レーザー加工機導入を機に、効率化、高付加価値化を追求(有限会社尾熊シャーリング 代表取締役 尾熊稔文様 インタビュー①)

厚物、長尺物の金属加工が強み

2023年に創業60周年を迎える有限会社尾熊シャーリングは、長きにわたり板物の切り・曲げ加工を行っている会社である。特に厚物や長尺物の加工に強みを持ち、サイズの大小やロット数にも柔軟に対応し、多くの顧客の支持を得ている。

本特集では、同社の強みやものづくりへの想い、将来への展望など、代表取締役の尾熊稔文氏にお話をうかがっていく。第一回では、同社の強みである加工技術や会社の沿革について取り上げる。

有限会社尾熊シャーリング代表取締役 尾熊稔文氏


レーザー加工機導入が転機に

御社の事業内容と、得意分野について教えて下さい。

尾熊氏:主に板物の加工を行っています。強みといえば、厚物や長尺物を切って、曲げることが得意分野で、建築物に使われるような大型の物(例えば駅構内の屋根など)にも対応しています。羽田空港国際線ターミナルの屋根の部品や国際線ターミナルの管制塔の新しい建物の一面も、当社で曲げ加工や切削を行いました。建築物向けのほか、自動車、医療品分野にも対応しています。できないものはできないですけれども、やれるものは何でもやります、というスタンスです。

量もいろいろ対応でき、1個、2個の小ロットや試作品から、何百、何千という数にも対応しています。そのような柔軟な対応で、長年支持されてきました。

当社のお客様は溶接工場や板金工場で、溶接工場は切ったり曲げたりする設備を持っていませんので、当社に加工の依頼をいただいたり、同じ業種の板金工場でもさすがにこの大きさは曲げられないとか、この大きさは切れない、というものを当社で対応しています。

 

2023年に創業60周年を迎えますが、これまでの沿革について教えて下さい。

当社は、私の祖父が大森で尾熊製作所として創業しました。今の大田文化の森(大田区役所跡地)の近くです。その後、大森の東邦医大通り沿いへの移転を経て、現在のこの場所に移転してきました。私はここで生まれたので、以前の場所のことはよくわかりませんが、創業が大森だったこともあり、今も大森工場協会に加盟しています。

創業以来、「シャーリングで切り、穴を開け、曲げる」ということを行ってきましたが、2006年にレーザー加工機を初めて導入しました。それが事業の転機となり、それ以降は取引先が増えて売上が回復し、生産性も向上し、現在に至っています。

 

レーザー加工機の導入が事業の転機になったとのことですが、導入のきっかけは何だったのでしょうか。

尾熊氏:レーザー加工機導入前は本当に売上が少なく、このままではまずいという危機感がありました。2006年に、これからはもっと複雑な切断にも対応していこうと、現在使用しているレーザー加工機の前の機器を導入しました。レーザー加工機ですと、これまでより複雑なものにも対応でき、さらにより短時間で加工できます。CADと連動していて、ボタンを押せば指示どおりに切ってくれます。レーザー加工機の活用にシフトしていこうということで、この頃から仕事内容が大きく変わりました。

シャーリングだと、まっすぐにしか切れませんでしたが、レーザー加工機はいろいろと変形したものも切って曲げられるので、仕事の幅が随分広がりました。レーザー加工機導入前は、レーザーで行う仕事は外注し、外注先で切ってもらった金属に当社で曲げ加工を行っていました。つまり、当社は曲げるだけです。そうすると、当社が受け取る金額は曲げの分だけで、大部分をレーザー加工の外注先に持っていかれてしまう。さらにその曲げを間違えたら、その失敗は当社が負わなければならない。リスクばかりが大きくなっていました。

そういった事情もあり、当社もこれだけの工場があるのだから、レーザー加工機を導入した方がいいのではないかと先代の社長と私で話し合い、レーザー加工機の導入を決めました。投資額は相当かかりましたが、導入したところ仕事内容がガラッと変わり、いい方にどんどん向かっていってくれました。身体を酷使して汗水たらし何トンもの材料を動かして、という働き方を止めて、今の仕事に変えました。従業員も、作業がかなり楽になったと思います。

 

いつかは父の後を

尾熊社長の経歴について教えて下さい。

尾熊氏:私は、祖父、父に続いて3代目になります。代表になって7年ほど経ちます。子供の頃から、日常的に工場でやっている風景を目にしていて、いつかは父の跡をという思いはありました。ただ、小さいころは継ぐとは思っていませんでした。父も、特に継げとは言いませんでしたし、「うちに入るにしても入らないにしても、1年でも2年でもいいから、一度よその家のメシを食ってこい」と言われていたので、学校卒業後は自動車ディーラーに就職し、2年ほどサラリーマンを経験しました。しかし、工場という大きな財産があって、私も小さなころから機械や道具を持って作業をすることが好きでしたので、入社を決めました。

入社後、16,7年はずっと現場をやっていました。長く現場を経験したのは、「小さな会社だから、やっていく以上は現場を知らないと経営はできない」という父の考えからです。今は、現場での作業はほとんどやりません。見積もり作成や、製品の値段付け、お客様のところに伺って打合せなど、営業活動が中心です。しかし、見積もり作成や値段付けは、現場での経験がないとできません。製造業の場合、まず「当社でできるか」から始まり、「できる」と判断すると「いくらでできるか」といった具合に値段の付け方も独特なところがあります。売上を上げていくためには、見積もりをいかに的確に早くできるかということも重要です。父も、そのあたりのことを言っていたのだと思います。

会社名にもなっている、シャーリング加工用の機器

 


業種   金属加工業

設立年月          1963年6月1日

資本金              3,000,000円

従業員数          5人

代表者              尾熊 稔文

本社所在地      東京都大田区西六郷4-35-13

電話番号          03-3733-6977

公式HP           https://ogumashearing.co.jp

 

この記事の著者

浜田健嗣

浜田健嗣

2021年中小企業診断士登録。大学卒業後,鉄道会社に入社。主に経理・財務を担当し,再開発事業やショッピングセンターの運営にも携わる。「○○で地域を元気に」をモットーに活動中。

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