- 2021-8-31
- ものづくり営業・販売促進
町工場が展示会出展で成功する秘訣②「紹介する商材は1つに絞る」
前回は、町工場が出展する展示会の選び方について説明しました。今回は、事前準備のポイントをご紹介します。
スケジューリングは必須
展示会への出展が決まったら、次にやることは展示会までの様々な準備や展示会後を含めた細かい作業一つひとつの予定を立てるスケジューリングです。出展から展示会当日までだけでなくフォロー営業までのスケジューリングを行うようにしましょう。
展示会でのスケジューリングが必須である理由は2つあります。
1つ目の理由は、スケジューリングをしっかり行わないと準備が間に合わなくなるからです。経営資源に限りのある町工場では、経営者や営業パーソンが通常業務との兼業で展示会のメイン担当になるケースが多く、展示会の担当になったからといって、展示会の準備に集中できるわけではありません。経営者は経営マター、営業パーソンであれば担当顧客の対応などの通常業務と展示会の準備を同時進行する必要があります。そのため、スケジューリングで「いつまでに、だれが、何をするか」を見える化しておかないと通常業務を優先しがちになり準備が遅れ、最終的に準備が間に合わなくなってしまいます。
2つ目の理由は、展示用のサンプルの完成を間に合わせるためです。町工場では取引先メーカーの製品に使用される部品などを製作している場合が多く、メーカーとの契約上、部品をそのまま展示会で公開することが難しく、その場合は自社の技術を見せるために展示会用のサンプルを別途製作する必要があります。サンプルの完成には、計画~設計~製作まで数カ月かかるケースもあるため、その期間を見込んでおかなければ当日までにサンプルの準備が間に合わなくなってしまいます。
スケジュール表は、エクセルなどで簡単に作ることができます。下表はスケジュール表の例です。参考にしてください。
紹介する商材を「1つ」に絞る
準備での次のポイントは、展示会で紹介する商材(テーマ)を「1つ」に絞るということです。町工場からの展示会出展のご相談で「せっかく費用と時間をかけて展示会に出展するのだから、自社の商品・サービスを1つでも多く紹介して成果に結び付けたい」という話をよく伺います。しかし、来場者の立場になって考えると、取捨されないままあらゆる商品が展示されている中小企業の小さな1コマブースは恐らくチラ見して、「何をしている会社かよくわからないな…」と通り過ぎてしまうのではないでしょうか。
それよりも、紹介する商材(テーマ)を1つに絞った方が、ブースの訴求度は高まり来場者の目に留まって来場者はブースに入りやすくなります。
もしどうしても他の製品も紹介したいのであれば、展示サンプルではなく、その他の製品の商品のカタログなどを準備しておき、来場者へのメイン商材の紹介の後にカタログを使って紹介するようにしましょう。
キャッチコピーを決める
商材が決まったら、次に展示ブースのキャッチコピーを考えます。キャッチコピーとは、①ターゲット顧客が、②思わず足を止めてしまうような、③20文字程度のメッセージ。のことを言います。
このキャッチコピーとその見せ方で展示会の効果はガラリと変わると言っても過言ではありません。
まず、キャッチコピーの基本的な書き方は、
誰に(ターゲットに)、
何を(商品・サービスの売りを)、
どう伝えるか(表現を工夫する)、
という視点で考えていきます。
まず、「誰に(ターゲットに)」、は文字通りその製品サービスを使用するターゲット顧客を想定します。必ずしもキャッチコピーにターゲット顧客を明記するという意味ではなく、想定したうえで、「何を」「どう伝えるか」を考えるということです。
さらに、「何を(商品・サービスの売りを)」では、商品・サービスの特徴を可能な限り、その商品・サービスを使用する顧客の立場になり、その顧客の「メリット」の視点で考えていきます。
最後に、「どう伝えるか(表現を工夫する)」では、「誰に」「何を」を考慮したうえで、様々な視点から、どう表現したらターゲット顧客に足を止めてもらえるかを検討していきます。
【キャッチコピーの例】
キャッチコピーの例として、株式会社竹中製作所の「タケコート1000」という製品で考えてみます。この「タケコート1000」は、ボルトに竹中製作所の独自技術である特殊なフッ素樹脂塗装を施した製品で、国内外の競合他社の製品に比べ錆びにくい(海水に浸しても50年間錆びない)というのが特徴。塩害の影響を受けやすい海に近いプラントの配管のボルトの締結などによく使用されています。
竹中製作所のウェブサイトや商品カタログには、下記のような表現でタケコート1000の特徴が記載されています。
「世界トップシェアのフッ素樹脂塗装」
「日本が誇る最強防錆被膜ボルト・ナット」
この表現でもタケコートの特徴は伝わりますし、商品カタログ上の表記としては問題ありませんが、これを展示会のキャッチコピーの基本的な書き方で考えてみると、次のような表現にすることができます。
「海水でも、50年錆びないボルト」
「海辺でも、50年交換不要!」
いかがでしょうか?以下のように先ほどのキャッチコピーの基本的な書き方に照らし合わせることで、ターゲット顧客であるプラントエンジニアにより刺さる(=思わず足を止めてしまう)表現になったと言えます。
誰に(ターゲット顧客に) → プラントエンジニアに
何を(商品・サービスの売りを)→ タケコートを使用すれば、ボルトが錆びず、定期のメンテナンスや交換が不要になることを
どう伝えるか(表現を工夫する)→「50年」という具体的な数値で表現しインパクトを与える
基本的な考え方は簡単に見えますが、キャッチコピーは簡単に思いつくものではありません。キャッチコピーを考える際は、展示会担当だけではなく全社的に取り組み、できるだけ多くの候補を出した方がよいキャッチコピーが出てきやすくなります。また、キャッチコピーは「これが完成形だ!」というものでもないので、展示会への出展を重ねるごとに来場者の反応を見ながらより良いものに変えていくのもポイントです。
キャッチコビーの見せ方
最後に、キャッチコピーの見せ方ですが、キャッチコピーは展示ブースの最も目立つ場所(=来場者の目に留まる場所)に表示するとブースの来場に対する訴求度が上がります。
具体的な場所としては、来場者は展示会に来場しブースを回るときは、ブースの少し上を見ながら歩くことが多いため、「パラペット」という通常は会社名を表記するブースの梁にキャッチコピーを表記すると来場者の目に留まりやすく効果的です。
ただし、パラペットへの会社名の表記が義務付けられ、キャッチコピーを表示できない展示会もあります。その場合は横断幕やスタンドバナーなど他の展示物を上手に活用し、キャッチコピーを目立たせるように心がけましょう。
次回は、展示サンプルや装飾物の工夫例についてご紹介します。