次世代に受け継ぐ、「難しい」に応える技術と信頼~株式会社渡辺精機インタビュー③

新たな模索へ、受け継がれる思い

新型コロナウイルス感染症の影響など大きな波にさらされる製造業。外部環境が大きく変化する中にあって新たな渡辺精機はいかにあるべきだろうか。渡辺達大専務による次の時代を見据えた模索がはじまっている。近年特に力を入れている展示会出展の手ごたえと未来の渡辺精機について伺った。

株式会社渡辺精機 専務:渡辺 達大(写真左) 若手社員(写真右)

 

展示会出展で新たな道を探る

 

―― 展示会出展など積極的に販路開拓をされていますね

専務:私が入社した当時は売上構成の9割近くが大手メーカー1社からの受注でした。その仕事は大事にしつつも、他社からの受注も取っていくべきだと社長に提案して新規顧客開拓に力を入れるようになりました。最近では新型コロナウイルス感染症の感染拡大がありましたが、また10年間隔ぐらいでこうした不景気が必ず来ます。そうした変化を乗りこえ、様々な業界の仕事に対応できるように、自分の代になった時を見据えて新規顧客開拓をやっています。

 

―― 展示会での手ごたえはいかがでしたか

専務:様々な展示会に出展しましたが、特に良い反応があったのがロボット展です。4日間の開催で6万人ぐらいの来場数がある大規模な展示会です。そこに立つのは勇気が要りますよ。他はきらびやかなブースを作っている中で、私は一人で手作り感満載のブースを作っていて、大丈夫かな、こんな所に立っていいのかなって思いました。でも、多くの方に興味を持っていただけて、4日間で4~500人くらいと話し、名刺を200枚ぐらい交換しました。実際に大手メーカーさんや、半導体関係のお客さんとも取引が決まりました。

 

精密加工の展示会だと同業他社も多くて埋もれてしまいます。ロボット展だとお客さんは別の目的で来ている方が多いですが、精密加工も全く探していないわけじゃない。競合が少ないため多くのお客さんが来てくれます。当社は試作で蓄積した知見が相当あるので、お客さんが気づいていない加工方法を提案できて受注につながることもあります。とても身になる出展でしたね。

名刺をいただいた段階では当社の仕事は無さそうだなと思う相手でも、展示会後に訪問して話してみると当社に向いた仕事が意外に出てきますね。オンライン商談だとどうしても具体的な目的に沿って話すことになりますが、それ以外の雑談の中で意外なニーズを見つかることがあります。古臭いかもしれないけれど、足でかせぐ新規営業は大事です。

多くの商談につながった展示会出展

 

 

―― 展示会で工夫されたことはありますか

専務:ステンレスを薄く削ったお猪口と、光が透けるまで薄く削った樹脂の球体を展示しました。どちらも薄さは0.2mm台です。薄肉加工は、「こんなの旋盤で出来るんですか」って驚いて足を止めてくれる方が多かったですね。当社がメインで売り出したいサービスではなくても、とりあえず足を止めていただければ商談が始められます。でもその一歩が難しい。当社の商品説明で呼び込みをしても足を止めずに行ってしまいます。アイキャッチになる加工サンプルが1個あるだけで全然違いますね。

薄く削ったステンレス製のお猪口と樹脂球体

 

 

―― 今後に向けた課題はありますか

専務:販路開拓を積極的に行って、既存のお客さんからの売上を維持しつつ、新規の売上を伸ばしていきたいと考えています。そのためには工場を移転して生産能力を上げる必要があります。新型コロナウイルス感染症がなければ2021年には引っ越す予定でした。ずっと探していますが町工場に適した広い物件が見つかりませんね。新しい機械も1台でも多く入れておかないと、今後入ってくる人も育てられません。従業員が通える近い場所で良い物件があったらすぐに動きたいです。

 

―― 未来の渡辺精機はどのような会社にしたいですか

専務:まず、ものづくりを盤石にしたいですね。これからの時代を生き残れるアピールポイントが無いといけません。技術的な向上はもちろん、新規事業の立ち上げを考えています。東京商工会議所などで異業種の経営者の方と交流を深め、情報収集をしています。新しい試みが一発で上手くいくことはないし、赤字だったら撤退の判断も必要なので、なるべく早く動く必要があります。

 

社長:新しいことを考えないと会社が活性化していきません。私が入社した40年ほど前も危機感を持っていました。当時は量産部品ばかりで、しかも2次下請け、3次下請けの仕事。1個の製品単価が何円、何銭で、やっている意味はあるのかなと思う仕事も多くありました。

21歳だった当時の私は、全く別分野の仕事の立ち上げを考えたり、事業計画書を準備したりしていました。そうして周りの意見を聞くなかで、3次下請けから2次下請け、1次下請けになる方法を考えていきました。技術向上を図り、足繫く通う営業をして、それがいまの試作製作につながりました。

 

有り難かったのは、当時誰も私の新しい試みに反対しなかったんですよね。だから、私もいま専務が新しいチャレンジをすることを全く否定しないし、どんどんやった方がいい。全く新しいことって難しいです。それでも動くことでこの先5年10年の間に発展させる良いアイデアが見つかるといいなと思います。

 

頭が若くて柔らかいから色々と発想が出てくるでしょう。これからの未来は私の頭より専務の頭が考えていきます。私はその補助ですね。何より動いてみるのが大事。それで予想外のところに着地するものだと思います。


業種   旋盤切削、マシニングセンターによる試作品加工等

設立年月          1951年6月創業

資本金              10,000千円

従業員数          15人

代表者              渡辺 穣

本社所在地      東京都大田区大森西2-9-6

電話番号          03-3761-7535

公式HP           http://watanabeseiki.jp/

 

この記事の著者

岡本崇志

岡本崇志合同会社オスカーワークス 代表社員 中小企業診断士

演出、CGディレクター、プロデューサーとして映像分野で長年活動。CM、アニメ、企業VP、展示会映像、プラネタリウム、VR映像にて演出、制作、プロモーションを経験。 現在は、経営コンサルタントとして映像・写真などビジュアルをを用いた販売促進、マーケティング支援、補助金支援などを行っている。

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