すべては生産性向上のため ~若き取締役の改革( 株式会社マテリアル 細貝 龍之介 取締役インタビュー②)

創業30周年における新たな取り組み
創業当時の材料中心から、加工中心の事業体制へと大きく事業転換をはかることで、経営危機を乗り越えてきた株式会社マテリアル。積極的な設備投資により試作から量産まで幅広いニーズに対応できる体制を整え、顧客企業の信頼を勝ち得てきた。しかし、直近では主要顧客のうち1社が内製化を始めるなど売上の減少がみられる。創業30周年の節目において、さらなる成長に向けてどのような取り組みを行っていくのか。第2回も、創業者の長男で現在取締役を務める細貝龍之介氏にお話をうかがった。

株式会社マテリアル 取締役 細貝龍之介氏

 

新規顧客開拓への取り組み

次の柱となる顧客を開拓していくために、どのような施策を考えていますか。

細貝氏:展示会をきっかけとした新規顧客開拓に力を入れていこうと考えています。そのために、チラシ作成、ブース設営、展示会後のフォロー営業まで、今までのやり方を抜本的に変えていきます。というのも、以前、社長が営業していた頃は、展示会をきっかけとした営業活動に力を入れたことにより、現在の主要顧客獲得につながったのですが、社長が営業を外れてからここ数年は力を入れられておらず、新規顧客も獲得できていないからです。展示会の対応は、どうしても通常の業務と並行して進めることになるため、準備不足で効果的なアピールができない、また、展示会後は通常業務がたまっているため、フォロー営業をする時間が取れない、そしてその結果成果が上がらない、という悪循環に陥っていました。ですから、そのやり方を変えていきます。

 

展示会後のフォローが難しそうですね。

細貝氏:展示会後のフォローについては、少人数でいかに効率よく行うかが課題です。現在、クラウド型の営業支援ツール導入を検討しています。これまで人海戦術で行っていた名刺管理や顧客分類が効率的に行える点や、これまで行っていなかった見込み客へのメール一斉配信などの機能により、展示会後の顧客フォローを効率的に行える点に魅力を感じています。新規に営業担当者を雇用して育てる時間やコストを考えると、充分費用対効果が出ると考えています。

また、展示会で配るチラシも作り変えます。これまでは、「何でもやります」と、総花的な内容になっていましたので、当社の強みにポイントに絞ってアピールしていこうと考えています。

 

アピールポイントはどんなところですか。
細貝氏:当社の魅力は主に3点あると考えています。1点目は、コストです。当社は材料を一次店から購入するため、二次店から購入する同業他社に比べ、コストを抑えられます。2点目は、納期です。当社は材料販売も行っているため、常時材料在庫を一定量保有しています。そのため、最短半日という超短納期で出荷することが可能です。3点目は、試作だけでなく量産まで一気通貫で対応できるところです。当社の特徴的な設備として、20面のパレットチェンジャーを搭載した同時5軸マシニングセンタがあります。一般的なマシニングセンタは、材料を1つずつ付け替えて加工する必要がありますが、この設備は回転寿司のようにパレットが移動して加工するため、付け替える必要がなく、24時間稼働できます。当社はその設備を4台所有しているため、高稼働率で量産することが可能です。これらの点が当社のアピールポイントです。

20面パレットチェンジャー搭載の同時5軸マシニングセンタにより高稼働率で量産を実現

 

 

さらなる生産性向上を目指して

稼働率管理はどのように行っていますか。

細貝氏:当社では、事務所に大型のホワイトボードを設置しており、全設備の2か月分の生産スケジュールを記入し、進捗管理をしています。そして、稼働が低い場合は各セクションのリーダーに確認するようにしています。現在、稼働率低下の原因として多いのは加工課員による工程内検査に時間がかかっていることです。加工課員は、加工不良が発生した場合、「不適合報告書」という書類を提出し、技術コンサルタントの先生と不良発生原因の検証をすることになっています。加工課員はその検証を恐れて、必要以上に慎重に検査していることがわかりました。当社は、別途、品質保証課で受入検査と出荷検査を行っており、不適合はそこで発見できるため、工程内検査は効率化が必要と考えています。

 

何か対策は検討されていますか。

細貝氏:現在、品質保証課は、工場とは別のテクニカルセンターで全員勤務しており、すべての製品の受入検査、出荷検査を行っていますが、それを各工場に分散配置し、品質保証課員に工程内検査をしてもらうことを考えています。加工不良が発生するのは加工現場ですので、そこで検査することにより生産性向上をはかります。すでに試験的に本社工場で品質保証課員による工程内検査を開始しており、6月から全工場に展開する計画です。そのために、先般、三次元測定機を増設して3工場すべてに導入し、準備を進めています。

 

人材育成にも力を入れていますね。

細貝氏:当社では毎週金曜日の夕方、若手社員向けに「マテリアル技塾」という勉強会を行っています。先ほどの話に出てきた技術コンサルタントの先生に指導してもらい、マシニング検定1級を取得するまでフォローしています。

人材育成に力を入れており、1級技能士が多数在籍する

また、今期から私も現場に入り、社員の意見を吸い上げて現場の改善活動に取り組んでいます。一例をあげると、新人社員に対するOJTに関して、指導が不充分という指摘がありました。その原因として、当社ではリーダーも含め加工課員全員が加工を行うため、時間的な制約から、どうしても新人社員への指導が不足する場合があること、製品点数が多いためOJTだけで修得するのは限界があることがわかりました。そこで、今年の2月から「製品カルテ」という取り組みを始めました。「製品カルテ」とは、製品ごとに、その製品の構造、使用する切削工具、段取り、梱包荷姿といった加工に必要な情報を整理してまとめたものです。これを作業の際に参照することによって、新人社員が先輩社員に聞かなくとも対応できることが増え、生産性の向上に役立っています。


業種   金属の精密加工、材料販売、CAD設計、ITソリューションサービスなど

設立年月          1992年7月

資本金              2001万円

従業員数          30人

代表者              細貝 淳一 氏

本社所在地      東京都大田区南六郷3-22-11

電話番号          03-3733-3915

公式HP           https://www.material-web.net/

この記事の著者

吉田樹生

吉田樹生中小企業診断士

1975年愛知県豊田市出身。東京都在住。神戸大学経営学部国際経営環境学科修了。日系ITベンダーにて海外営業を担当した後,米IT調査会社を経て,現在は米ITベンダーの日本法人に勤務。インド駐在経験をもつ。2021年中小企業診断士登録。ITとファイナンスを武器に中小企業のグローバル戦略を支援することが目標。

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