- 2024-6-4
- ものづくり営業・販売促進
葛飾に生まれ、葛飾とともに歩む
カシャカシャ、カシャン。塗装前のシャフトを運ぶ音。シューッと塗料を吹き付ける音。張りつめた雰囲気の工場内から、たえず作業の音が聞こえてきます。岩城フィルム化工株式会社は金属やカーボンなどのシャフトに特殊な塗装を施す、昭和31年に創業した企業です。
第一回目の今回は、同社がこの葛飾の地で創業してから今に至るまでの歴史や事業の概要について、代表取締役の岩城大輔氏(以下、岩城氏)に話をうかがいました。
時代の流れに合わせ、しなやかに業態転換
御社のこれまでの歩みを教えてください。
岩城氏:岩城フィルム化工株式会社(以下、当社)は先々代、つまり私の祖父が昭和31年12月に創業しました。社名にある通り、当時は映画のフィルムを再利用するための処理を行っていました。カラーフィルムを白黒用に再利用する処理や、再利用に耐えないものを裁断して新幹線のシートのクッション材などへ生まれ変わらせる仕事です。しかしテレビの普及による映画産業の衰退で仕事が減り、フィルム化工の事業をやめざるを得なくなりました。そこで葛飾がおもちゃの町だったことからぬいぐるみ製造工場に転換したり、当時流行していたバレエの教室を、先生をお招きしてやっていたりもしていたようです。
当初から時代の流れに敏感だったということでしょうか。
岩城氏:時代は戦後の高度経済成長期です。新しい仕事が次々と生まれていく中、その時何をやれるのかを常に考え、仕事を頻繁に変えていくことは当然のことだったようです。
その後、先々代が目の病気を患い、私の父が30歳の頃に会社を継ぐことになりました。釣り竿の塗装を始めたのは先代の社長の時代になってからです。社長の友人から釣り竿の塗装をやってみないかと言われたのがきっかけです。それから30年近く、釣り竿の塗装を続けています。埼玉の草加から葛飾あたりにかけて、釣り竿の製作を夫婦でやっている、あるいは家族でやっている製造所が多くありました。そして釣り竿を手掛けていた工場がゴルフ関係の仕事をやるようになっていったのです。
なぜゴルフだったのでしょうか。
岩城氏:ゴルフのシャフトと釣り竿は使っている材料が同じですから、ゴルフが金属からカーボンに変わるのにあわせて、多くの釣り竿製造所さんがゴルフ産業にシフトしていきました。30年近く前のことです。
会社を継いだ経緯を教えてください。
岩城氏:先代が60歳になったことがきっかけです。もともと当社は私の実家の隣にありました。私が大学を卒業する頃に会社はそこを離れ今の場所に移転してきたのですが、子どもの頃の私は毎日のように仕事場に遊びに行き、従業員の方々もみな私のことを可愛がってくれました。まさに私にとっても生活の一部だったのです。やがて私が30歳に差しかかり、父の事業の大変さなどはわかるようになっていました。しかし、この家に生まれ育ってきた自分にとって、家業を継ぐのは当然のことでした。
先代も喜ばれたのではないでしょうか。
岩城氏:やはり景気がいい時ばかりというわけではありませんでした。バブルも経験しましたが、その後の苦しい時期もありました。ですから先代は私に、「継がなくていいよ」と言っていたのです。しかし、先代が還暦を迎えた際に、「よし来年の正月明けからここで働こう」と決め、当時働いていた会社をスパッと辞めて当社で働き始めました。そして何年かはずっと塗装作業に打ち込み、今から3年ほど前に代表取締役に就任しました。
現在の事業の割合を教えてください。
岩城氏:ゴルフのシャフト塗装が9割を占め、残り1割が釣り竿、シニア向けステッキ、スポーツ吹き矢の塗装となっています。現在は10社ほどのお客様と取引させていただいています。大口のお客様が3社、それに加えて安定的にご注文いただいているのが5社ほどあります。経営が安定するように、できる限り売上比率を分散、平準化するのが課題です。それぞれ10%ずつといった割合が理想ですね。
業績に対する新型コロナウイルス感染症の影響はありましたか。
岩城氏:体育館で行うスポーツである吹き矢はコロナ禍での自粛を余儀なくされましたが、幸いゴルフも釣りも屋外のスポーツなので、大きな影響は受けませんでした。むしろ旅行や街での飲食が制限される中でも楽しめるスポーツとして、新たに始める方が増えました。その結果、全体として売り上げが落ちることはありませんでした。
むしろ、コロナの終息後に旅行や外食などの消費に回帰して、釣りやゴルフの道具にお金をかける方が減りました。また、コロナ禍に始めたゴルフをコロナの終息に伴いやめる方も多く、新品同様のクラブが中古市場に出回り市況が不安定になっているという側面もあります。
御社と競合する会社がありますか。
岩城氏:はい、都内など近隣にはありませんが、関東近郊や関西圏に数社、シャフト塗装を手掛ける会社があります。加えて、社内に塗装工場を保有している大手メーカー様がいらっしゃいます。過去には海外の工場へ委託していた塗装を自社内で対応するようになった企業もあります。
そういった競争環境の中、御社の強みは何でしょうか。
岩城氏:競合他社の中では当社は従業員が多い方ですので、加工数量の多さが大きな強みとなります。もちろん短納期で出荷できるかは他のお客様からの注文状況によりますが、全体の工程などをうまく調整することにより、ご要望に応えられる体制があります。
1日あたりの生産量はどれくらいでしょうか。
岩城氏:機械による大量生産ができない特殊な加工なので、従業員の作業内容によって決まります。おおよそ1日あたり各工程の対応本数は1,500本程度です。ですから3工程必要となると1/3の500本が1日の生産量となります。
近郊には競合他社がいないのも、御社にとって有利に働きますか。
岩城氏:はい、東京という工場の立地もまた強みです。ご注文にあたっては、当社に来ていただいて塗装サンプルをご覧いただきながら塗装内容を決めていきます。その際、東京駅から30分以内でお越しいただけるということも大きなメリットです。
もちろん一番の強みは、当社の技術力や塗装のバリエーションになります。
有り難うございます。技術については次回詳しく教えてください。
会社名:岩城フィルム化工株式会社
業種 ゴルフシャフト・釣り竿などへの装飾塗装
設立年月 昭和31年12月25日
資本金 10,000,000円
従業員数 16人
代表者 岩城大輔
本社所在地 東京都葛飾区東四つ木2丁目8-2
電話番号 03-3691-2397
公式HP https://www.iwakifilm.co.jp