- 2022-1-28
- 補助金・助成金
来年度の事業再構築補助金からみる新事業の方向性について
今年度(令和3年度)の事業再構築補助金の予算は1兆1485億円と今までにない破格の予算がついていました。来年度の予算については、令和3年度補正予算が成立し、今年度の約半額の6,123億円が中小企業等事業再構築促進事業として確保されました。よって、来年度も事業再構築の募集があり、中小企業等の事業再構築を支援し、日本経済のさらなる構造転換を図るといった趣旨に変更はありません。補助金額・補助率の概要は以下の通りです。

引用文献[1]
しかし、来年度から大きく変わる点として、“グリーン分野での事業再構築を通じて高い成長を目指す事業者を対象に、従来よりも補助上限額を引き上げ、売上高減少要件を撤廃した新たな申請類型を創設することで、ポストコロナ社会を見据えた未来社会を切り拓くための取組を重点的に支援していく”といったことがあげられます。
この背景には、2020年10月に日本が宣言した「2050年カーボンニュートラル」を実現するために、今後の成長が期待される14分野の産業を選定し、高い目標を設けることで経済と環境の好循環を作っていく「グリーン成長戦略」が示されたことがあります。来年度の事業再構築の補助金にて、このグリーン成長戦略を後押しすることで、産業構造や社会経済に変革をもたらし、次なる大きな成長に繋げていくことが期待されます。
これは、国が新しい時代をリードしていくべき産業として、今後の大きな成長が見込める14分野を明確にしており、これから新規事業を考えるならば、この14分野にフォーカスすることが長期的に見て得策と考えられます。 選定された14分野は、以下の通りです。中小製造業の場合は、輸送・製造関連産業に分類される7つの産業を中心に検討するとよいでしょう。

引用文献[2]
輸送・製造関連産業のうち4産業について、グリーン成長戦略の「実行計画」(引用文献[2])で取り上げられている今後の取組の中で、中小製造業と関連性が高そうな取組例を以下に抜粋します。今後は、この分野から自社に関連しそうな内容を抽出し、自社又は数社で協力しながら新規事業のネタを考えてみる、のはいかがでしょうか。今年は、国の成長戦略に沿った新規事業を掘り起こすことで、自社の長期的な経営戦略を描くことをお勧めいたします。
⑤自動車・蓄電池産業
- 次世代電池、モータシステム、軽量化技術、製造・リサイクル工程のCO2排出削減などの技術開発
- 安全運転支援機能の普及、高精度デジタル地図・OTA・狭域通信機能の社会実装に向けた実証や普及策
- 高度なセンサー・コンピュータ・車載ネットワークシステムやデジタル開発基盤等の性能向上・省エネ化の実現のための研究開発
⑥半導体・情報通信産業
- 超高効率次世代パワー半導体(最先端Si、GaN、SiC、Ga2O3等)の研究開発
- 超高効率次世代省エネ機器(モーター制御用半導体等)の研究開発
- 次世代パワーエレクトロニクス技術(高効率制御等)の研究開発
- 次世代モジュール技術(高放熱材料等)の研究開発
- 次世代受動素子・実装材料(コイル等)の研究開発
- Siパワー半導体・次世代パワー半導体(GaN等)等の成果を用いて、現時点から応用可能な用途(電動車・データーセンター電源・LED等)に係る技術の実証・実績・高度化
- 超分散グリーンコンピューティング技術の研究開発
⑩航空機産業
- 機体のモデルチェンジに合わせ、装備品電動化に向けた技術、ハイブリッド電動化向け技術の確立
- 複合材の軽量化・製造コストの更なる低減・中長期的なリサイクル技術の確立の実現、将来エンジンに向けた革新素材の開発
⑪カーボンリサイクル・マテリアル産業
- 高張力鋼板( ハイテン)を超える革新素材(超ハイテン)や電動化に不可欠な新合金等の革新的な金属素材の開発、複数素材の組合せ(マルチマテリアル化)により、輸送用機械の脱炭素化と高速化
- 水素還元技術、電炉の高度化技術等の開発に加え、溶解、圧延工程における電化かつ省電力化
引用文献
[1] 経済産業省. (2021). 事業再構築補助金 令和3年度補正予算の概要[PDF file]. Retrieved from https://jigyou-saikouchiku.go.jp/pdf/hoseiyosan_gaiyou.pdf
[2] 経済産業省. (2021). 2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略 [PDF file]. Retrieved from https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/ggs/pdf/green_gaiyou.pdf