お客様のものづくりを支える(株式会社芝橋 代表取締役社長 渡辺 大氏 インタビュー③)

この先に向けて引き継ぐこと、変わること

株式会社芝橋は、各種省力機械の設計から製造・サービスまで「ものづくり」を一貫して行うメーカーである。オフセット印刷の特色インキ自動計量装置で国内トップシェアを誇り、優れた対応力、営業から開発・設計・製造・金属加工・メンテナンスまで一貫したものづくりにより顧客の信頼を確保している。

本特集では同社の強みと今後の展望について、代表取締役社長の渡辺 大氏(以下、渡辺社長)に話を伺っていく。第三回では同社の今後の展望についての話を取り上げる。

同社の将来について語る渡辺社長

 

将来を見据えて

若い世代が増えてきて、人材育成に関する課題はありますか。

渡辺社長:今は資材と加工部門でベテラン社員から若手への引継ぎを行っています。業務知識だけでなく、ベテラン社員の想いを引き継ぐことが難しいと感じています。当社では60~70社ほどの協力会社と取引があり、その3分の2が大田区の近隣の企業です。協力会社それぞれの得意分野を見極めながら、全体のバランスを考えて調整してきた、お客様とも長く取引してきた、このような暗黙知はなかなか継承できるものではありません。

 

コロナ禍における事業への影響はありますか。

渡辺社長:印刷業界に関しては、需要が減った部分と増えた部分の差が激しいです。増えた部分で言うと、内食や宅配が増えて包装紙や段ボール箱などの印刷が非常に増えました。当社の製品は、化粧品・お菓子・お土産・薬のパッケージなど、わざわざ色を調合してまで印刷する付加価値の高い分野です。そういった分野では需要が増えていると言えます。

 

 しかしながら、部品の納期についての対応には大変苦慮しています。ボタン一つとっても納期が一年以上要する部品もあり、モーターなど自社でストックしなければならない部品が増えました。製品の需要があっても納期が一年だと躊躇されるお客様もいるので、標準の製品は作り置きしているものもあります。受注をすべて請けられる状況ではないので、営業活動がしづらい状況です。

 また、材料コスト上昇については、部品メーカーから2週間に1回値上げの通知がくるような状況です。競合メーカーもいますので、すべてのコスト上昇をお客様に要求することは難しいです。価格と納期については強いストレスを感じています。

IGAS2018展示会の様子(IGAS2022も出展)

 

今後の展望についてどのようにお考えでしょうか。

渡辺社長:現在は印刷事業と半導体OEM事業が事業の2つの柱です。柱を2つ持つことで、どちらかの業界が低迷してもリスクを分散することができていました。印刷業界はすでに成熟市場でもあり、今後はさらに柱を3つ4つと増やしていく必要があります。当社は設計・組み立てを中心としたメーカーですので、まずは設計力を高めていかなくてはなりません。近年の日本は、大手企業のものづくりの大半が海外の現地法人で製造するようになってしまいました。コロナ禍や政情不安の流れもあり、現在では部分的にでも大事な技術は国内に残すべきという考えに変わってきていると思います。大手企業を中心に技術開発や主要製品の製造が国内に戻ってきたときに、当社がその需要に対応できる技術力・生産力を発揮できるようになっていたいと考えています。

 

設計力を高めるための具体的な取り組みを教えてください。

渡辺社長:現在、大田区では経営者が高齢のため廃業していくメーカーが増えており、発注者の方からもお困りの声を聞きます。例えば、当社がその技術を継承することで、新しい需要を拾っていけないか検討しています。今年度、当社ではNC加工機を導入予定ですので、自社でできる加工作業は増えていきます。工場を持たないファブレスメーカーとの連携を進めている案件も増えてきています。このようなことを通じて、経験・技術を磨いていずれは事業の柱になることを考えています。自分たちのできる技術を広げていけるように、さらに採用活動に力を入れています。社員のアイデアを募って「くだらないものグランプリ2022」にも初参加しました。自分たちができることをアピールしていく発信力も向上させなければなりません。

 

さらに歴史をつなげていくため、事業承継についてはどのように考えていますか。

渡辺社長:中小企業の製造業は資産が多いので、経営を子供に承継していくことが一般的かと思います。しかしながら、技術革新のサイクルが早くなってきている中、子供が成長するまで私が時代の流れについていけるか、現実的にはきついと感じています。先日参加した大田区の経営者の会合では、これまでは私の父親世代が大半で私なんて若造だったのが、いまや私が最年長で、それがとても衝撃的でした。若い世代が活躍している中、いまの芝橋にとっての理想は、会社の中で一緒に頑張っている仲間が想いを受け継いで次の世代の芝橋を構築していくことです。

 

急に誰かに社長を任せるのではなく、きちんと移行期間を設けて経営者として準備を整えてから承継する体制を整えたいと思っています。そのためには、今の若い世代に「社長になる心構え」を持ってもらうことが重要です。今年、経営理念のセミナーに社員2名を参加させました。まだまだ社員の理解を得られるには時間がかかるかもしれませんが、次の世代全員が経営者感覚であってほしい、そうなったら強い会社になると思います。

株式会社芝橋 3F建ての社屋


社名 株式会社芝橋

業種   省力化機械設計製作

設立年月          1905年

資本金              55,000,000円

従業員数          9人

代表者              渡辺 大

本社所在地      東京都大田区西糀谷2-7-15

電話番号          03-3744-6551

公式HP           https://www.sibahasi.co.jp/

この記事の著者

石川直紀

石川直紀中小企業診断士

2022年中小企業診断士登録。インフラ系建設会社にて経営企画部門を担当。全体戦略を組織へ展開し、健全に企業を成長させられる人材になることが目標。

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