらこんな取り組みができるかもしれない」「SDGsにまつわるニーズから新しい事業が生み出せるかも」というヒントを得ることもできます。
日本の企業は三方よしの精神が根付いており、すでに様々な取り組みをされている企業も多くあります。自社がすでに取り組んでいることをSDGsのゴールでマッピングして整理するということは、現状を可視化し社内外に発信するためにも有益な取り組みです。そしてさらにもう一歩、自社では何をしていけるかまで考えてみることが、よりよい社会を作る第一歩となります。
SDGsは実は身近なものだったことがお分かりいただけたのではないでしょうか。これからはさらに、中小企業でもSDGsが事業活動を行っていくうえでの共通言語となっていきます。まずは社内でSDGsって知ってる?というところから従業員を巻き込み、できる取り組みから始めてみてはいかがでしょうか。