金属加工を通して「ものづくりの民主化」と「製造業の再興」を図る(株式会社極東精機製作所 鈴木亮介社長インタビュー第2回)

技術のアップデートを可能にする顧客対応力と、その源泉

1968年の創業以来70年以上、特殊な金属加工の技術を継承し磨き続けているが、その現場には年齢の若い従業員が非常に多い。どのような企業風土のもとで技術のブラッシュアップを継続しているのか、社長の考えを伺った。

株式会社極東精機製作所社長 鈴木亮介 氏

平均年齢は30代前半。歴史のある会社で技術を磨く若い従業員

現在の社員の年齢構成について教えてください。 

鈴木氏:20代30代が一番多いです。40代が1人、50代が2人、60代はおらず、現在の平均年齢は33歳です。新卒採用と中途採用をいずれも行っています。過去にはハローワークを使ってみたこともありますが、民間企業が提供する人材紹介や転職支援サービスで採用する人の方が、やる気がある可能性が高いと感じます。当社はdodaを使っていました。求人を公開するのにある程度の費用が発生しますが、その価値は十分あったと感じています。このようなサービスを通じて紹介された方と面談して、本当に自分の価値観と合う人を採用することが出来ました。

新卒は、大田区の六郷工科高校の卒業生を採用しています。六郷工科高校にはデュアルシステムという、在学中に職業体験を積むためのインターンシップ制度があり、そのインターン生を当社で受け入れています。六郷工科高校の卒業生は今4人いますね。その中でも一番先輩の子は23歳ですが、彼が最初に来てくれたのは高校2年生の時だったので、もう7年いることになりますね。私のことは兄のような存在に感じていると思います。

 

同じ学校の卒業生が何人もいることのメリット・デメリットについて何かありますか。

鈴木氏:先輩後輩の関係があるので指示系統がしっかりしますね。それからコミュニケーションが活発になります。○○先生いたよね、最近学校どうなっているの、などの共通の話題が多くあるので、新しく新入社員が入ってきても自然に仲良くなっているのは良いことですね。そのおかげで技術の継承は非常にしやすいです。
デメリットとしては、深く考える前に先輩に同調してしまうことが多少ありますね。ただ、みんな自分を持っている芯の強い子なので、大きな問題になることはありません。

 

六郷工科高校卒の社員。社長の下で日々技術の向上に勤しんでいる。

 

 

その他、新卒採用の時に工夫していることはありますか。

鈴木氏:アルバイト経験の有無を見ています。もし無ければ、入社前に飲食店での接客のアルバイトを必ず経験してもらうようにしています。これで圧倒的にコミュニケーション能力が身につくんですよね。飲食店ではボケっと出来ないので、キビキビ動く癖をつけることができます。

製造業だと、直接お客さんと話しをするのは上の人や経営者だけですよね。そのため、働く前にお客さんの気持ちが理解できるようにしておく、という目的もあります。例えば、「お客さんに出した料理が腐ってたり、中に虫が入ってたりしたら、大クレームだよね。どうするの?それはうちからしたら品物に傷が入ってたとか、規格寸法に入っていないとか、お客さんの仕様を満たしていないっていうのと同じだよ。」という説明を身に染みて理解してくれるようになります。

飲食業は、社会の縮図になっていると思うんです。ホールスタッフとして働くことは、調理場とお客さんの中間に立つことです。調理場に怒られ、お客さんに怒られる。そういった経験を通じて営業的感覚が身に付きます。

さらに言うと、それまでほとんど高校の文化の中だけで過ごしてきているので、井の中の蛙にならないようにするという、私なりの親心もありますね。

 

アルバイトの経験を積んでもらうことでの変化は具体的にありましたか。

鈴木氏:六郷工科高校卒の一番先輩の子は、最初はまったく喋ることが出来ず、コミュニケーション能力がゼロでした。そこでアルバイトをしてもらう荒療治をかけました。当時は六郷工科高校の先生に、「そんなこと言ってくる人は初めてですよ。」と言われましたね。帰ってきたときには見違えるくらいキリッとした顔つきに変わっていましたし、本人も良かったと言ってくれましたよ。そういう根性のある強い子が一番上にいると、後輩も強くなっていくんです。

 

設備投資の意思決定にも社員が大きく関わる風通しの良い風土

HP内のブログ「極東ブログ」にも紹介されていましたが、今年の初めに社員の方の要望で検査機を導入されたようですね。

鈴木氏:3月に、何百万円もする高価な3D検査機を導入しました。この設備の導入は3~4人の現場の従業員からの要望がきっかけでした。「社長がすごい案件取ってきたけど、新しい設備無いと測れないから買ってください。」と一週間ずっと言われ続けましたね。それで設備導入に至りました。

 

かなり風通しの良い職場であるイメージがありますが、何か社長として気をつけているポイントはありますか。
鈴木氏: 社員各自が自分の意見をはっきり言う場を設けています。月に一回、品質に対するディベートを開いています。大きい模造紙にポストイットで改善点をどんどん出して、種類ごとにグルーピングする活動を通して、お互いに意見を出し合うようにしています。その他、社員全員が入っているLINEグループを作っていて、これが非常に役に立っています。荷物の受け渡しのように小さなことから重要なことまで、言いたいことがあればそこに皆それぞれ投稿していきます。全員が見るので、言った言わないがなくなります。私が前ともし違うことを言っていたとしても、「社長は前こう言ってたじゃないですか。」と指摘してきます。風通しは抜群です

 

 

21年3月に導入したKEYENCE製3D検査機。測定子が入らないような箇所の寸法測定が可能だ。


【企業情報】
業種   各種金属製品製造業

設立年月          1968年10月23日

資本金              10,000千円

従業員数          15名(役員除く)

代表者              鈴木亮介

本社所在地      東京都大田区南蒲田2-19-4

電話番号          03-3734-6461

公式HP          https://www.kyokutouseiki.co.jp/index.html

 

この記事の著者

山崎勇典

山崎勇典中小企業診断士

1992年生まれ。埼玉県出身。大学卒業後、化学メーカーにて機能性材料の営業職に従事。 現在は海外の電子デバイス市場を対象にしたマーケティング活動に携わる。

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