相手の目線で考えることで自社の強みを発揮する(大森精密工業株式会社 土方徹之助代表インタビュー③)

次なる成長へ向かうために

大森精密工業株式会社は、ローレット加工をはじめとした精密複合加工を手掛ける企業だ。本特集では同社の好調な売上の秘訣や今後の展望について、代表取締役である土方徹之助氏へお話を伺っていく。第三回ではホームページから見える同社の取組みや今後の展望について取り上げる。

同社代表取締役 土方徹之助氏

 

どうせ働くのであれば少しでも楽しく働いてほしい

令和元年度「大田区優工場」(以下、優工場)に選出されていますね。選出による影響はありましたか。

代表:せっかく制度があるなら応募してみようと思ったところ、令和元年度の認定を受けられました。優工場は、技術や経営だけでなく労働環境や地域とのつながりも評価してもらえる認定制度なので、企業イメージ向上にもつながりました。「せっかく注文するなら優工場に選出された企業に頼みたい」ということで受注につながったこともありますよ。労働環境を良くしたいという考えの背景には、どうせ働くのであれば、少しでも働くのが楽しい・働きやすいと思ってもらったほうがいいという私の思いが根底にあります。働くのが嫌だなと思うと生産性も下がりますからね。従業員の活躍もあって業績は好調ですので、少しでも待遇面を良くしたり作業環境を整えたりできればと思って工夫しています。

最近行った作業環境の改善では、空気中に舞う工業用油を回収する装置を導入しました。当社の製造設備では大量の油を使うのですが、今までは製品の排出時に油がミスト状になって空気中に舞い、製造設備のボタンや作業服がべたついてしまっていました。何とか改善できないかと従業員から意見をもらったのをきっかけに、補助金なども利用して大規模な回収装置を導入しました。おかげで今はべたつくことがなくなり、作業場の空気も綺麗になりました。油くさい感じがないのは当社の作業現場の特徴かもしれませんね。

 

従業員とのコミュニケーションで心がけていることはありますか。

当社は決まった曜日の朝礼や会議などは一切していません。あと、よく聞かれるのですが社是もありません。従業員5名と小回りが利きやすいので「Aさんにはこう伝えよう」「Bさんにはこう伝えよう」とそれぞれの個性や考え方を踏まえたうえで、個別に話すほうが理解してもらえると思っています。ここも私自身の経験に基づいているのですが、定期的に実施される朝礼や会議などで伝えられる話はあまり定着しないと思っています。時間を有効に使うには、不要な朝礼や会議をやるよりも製品を作る時間に充てたほうが事業にとって有益だなと。一人ひとりがしっかりと働いてくれればそこに時間を割く必要がないと考えている部分もあります。ただ、当社の規模感だからできることであって、例えば10~20名の規模の企業になると手間や時間がかかってしまうため、同じことはできない気もします。

 

ホームページでは他に、更新頻度の高いブログも気になりましたが、意識していることはありますか。

代表:まずはネットでの検索のしやすさですね。今は企業をネットで検索して調べる時代なので少しでも顧客に見つけてもらえるようになればいいなと。企業名をつける際に検索しやすいようにと配慮はしましたが、“大田区 ローレット加工”と調べた時にはこの条件は変わってくるので、当社を特定しない調べ方をしても検索できるようにしたいと思っています。ホームページ関連は疎いですが、更新頻度もホームページの検索順に影響するはずなので積極的に更新しています。

またネット上での信頼度を上げたいとも思っています。検索してヒットしたとして、数年前の記事にNew!というマークがついているサイトを見ると、「大丈夫かな?」と思ってしまうことがありますよね。ただそうなる気持ちも分かっていて、ホームページの最新情報として載せられるものは展示会や休暇など限られたものしかありません。だからブログを更新することでページを更新していきたいなと。ホームページを作るにあたって、ブログは私だけでも更新できるように作って欲しいとお願いしました。ちなみにあのブログは私が書いていますが、読んでもらった方が少しでも面白ければと、くだけた雰囲気で書くようにしています。

不定期に更新されるブログの投稿は200ほどになっている(2022年11月時点)


事業拡大に向けた課題と向き合う日々

今後の事業展望として考えていることはありますか。

代表:今はちょうど事業の過渡期にあると思っています。創業当時は機械10台くらいを所有する規模に成長できればいいなと思っていましたが、まずこの目標は達成することができました。受注量の拡大に応じて先を見据えずに規模を拡大すると、受注量が大きく減った際に人件費をはじめとした固定費を削減するなどマイナス面で考えることが増えてしまうため、変化に対応しやすい今の規模で事業を行えるのは理想の状態に近いといえます。

しかしながら、ありがたいことに受注量が拡大しているので、規模拡大も視野に入れています。そうなった場合、製造設備をこれ以上入れることはできないので、新たな場所を確保することも考えなければいけないです。今の場所は営業面の利便性に加えて、ビルオーナーの方も懇意にしてくださるので手放したくないなと。ただ第二工場をもし設けるとなった場合、車で5分10分の距離にあるとトラブル発生時の対応で時間をかなり浪費してしまうとも思います。まずは新たな人材を採用するか、今活躍している従業員を育成するかして、私の目が届かなくても任せられるような状態にしないと第二工場を考えるのは難しい気もしています。今はまさに事業の過渡期と言える段階にあって、新たに考えるべきことに迫られている状況ですね。


社名 大森精密工業株式会社

業種   金属製品製造業

設立年月          2015年7月10日

資本金              5,000,000円

従業員数          5人

代表者              代表取締役 土方 徹之助

本社所在地      東京都大田区千鳥2-1-15

電話番号          03-6423-9155

公式HP           https://omori-seimitsu.com/

この記事の著者

依田 彩那

依田 彩那中小企業診断士

2022年中小企業診断士登録。大学卒業後、自動車部品メーカーにて人事・営業を経験後、ソフトウェアベンダーへ転職。現在は人事部門にて採用・教育・評価を担当。組織開発で企業を成長させられる人材になることが目標。

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