「組み合わせ」と「マーケティング」で成長を続ける(富士セイラ(株)髙須俊行様 インタビュー②)

「マーケティング」で新たな仕事につなげる

富士セイラ株式会社は、家電やパソコンなどに使用されるねじ部品や精密機械加工部品を製造・販売する企業である。大手企業をはじめエンドユーザーと直接取引をし、多様な要望に応える中で、製品面・営業面のノウハウを蓄積しながら成長を続け、間もなく創業100年を迎える。

本特集では、同社のノウハウ蓄積の過程や今後の展望などについて、代表取締役社長の髙須俊行氏(以下、髙須社長)に話をうかがっていく。第二回は、同社の営業活動特徴と今後の展望につながった経験談について取り上げる。

富士セイラ株式会社 代表取締役社長 髙須俊行氏

 

営業活動の原点は、マーケティングにあり

どのような営業活動をされているのですか?

 髙須社長:当社は全国の約40名の営業部隊で、エンドユーザーへ直接営業をしています。大手企業へも直接営業をしています。そのため、日々の営業活動の中でお客さまのニーズをつかみ、製品開発に活かしています。もちろん自信があっても外れることもありますし、ねじの開発は同業他社でも似たようなことは考えているので、もの凄く新しい製品を開発するのは難しいです。そのため、開発製品の用途や使用する利点をお客さまに理解してもらえるよう、いかに提案し販売につなげるかがポイントとなります。ただし、お客さま側では設計にしても何にしても、従来のやり方があります。設計者はリスクを負いたくないので、変えることを嫌います。したがって、「相手部材である樹脂が割れにくいねじです」と言うだけではだめで、客観的に証明することが最も効果的です。製品を採用していただくためには、行き当たりばったりの営業では通用しません。そこで当社では、トルクを計測して、検証データを提供することで、当社製品を使用する利点を訴求するなど工夫をして、少しずつでも使用していただけるように営業活動をしています。

最適なトルクの検証データを提供するための装置

 

営業担当者の営業力が必要だと感じました。何か工夫されていることはありますか?

髙須社長:とにかく、社員に理解させてついてきてもらうのが大変です。私はマーケティングが好きで、お客さまのご要望に応えるために、社員をどのように動かして、会社の仕組みを変えていくかを考えるのが私のやり方です。しかし、社員は最初のうちはついてきませんでした。

営業担当者は、当社の工場で生産するよりも外注した方が簡単に買えるうえに、外注先の方が依頼事項も聞いてくれるので、「うちの工場はだめです」などとよく言っていました。そこで私は、「会社の中身をしっかりと見ていないだろう。ぱっと見たコストだけで計算してはだめだ」と、会社の資産をうまく活用することを社員に何度も繰り返し説明しました。おかげで、随分と理解が深まったと思います。

あとは、営業担当者に対して真正面から粘り強く教育をしています。当社では、営業担当者に対して、毎日、営業報告書をグループウェアに入力させていて、私は毎日チェックしています。お客さまに理解いただくまで説明をし切れていないような報告に対しては、コメントをし、再度提案をさせるようにしています。営業報告書への私のコメントは、本人のみならず、全員が見ることができます。本人も見られるのが嫌なのでがんばろうと思うでしょうし、周りも言われたくないのでがんばろうという気持ちになるでしょう。

 

確かに、緊張感もありがんばろうという気持ちになってきました。

続いて、新規顧客開拓はどのようにされていますか?

髙須社長:年間20~30件程度、新規顧客との取引が始まっています。結構多い方だと思います。はじめの1年くらいは少額の取引にとどまり、3~4年が経過すると取引が拡大するケースが多いです。突然、当社のねじに100%切り替えるということは、お客さまにとってもリスクが高いのでほとんどありません。最初は少量から取引がスタートし、地道に営業活動をしながら、少しずつ信頼を勝ち取って、取引を拡大していくというわけです。このような時に、NC旋盤加工と冷間圧造の両方に対応できるという当社の強みも活用できるのです。

 

エンドユーザーへの直接営業以外に取り組まれていることはありますか?

髙須社長:展示会への出展や、「Green Screw®」という自社サイトを活用したインターネット販売に取り組んでいます。

展示会には年間2~3回程度出展しています。私もマーケティングのために、1回につき1日くらいは足を運ぶようにしています。最近はピンポイントで「こういうことに困っている。対応できないか」との相談が多くなっています。このような時は、自社製品で対応できるものはしますが、できないものは、当社の協力会社の商品を提供することで対応しています。このような時に当社の商社機能が力を発揮し、新規顧客の獲得につながることがあります。

また、「Green Screw®」という自社サイトで当社のオリジナル製品を販売しています。グリーンスクリュー®とは、当社が提供する有害物質を含まない製品の総称のことです。売上規模としては、それほど大きくないのですが、特殊なねじなど幅広く取り扱っています。当社が日頃リーチできないような、地方のお客さまにも多くご利用をいただいています。ご利用をきっかけに営業担当者が接点をもち、取引拡大につながるケースも出てきています。まだ成功とまで言うには至っていませんが、今後より一層活性化したいと思っています。

自社サイト「Green Screw®」(http://greenscrew.jp)トップページ

 

今後の展望につながった貴重な経験

これまでを振り返って、印象に残っているお取引はありますか?

髙須社長:当社はある大手企業の共同組合に入っています。以前、そちらから組合各社に対して、アメリカへの部品輸出の話がありました。しかし、組合各社の多くは貿易経験の少なく、皆さんお断りをしたそうです。そこで、大手企業より当社に対して取りまとめの要請がありました。当社は、その大手企業と以前から直接取引でよく知った関係であったうえに、海外に現地法人を持ち輸出業務の経験もあったので、ためらいなくお話を受けました。結果的に好条件での取引につながり、当社業績にも追い風になりました。この経験を生かして、調達アウトソーシングという、お客さまの調達業務を当社が代わりに担うという、サービスを展開しています。


業種   金属加工品製造販売業

設立年月          1927年3月

資本金              9,216万円

従業員数          101人

代表者              髙須 俊行

本社所在地      東京都品川区東大井1-3-25

電話番号          03-3471-0911

公式HP           http://www.fujiseira.co.jp/

この記事の著者

関谷由佳理 

関谷由佳理 中小企業診断士

大学卒業後、金融機関に勤務。主に法人営業に従事し、大企業から中小企業まで幅広い顧客層を担当。お客さまに寄り添いながら、課題解決につなげていけるコンサルタントを目指している。2021年中小企業診断士登録。

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