会社のお金の流れが一目でわかり、数字に強くなる「お金のブロックパズル」(入門編)(妄想biz代表 川原 茂樹)

決算書は読まなくてもOK!

会社のお金の流れが一目でわかり、数字に強くなる「お金のブロックパズル」(入門編)

 

いきなりですが、質問です!

「あなたは、会社の数字に強いですか? 」

例えば、自社の決算書を見て、良いところと、改善点を説明できるでしょうか?

 

数字のことは税理士に任せている。わからなくてもなんとかなっている!

と言われる経営者さんは多いです。経済全体が右肩上がりの時代は、それで良かったのかもしれません。でも今、次のようなことでお悩みではないでしょうか?

 

社長さんのよくあるお悩み事例

・決算書について税理士に説明してもらっても、眠くなるばかり。どこをどう見たらいいのかわからない。。。

・こんなに頑張っているのに、なぜかお金が残らない。

・今は困っていないけど、将来が不安。後どのくらい頑張ればいいのか考えると、気が重い。

・社内で、来期の売上目標を発表しても、社員は全然乗り気じゃない。。。本気にさせるには、どうすればいいのか?

・今期決算もギリギリの状態なのに、社員には危機感が足りない。

 

会社のお金の流れを見える化する効果

こういったお悩みの根本には、会社の数字を把握できていないことが多いのです。企業が活動した結果は、数字に表れる。つまり、アクション(行動)と成果(数字)をつなげて捉えることが重要です。これをやったら会社の数字がこんなによくなる。自分のボーナスがこんなに増える(ハズ)とわかれば、やる気が増し行動を後押しすることができます。

 

会社のお金の流れを見える化する「お金のブロックパズル」とは?

しかし、いきなり決算書を読み解くのはちょっとハードルが高い。そこで、私が所属する一般社団法人 日本キャッシュフローコーチ協会の創設者、和仁達也 代表が考案した「お金のブロックパズル」という図解手法をご紹介したいと思います。西順一郎先生がつくられた「STRAC表」(現・MQ会計表)をもとに、利益から先の返済や繰越金まで見える化して、会社全体のお金の流れ(キャッシュフロー)を一目でわかるようにした手法です。

こちら(図1)は「お金のブロックパズル」の例です。いきなり全体像を見ると、ちょっと複雑に見えるかもしれませんが、段階的に説明していきますので、ご安心を!

 

会社の数字が見えていない「ドンブリ経営」の例

一方で、会社の数字を大雑把にしか捉えられていない、いわゆる「ドンブリ経営」とはどのような状態でしょうか? 「お金のブロックパズル」と対比して、図にしてみると、このような感じです(図2)。

随分シンプルですね。売上高と費用、利益がなんとか把握できている状態。ある経営者さんは黒字か赤字かもわからないとおっしゃって、私がビックリしたことがあります。会社の数字に興味がない、それより目先の仕事が気がかりという典型でしょう。

 

運よく利益が出ていればいいのですが(左側)、いつ赤字になってもおかしくない。また、赤字になっている場合は(右側)対策が必要なのですが、「ドンブリ経営」では原因分析も対策も難しいのが実情です。

 

「お金のブロックパズル」を書いてみましょう!

「お金のブロックパズル」は手書きでもOKです。
1.最初に正方形をイメージしながら、左端に長方形を描いて「売上高」としてください。

高さ方向が数字の大きさを表しています。ここでは仮の数字で100としています。後で、実際の御社の売上高を入れてみてください。ザックリとした数字で構いません。

2.その右側に、横長の長方形を描いて「変動費」としてください。

「変動費」は、売上高に比例して上がったり、下がったりする費用のことです。製造業では、材料の仕入れや、外注加工費などが該当します。御社では、どんな費用があるか、少し考えてみましょう。ここでは「変動費50」としています。

3.「変動費」の下に、縦長の長方形を描いて「粗利」としてください。

「売上高」から「変動費」を引いたものが「粗利」です。売上高から真っ先に出ていくお金が「変動費」で、残ったのが「粗利」。利益の元になるお金です。

 

「粗利」÷「売上高」=「粗利率」は重要な指標です。業種別におおよその目安があり、製造業では50%前後と言われています。御社の粗利率はどのくらいでしょうか? ただし、事業内容によって違いはありますので、他社との比較も大切ですが、自社の推移を分析することが重要です。もちろん「粗利率」は高い方がいい。高い「粗利率」は、より多くの付加価値を生み出していることを表しています。

 

さらに、残りのマスを埋めていきましょう。

 

4.「粗利」の右側に、まず「固定費」と「利益」を描きます。

ここでは「固定費 45」「利益 5」としています。

5.さらに、「固定費」を「人件費」と「その他費用」に分けます。

固定費の中で「人件費」の占める割合が大きいことがわかると思います。

「人件費」÷「粗利」=「労働分配率」も重要な指標です。労働分配率が下がれば生産性が向上していると言えます。しかし、人件費の絶対額(給与、賞与など)を下げるのではなく、売上高や粗利を増やすことで、相対的に労働分配率を下げるのが目指すべき方向性でしょう。

