切削加工の強みを活かしたローレット加工(大森精密工業株式会社)

滑り止めとして活躍するローレット加工

ローレット加工とは、一言でいうと“滑り止め”の役割を果たすものである。加工の種類は綾目模様と呼ばれる網目状のものと、平目模様と呼ばれる縞状のものと2つに大別される。どちらの模様を用いるかは顧客企業にてトルク試験という回転に関する試験をかけたうえで判断される。

綺麗な目と細かさが特徴的な同社の加工技術


同社が取り扱う製品のサイズは最大でもΦ20mm程度であり、時には何ミクロンという単位での加工依頼が来るなど、まさに精密な加工を手掛けている。顧客は医療・産業機器をはじめ幅広く、精度を求められる場面も多い。写真にある製品は、展示会の際に配布されたサンプルである。顧客企業の設計者が加工の種類や目の粗さを選ぶにあたって、現物の見本があると良いと考えて作成されたものだ。特徴は支柱となる部分(写真右)から各パーツが外せるようになっていることである。使用する際には単体でどの加工がいいかを判別することができつつ、使用後は合体することで各パーツが紛失しないような構造になっている。

 

特殊技術であると気づいた瞬間

ローレット加工において最も難しいのは綺麗な目を作ることだ。同社では切削加工を用いているが、材料が回っているなかで刃を一方向に当てた場合、一般的には線のような切削しかできない(ろくろが回っていて指を当てると線が描かれるようなイメージ)。一方でローレット加工では、凹凸を描きつつ綺麗な目を作らなければいけないため、長年の経験が必要になってくる。

技術の特殊性に気づいたのは、前職時代に他企業へローレット加工を外注した時だったという。発注した製品が手元に届いて目を注視したところ、不揃いな部分が多く見られ、同じ工具があったからといって全ての企業ができる技術ではないと感じた。

展示会に出展した際の様子(2021年)


強みを掛け合わせて発展する

2015年に創業した若い企業ではあるものの、顧客から多くの信頼を受け成長している同社。成長の秘訣は高い技術力だけでなく、先を見据えて顧客を開拓する力や引き合いに対してスピードを大事にして対応する力、人脈形成力など多岐にわたる。今後の同社の活躍は、大田区内をはじめとしたものづくりの現場を盛り上げていくことにつながっていくだろう。

この記事の著者

依田 彩那

依田 彩那中小企業診断士

2022年中小企業診断士登録。大学卒業後、自動車部品メーカーにて人事・営業を経験後、ソフトウェアベンダーへ転職。現在は人事部門にて採用・教育・評価を担当。組織開発で企業を成長させられる人材になることが目標。

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