- 2022-12-13
- 取材・インタビュー
製造業を支える機械を作る
株式会社芝橋は、各種省力機械の設計から製造・サービスまで「ものづくり」を一貫して行うメーカーである。オフセット印刷の特色インキ自動計量装置で国内トップシェアを誇り、優れた対応力、営業から開発・設計・製造・金属加工・メンテナンスまで一貫したものづくりにより顧客の信頼を確保している。
本特集では同社の強みと今後の展望について、代表取締役社長の渡辺 大氏(以下、渡辺社長)に話を伺っていく。第二回では同社の組織運営についての話を取り上げる。
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自社の運営について語る渡辺社長
製造現場への想い
経営理念「ツクルをつくる」についての想いをお聞かせください。
渡辺社長:この経営理念は、5年前に中小企業家同友会の成文化セミナーに参加し、4ヶ月程かけて作成しました。当社の製品は、一般の方々の目につくものではないけれど、日本の大手企業のものづくりの現場で必要とされる装置を作っています。「ツクルをつくる」には、日本のものづくりを支えるという意味を込めています。そのために、お客様が当社の製品を導入してよかったと思っていただけるように、お客様が困っていることを解決することを大切な判断基準にしています。例えば、自動計量装置だとお客様の使用量に適したサイズがあり、予算が合わないからと言って、適切サイズではないものを売り込むことはしません。このようなことは、毎年期初に経営計画を社員に説明する際や、毎月の営業会議でも繰り返し伝えています。
当社製品は標準仕様のラインナップを幅広く持ち、さらにお客様の要望に応えられるようにオプション仕様を設けています。本来であれば、メーカーは同じ商品を大量に作る方が効率がいいのでしょうけど、それでは大企業が参入してきたら対抗できません。ニッチな業界をターゲットにしていますので、付加機能を付けて差別化を図っています。
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顧客ニーズに合わせた豊富なラインナップ(特色インキ自動計量装置)(株式会社芝橋 ホームページより)
会社はどのような社風なのでしょうか。
渡辺社長:私の好きな言葉で「泰然自若」という言葉があり、意思をもって物事に動じないというモットーがあります。私自身が淡々と仕事をして感情的になる方ではなく、私の性格が影響してしまっているのかもしれないのですが、社員もおとなしいです。一対一で話すと自由闊達に意見を出してくれるのですが、営業会議や工程会議など会議の場で喋ることには慣れていない。なので、年二回ほど個人面談を実施するなど、私から社員の意見を積極的に取るようにこころがけています。
会社の組織について教えてください。
渡辺社長:営業が2名、設計が1名、組立が2名、加工が2名、資材が2名の全9名です。設計は3D CADにも対応しており、新規の設計は2D・3Dいずれかで製図しています。加工と資材は現在2名体制で、年配社員から若手に引継ぎを行っています。
加工業務を内製化している理由を教えてください。
渡辺社長:当然、加工はNC工作機械を使って自動制御した方が精度や生産性は高いので、基本的には外注しています。しかしながら、私が生まれる前に製造された汎用機を使用して手動で加工する作業は自社で行っています。当社のように組み立てがメインのメーカーだと、はめ合わせ部分を合わせながら加工したいケースが出てくるので、現場で加工する技術・人材を自社で確保しておくことはとても重要なことです。そのために、ある程度の加工作業はあえて内製化しているのです。
営業活動はどのようにしているのでしょうか。
渡辺社長:印刷業界については、当社の製品はインキを計量する機械ですので、印刷会社に出入りしているインキメーカーや商社と一緒になって営業をしています。インキメーカーの方々も機械はプロではないので、印刷会社との打ち合わせに当社が同行して仕様を詰めています。当社製品の強みは、計量の精度の高さと、商品のラインナップの幅の広さです。その分価格は少し高いのですが、ニッチな業界なのでオプションや特殊仕様への対応などで差別化し付加価値を高めています。1台の装置が高額な製品で、営業中の案件としては数多く抱えています。その進捗具合を月1回の営業会議で打合せしています。
ホームページに製品のメンテナンス動画が掲載されていますね。
渡辺社長:日本全国に商品を納めているので、製品が動かなくなった時に当社社員がすぐに現場に伺うことが難しい状況があります。少なくとも予備品との交換くらいはお客様で実施できれば、すぐに復旧できるだろうと動画を掲載しています。また、取扱説明書を見ないお客様もいらっしゃるので、動画であればスマートフォンでも確認されるのではないかと考えました。動画掲載ページにすぐにアクセスできるように、操作パネルにQRコードを貼るようにしています。
TOKYO働き方改革宣言企業に登録し、大田区「優工場」に認定されるなど、渡辺社長が就任されてから取り組まれたことはありますか。
渡辺社長:やはり、私の父親の世代とは時代が変わってきていますから、時代に対応しなければ若い世代を採用することができません。若い世代が入ってこないと会社の存続問題に発展してしまいますので、そのためにも変わらなければならないと思っています。それでも、週休二日制に変えたことは「そんなに休んで会社がなくなったらどうするんだ」と、父親の抵抗は大きかったですね。
昔は、会社に残っていたら仕事をしている感覚があったのかもしれませんが、残業時間も削減するように声掛けをして社員それぞれの意識を変えてもらいました。突発的な対応は仕方ありませんが、恒常的な残業は会社の仕組みや仕事のやり方の問題だととらえています。
外向きの印象を意識してホームページも整えてきました。以前は私ともう1人が最年少で45歳という状況だったのが、このような取り組みで20代社員が2名、30代社員も増えてきました。20代社員のうちの1人は同友会のつながりで現地採用したベトナム人で、働き始めて1年半ほどですが、日本人よりも行動的で日本に馴染んでいます。
最近ではフレックス制度も取り入れ、子育て世代の社員には好評です。有給取得奨励日を設けて、有給取得率は高い方だと思います。業務連絡にはLINEを導入しました。課題は、各種制度を設けたのはいいのですが、それによって社員間で不公平感が生まれないように配慮することです。
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令和元年度大田区優工場認定(写真左の木製表札は100年前の創業当時の表札)(株式会社芝橋 ホームページより)
社名 株式会社芝橋
業種 省力化機械設計製作
設立年月 1905年
資本金 55,000,000円
従業員数 9人
代表者 渡辺 大
本社所在地 東京都大田区西糀谷2-7-15
電話番号 03-3744-6551
公式HP https://www.sibahasi.co.jp/