製造業のWEBマーケティング④「全体像と指標を理解する」(リアライズ総合研究所 延島隆裕)

製造業のWEBマーケティング④「全体像と指標を理解する」

技術力や自社製品を武器にBtoBの取引先を開拓したい中小製造業向けに、WEBマーケティングを戦略的に活用して事業拡大を実現する方法をお伝えするシリーズ。第1回~第3回の内容、「1.目的を明確にする。」「2.市場を理解する。」「3.自社を理解する。」を実践していくと、HPに掲載する内容が明確になり、HPが完成に近づきます。そのHPを運用し「新規取引先の開拓」を戦略的に達成するため、第4回目は「4.全体像と指標を理解する。」と題し、HPを戦略的に運用するために必要な考え方をお伝えします。

まず、HPを利用した新規取引先開拓までの全体像を見ていきましょう。HPを活用した新規取引先の開拓という目的を達成するためには、以下のプロセスを経なければなりません。これらはページ訪問者の行動で表現しています。

 

(1)HPにアクセスする。 ( 指標:HPアクセス数 )

(2)問い合わせる。    ( 指標:問い合わせ件数 )

(3)商談を行う。     ( 指標:商談件数 )

(4)見積りを依頼する。  ( 指標:見積り件数 )

(5)仕事を依頼する。   ( 指標:新規取引開拓件数 )

各プロセスと定量的に評価する指標を併せて順に説明します。

 

(1)HPにアクセスする。 ( 指標:HP

まず多くの見込み顧客にHPに来訪していただき、製品やサービス、ビジネスパートナーとして魅力がある企業であることを理解していただく必要があります。どのくらいの人がHPにアクセスしたかは「HPアクセス数」で数えます。※HPアクセス数を数えるためには、GoogleAnalyticsなどの無料ツールを活用するとよいでしょう。

(2)問い合わせる。  ( 指標:問い合わせ件数 )

HPにアクセスした人が次にとる行動は、問い合わせです。例えば、求める製品を製作可能か確認したい、得意とする技術について詳しい説明が聞きたい、試作品の相談に乗って欲しい、などの要望がある場合、HP上の問い合わせフォームを使用して問い合わせたり、電話をする場合もあるでしょう。それらを問い合わせ件数として数えます。

(3)商談を行う。   ( 指標:商談件数 )

問い合わせへの返答を踏まえ、商談に進む案件が出てきます。それらを商談件数として数えます。

(4)見積り依頼を行う。( 指標:見積り件数 )

商談が進み見積り依頼を受けた案件を、見積り件数として数えます。

(5)仕事を依頼する。 ( 指標:新規取引開拓件数 ) 

見積りを提示後に受注に至った場合、晴れて新規取引開拓件数として数えます。

以上が、HP経由で新規取引先の開拓に至るまでの全体像です。後半のプロセスはHP外で行われているため、HPの役割はそれほど大きくないと思われるかもしれません。しかし、HPを開始する以前は新規の見込み顧客を開拓する機会は限られ、年に数回開催する展示会だったという方もいらっしゃるかと思います。さらに、コロナ禍で展示会が開催中止となった時期はその機会さえ喪失されたことでしょう。そう考えると、見込み顧客のニーズの発生するタイミングに合わせて、自社の情報を発信でき、一年中見込み顧客との接点を持つ可能性があるHPの役割は大きいといえるでしょう。

次に、HPの役割を最大限発揮し成果に結びつけるために必要な指標を理解しましょう。各プロセスで記した数値(指標)を、週次、月次で把握しましょう。多くの場合、各プロセスの件数が多い方が目的達成に近づきます。と同時に、各プロセス間の遷移率が重要です。次のプロセスの件数を増やすには、次のプロセスに遷移する割合も大きくなるように業務改善を行う必要が出てきます。HPが直接影響する最初の遷移率(HPアクセス数 → 問い合わせ件数)を具体的に見ていきましょう。

■問い合わせ率 (HPアクセス数 → 問い合わせ件数)

問い合わせ率は、HPにアクセスした見込み顧客のうち、問い合わせに至った件数の割合です。BtoBの場合、毎日問い合わせがあるケースは少ないため、一週間、一カ月の周期で良いので、HP内のどのページがどのくらい閲覧されているか、ページ訪問者はどのような属性か、問い合わせの件数と傾向、問い合わせの内容など、様々な視点から分析しましょう。

特に、問い合わせ内容の特性や質の分析は重点的に行いましょう。望ましい問い合わせと、望ましくない問い合わせの選別が重要だからです。望ましい問い合わせとは、商談につながる問い合わせです。この問い合わせ対応に十分に時間を充て、確実に商談に結びつけることを目指しましょう。

一方、後者の望ましくない問い合わせの代表的なものは、HPに十分な情報が掲載されていないことが原因の問い合わせです。これらは、Q&Aや掲載情報を充実させることで、減らすことができます。

HPは24時間365日対応の営業マンのようなものです。この営業マンに効率的で生産性の高い働きを追求するために、各指標を定期的に確認し、自社が取引したい見込み顧客から確実に問い合わせを獲得し、目的達成につなげられるようにHPを適宜改善していきましょう。

第5回目では、最大限の成果を得るためにHPを積極的に運用する手法をお伝えします。実際にこの手法を導入した会社で、導入した次の日に新規取引先から問い合わせがあり、最終的に商談に進んだケースもありました。是非ご覧ください。

この記事の著者

延島隆裕

延島隆裕(株)リアライズ総合研究所 代表取締役 経営コンサルタント 認定経営革新等支援機関 中小企業診断士

船井総合研究所在職時から約15年間、中小企業の経営力向上コンサルティングに従事。特に小売業、製造業においてインターネットマーケティングを活用した売上向上・収益改善の実績多数。新規事業を責任者として立ち上げた経験も活かし、経営者と従業員の双方の目線で、現場で手を動かし成果を生み出す支援には定評がある。プロの気概、現場主義、成果主義がモットー。

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