 

ここまで、利益までのお金の流れを見てきました。

費用をひとくくりにする「ドンブリ経営」との違いが見えてきたでしょうか。

 

でも、これで終わりではありません。

「利益」がそのまま会社に残るわけでも社長のポケットに入るわけでもありません。「利益」からさらに出ていくお金があるのです。

こちらが最初にご紹介した「お金のブロックパズル」の全体像です。

利益の部分を拡大して、その右側に続きを描いています。

 

6.利益から税金が引かれる

会社で利益が出たら、税金を払う必要があります。節税したい気持ちはあると思いますが、税金を払った方が、最終的に会社に残るお金を増やすことができます。

 

7.減価償却費を繰り戻す

設備や建物など、複数年にわたって事業に使うものは、減価償却という考え方に基づき、毎年費用計上します。その他費用に含まれますが、実際に毎年お金が出ていくわけではありません。そこで、税引き後利益に、減価償却費分を繰り戻し、実際に手元に残るお金を計算します。

 

8.借入の返済、設備投資の資金を差し引いて、残るのが繰越金

さらに、多くの会社では借入の返済があると思います。返済は通常の経費には入れられません。返済利息は経費扱いですが、元本分は返済する必要があります。つまり、利益が出ていないと、返済ができないことになります。このことは、あまり認識していない経営者も多いので、注意が必要です。

 

設備投資の費用(積立金を含む)はここで登場します。設備投資は通常は費用に含めることができません。

そして最後に残った「繰越金」がある程度自由に使えるお金ということになります。売上高100から始まって、繰越金1と、非常に厳しい状況も見えてきます。現状を把握することが、今後について考える第一歩となります。

 

利益を増やす方法とは?

では、売上高と利益は、どのような関係になっているでしょうか?

単純に考えれば、売上高を上げれば利益も増えそうです。でも、どのくいら売上を上げればいいのでしょう。例えば、売上高が10%増えたら、利益はどのくらい増えると思いますか? 「お金のブロックパズル」で確認してみましょう。

 

売上高10%増で、利益はなんと2倍になります。トリックではなく、本当の話です。この例では、人件費を含む固定費は変わらない前提ですが、少しボーナス(人件費)を増やしてもいいかもしれません。会社も社員もハッピーになれそうです。

 

利益が減ってしまうパターンとは?

では逆に、利益が減るケースを考えてみましょう。よくあるのが、値引き。ダメとわかっていても、商談獲得のためについ値引きしてしまうことはありませんか。例えば、5%値引きしたとき、利益はどうなるでしょうか?

 

値引き5%で、利益はなんとゼロ。すべての努力が水の泡となります。これ以上値引きすると、売れば売るほど赤字になるという恐ろしい状況です。値引きがいかに悪影響を及ぼすか、「お金のブロックパズル」で一目瞭然ですね。

 

 

「お金のブロックパズル」のまとめ(特長、メリット)

ここまで、「お金のブロックパズル」を使って、会社のお金の流れを見てきました。決算書を読むのは難しいけど、これなら自分でもわかる。さらに、社員に説明できる。そう思っていただけたら嬉しいです。まとめると、以下のような特長があります。

 

・1枚の図で、会社全体のお金の流れを見える化することができる

(細かなことは一旦横に置いて、社長や社員が把握すべき重要なポイントがわかる)

・どの部分の数字が変わると、会社全体の数字がどのように変化するか、わかる

(アクションと成果の因果関係がわかり、分析、予測、計画に活用できる)

・会社方針や、今期目標を話し合い、優先順位を考えて行動することに活用できる

(分析だけでなく、モチベーションアップのためのツールとして使える)

 

税理士さんなど、お金の専門家から見れば、ちょっと大雑把に見えるかもしれません。しかし、社長や社員が把握しておくべき経営判断に必要な情報はおおよそ「お金のブロックパズル」でわかります。シンプルで実用的な手法と言えるでしょう。

 

さらに、来期の計画を立てるときや、社員の行動を後押しすることにも使えます。そのあたりのことは、次回お伝えします。

これを機会に、お金のことが少し身近に感じられるようになると嬉しいです。

この記事の著者

川原茂樹

川原茂樹妄想biz(もうそうビズ)代表 中小企業診断士 キャッシュフローコーチ

大手IT企業(富士通株式会社)で33年間のキャリアを持つ。数多くの新商品・新 規事業開発に関わり、企画・開発、マーケティング、営業、知財、コンサルティ ングなどを歴任。立場やバックグラウンドの違いによる意見の衝突、トラブルの経験を活かし、社内外の通訳として重宝されています。

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