願うは社員の幸せ。本業は金属加工業、そして異色のゴルフパター製作③(株式会社ニュープラン 代表取締役 遠藤 宏 様)

始まりは友人の言葉。コロナ禍で背中を押されてスタートしたパター事業
大田区仲六郷にある株式会社ニュープランは試作品加工を主力とする金属加工企業だ。1999年に創業し、短納期とアルミワイヤーカットを強みに売り上げを伸ばしてきた。コロナ禍の苦境のなかユニークな新事業パター(ゴルフクラブ)の製作を始めた。
本特集では、株式会社ニュープランの2代目社長である遠藤宏氏にお話を伺った。第三回目はパター事業について取り上げる。

株式会社ニュープラン代表取締役 遠藤宏氏


最初のパターはとても重かった

パター事業を始めようとしたきっかけは何ですか

遠藤氏:一緒に草野球をやっている同い年の古い友人の声がきっかけです。何年も前から「お前のところでパターも削れるだろう、ちょっと作ってみな?」なんて言われていました。でも、うちは図面やデータを基に加工する企業です。データがなければCAD/CAMで作成しますが、図面通りのものを作る業種です。図面を一から作るのはモデリングといって別の業種なので、僕の範疇ではなかったんですよね。だから「まあできるけど」と言いながら濁していました。

それが、コロナ禍になって初めてのゴールデンウィークに他県にも出かけられない状態で時間もあったので思い立ち、3日かけて1本目を作ってみました。モデリングや設計というレベルではありませんが、自分が使っていたパターを参考に寸法を測り、加工しやすいように考えながら作ってみました。重さや感覚は見当もつかずとりあえず作った1本は、とても重いパターでした(笑)。

1本作ると感覚や重さの感じが分かり、次はグラム数の目標を立てて改良を重ねた結果、何ヶ月かかけて7タイプの作品ができました。今販売しているのはその7タイプのうちの3タイプです。

 

パターを使った方の感想はどうでしたか

遠藤氏:使った方の中には「今まで使っていたパターと感じが違うので、慣れるまでは大変だったけど、慣れたらもう前のパターには戻れない。違いが出ている。」とおっしゃる方もいました。

工場内の写真、今昔の機械がニュープランを支えている

 

エンドユーザーの顔が見えて、その意見が聞けてどうでしたか

遠藤氏:嬉しいです。こうやったら多分喜んでもらえだろうとか、作っている時間さえ楽しんでもらえていると思います。うちは下請けを中心にやる会社でエンドユーザーに直接会うことは稀です。でも、パターは直接エンドユーザーに会えます。お客様の反応があるのは面白いです。

普段の仕事は納期に追われますが、パター事業は違います。お客様と打ち合わせを重ねながら1~1.5ヶ月かけてゆっくり作ります。過去にお客様の要望で、コンペに合わせて早く欲しいと言われ、無理して作ったら失敗したことがありました。急いで作っても良いことはないと痛感しました。お客様のためにやっているのに、何をやっているのだろうと嘆きました。

 

遠藤社長もゴルフをなさるのですか

遠藤氏:パターを作るまでは、ゴルフは年に2~3回行く程度でしたが、今は月1回くらい行っています。パターは自分で作ったパターを使います。本当は最初に作った重い1号機でやりたいのですが、3つのパターのうちの1つである「NP-03パター」が高音の良い打音を出すんですよね。その音を聞いた方からゴルフに誘われるようになったので、NP-03を持って行くようになりました。宣伝活動のつもりはなかったのですが、一緒に回ると「それが欲しい」「それを作りたい」という人が現れるようになりました。

最近スポーツ新聞社から、パターの広告を出しませんかと言われたこともあったのですが、売れすぎてしまうと困るのですよ。今は月1~2本ぐらいの注文を受けていて、そのくらいの本数だとお客様と1~1.5ヶ月打ち合わせをして生産でき、ちょうど良いです。基本の形は決まっていますが、打ち合わせで、名前を彫る等のカスタマイズ要望が出てきます。僕はそれに対応したいから、お客様と話して打ち合わせをします。そういうやり取りが面白くて楽しい時間です。だから、たくさん売れるとそれが出来なくなるから困るのです。できればパターをたくさん売りたいのに矛盾していて、本当はだめなのですけどね(笑)。

 

クラウドファンディングもしてみたが

パター事業でクラウドファンディングをした結果はいかがでしたか

遠藤氏:クラウドファンディングは大失敗でした。1本も売れなかったですし、問い合わせも何もありませんでした。自社HPにスポンサー企業が載っていますが、これは友人とか、周囲の知り合いが応援の意味でスポンサーになってくれました。クラウドファンディングなので、HPに載せるからいくらという感じで協力してもらいました。

 

ニュープランを支えてきた加工機械の名機たち

 

今後の販路は大手ECサイトでも

パターは社長自ら加工されるのですか

遠藤氏:今はそうです。社内の事業として、従業員に仕事を回したい気持ちは正直ありますが、今はまだ受注生産なので私が作っています。

たまに、コンペの景品で出したいという要望もあって、名前がないタイプについても考えています。実は大手ECサイトから声がかかり、パターを買い取って販売してくれることになりました。パターメーカーからもOEMで作って欲しいという話もありました。

 

ゴルフにクラブに広がる営業

パター事業を始めて、他に変わったことはありますか

遠藤氏:ゴルフは繋がる力が強いですね。今は、月に1回GOLF EXPOにオンライン出展しています。そこで売れることはあまりないですが、売るための横の繋がりが広がりました。例えばそこから派生して紹介してもらったゴルフ好きのママがいる銀座のクラブで「試打できるパターを1本店に置かせて」と言われて置いたら、そこから注文が入り始めました。面白い繋がりです。そういう繋がりはやってみないと生まれないじゃないですか。だから声がかかったら、僕のできる範囲ではやろうかなと思っています。クラウドファンディングみたいに結果が出ないことも勿論ありますが、こうするとダメなのかなと学びにもなります。どこでどう繋がるか分からない感じは本業とは別の楽しみですよね。


業種   金属加工業

設立年月          1999年6月1日

資本金              10,000,000円

従業員数          7人

代表者              遠藤 宏

本社所在地      東京都大田区仲六郷3-28-5

電話番号          03-3734-8611

公式HP           https://newplan1999.com/

この記事の著者

牛屋広和

牛屋広和中小企業診断士

大卒業後、建設会社にて民間建築の営業を担当。AI分野などの幅広い知識を習得し、常に最新のトレンドや技術動向に敏感になることを心がけている。2021年には中小企業診断士としての登録。自身の成長と共に顧客に貢献し、最善のアドバイス提供することを目指している。1歳の娘の子育て中。

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