お客様のものづくりを支える(株式会社芝橋 代表取締役社長 渡辺 大氏 インタビュー①)

100年続く企業として

株式会社芝橋は、各種省力機械の設計から製造・サービスまで「ものづくり」を一貫して行うメーカーである。オフセット印刷の特色インキ自動計量装置で国内トップシェアを誇り、優れた対応力、営業から開発・設計・製造・金属加工・メンテナンスまで一貫したものづくりにより顧客の信頼を確保している。

本特集では同社の強みと今後の展望について、代表取締役社長の渡辺 大氏(以下、渡辺社長)に話を伺っていく。第一回は創業1905年の歴史に関する話を取り上げる。

株式会社芝橋 渡辺社長

 

時代に合わせて変化する

1905年(明治38年)創業と歴史のある会社ですが、創業から現在に至るまでの沿革を教えてください。

渡辺社長:当社は船舶のエンジン部品を作る加工屋として創業しました。2代目社長の頃に、活版印刷機の製造を開始し、製造メーカーになりました。3代目になると、ヨーロッパ・東ドイツから印刷精度の高いオフセット印刷が導入され、日本製の活版印刷機が売れなくなると、海外製品のメンテナンス事業に転換しました。4代目、私の父の代に、高度経済成長期になり過酷な労働環境が増えてきて省力化が求められる時代になると、省力装置メーカーにシフトし、印刷用紙反転装置を開発します。接着剤のディスペンサー装置、主剤と硬化剤を一定比率で混ぜ合わせる装置をOEMで作り始め、その技術を応用してインキの自動計量装置を開発しました。OEM装置の受託製造に対応していると、日本有数のラッピング・ポリッシング機製造メーカーのOEMとしてラップ研磨装置を共同開発するようになりました。このように、各代で時代に合わせて事業形態を変換させながら発展してきました。私が現在5代目の社長で、2011年に38歳の時に就任しました。

 

渡辺社長の経歴について教えてください。

渡辺社長:新卒から27歳まで埼玉の住宅メーカーに勤めていました。最初に入ったのは資材部で、自社のサッシ組み立てセンターを立ち上げる事業に参加し、大手サッシメーカーに出向してノウハウを学びました。出向中には職人さんやパートさんへの指示、トラックの配送などを経験しました。自社に戻って組み立てセンターの立ち上げに携わった後、不動産営業部に異動となり営業を担当しました。その後、営業推進本部の本部長付として経営計画や予算の策定など経営会議にも出席し、若くして幅広い経験をさせてもらいました。

 27歳の頃に芝橋に入社したのは、父親から「お前どうする?」と誘われたのがきっかけです。父親の性格も知っていたので、誘われたら入社するつもりでしたし、誘われなければ入らないし、自分としては半々の気持ちでした。事業承継に関しても、父親が「こいつは使えない」と見限れば別の考えを実行するだろうと思っていましたので、息子だからといって必ず継ぐことになるとは考えていませんでしたが、事業を承継するつもりですべての業務を担当しました。

 

家業だった芝橋に入社した後でなにか想定外のことはありましたか。

渡辺社長:私が子供の頃は工場が田町にあり、父親に連れられて工場を訪れることはありました。多くの中小企業の経営者がそうであるように、私の父親も休みもなく夜遅くまで働き、私の運動会にもほぼ来られなかったです。私自身、中小企業がどんなものか見て育ってきているので、そういう意味では想定外ということはありませんでした。逆に、そのような経験がないと、中小企業の事業を継ぐというのは現実とのギャップがあって辛いのではないかと思います。

完成品が並ぶ工場内

 

主力製品である①印刷用特色インキ自動計量装置、②印刷用紙反転装置、③ラップ研磨装置についてそれぞれ特徴を教えてください。

渡辺社長:①印刷用特色インキ自動計量装置は、印刷業界向けの製品で、インキを自動で計量し調合する機械です。通常の商業印刷では4色(青・赤・黄・黒)ドットの複合で色を表現するのですが、特色インキは実際にインキを混ぜて調合し色を作ります。化粧品や食品パッケージ等、商品の色合いが製品イメージに直結するような印刷に使用します。CCM(コンピューターカラーマッチング)システムで作りたいカラーサンプルからインキの配合を割り出し、CCMと当社の製品を使用することで、熟練の職人でも難しい調合が機械で行うことができるようになります。省力化による生産性の向上、印刷インキの廃棄物の抑制にもつながります。

 

②印刷用紙反転装置は、商業印刷用の印刷用紙の束を持ち上げて反転させ、印刷装置に積み込む装置です。商業用の印刷用紙サイズは四六全判(788mm ☓ 1091mm)で、一束は1トン近くの重量になります。昔はこれを人力で扱っていて、それは大変な力仕事で印刷業界は離職率も高い業界でした。この装置はただ持ち上げるだけではなく、ブロワーとバイブレーターにより、紙揃えや紙粉除去などの付加機能を持たせています。

 

③ラップ研磨装置は、当社がOEMとして30年ほど前から製造している半導体ウェハーを研磨する装置です。回転する定盤の上にウェハーを設置しダイヤモンドの磨き粉を使用して磨くと、CDの裏面のようにピカピカに磨きあがります。非常に高精度の研磨が要求され、ハードディスクドライブの世界シェアトップの会社で使用されています。静電チャックと呼ばれる、半導体ウェハーを張り付けるツールを研磨する大型の研磨装置も製作しています。現在は日本の半導体業界が盛況で、大手半導体メーカーから注文が多く入っています。

 

 当社では、営業から開発・設計・製造・金属加工・メンテナンスまで一貫したものづくりに対応しています。また、部品の多くを大田区の協力会社に発注し、自社で組み立て・調整して出荷しています。一部加工は自社で行っていますが、板金・塗装・金属加工・基盤製作など、多くの工程を外注しています。

左から①印刷用特色インキ自動計量装置、②印刷用紙反転装置、③ラップ研磨装置(株式会社芝橋 ホームページより)

 


社名 株式会社芝橋

業種   省力化機械設計製作

設立年月          1905年

資本金              55,000,000円

従業員数          9人

代表者              渡辺 大

本社所在地      東京都大田区西糀谷2-7-15

電話番号          03-3744-6551

公式HP           https://www.sibahasi.co.jp/

この記事の著者

石川直紀

石川直紀中小企業診断士

2022年中小企業診断士登録。インフラ系建設会社にて経営企画部門を担当。全体戦略を組織へ展開し、健全に企業を成長させられる人材になることが目標。

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