技術と信頼で切り拓く未来—東洋研磨材工業と「SMAP」の革新 (東洋研磨材工業株式会社③)

未来へ向けて—東洋研磨材工業のビジョンと挑戦

第一回では、主力製品である鏡面ショットマシン「SMAP」の技術的な魅力や誕生秘話に焦点を当て、さらに展示会での実演を通じて、SMAPが市場でどのように評価され、どのような営業戦略が展開されているかを探りました。第二回では、東洋研磨材工業の創業から現在に至るまでの歴史に焦点を当て、SMAP開発の背景や技術力を支える社内外の取り組みについて掘り下げました。
そして今回、第三回 では、これからの未来を見据えたビジョンと新たな挑戦について、大内社長にお話を伺います。急速に進化する技術や市場の変化にどのように対応していくのか、そしてその中で東洋研磨材工業が描く未来像とは何か。次なるステップへの展望を、より深く探っていきたいと思います。

大内社長

 

鏡面ショットマシン「SMAP」の未来展望と技術革新への挑戦

今後の「SMAP」の展望や技術革新について、どのようにお考えですか。

大内氏:「SMAP」は今後も進化を続けていきます。当社の技術の特徴である研磨材を斜めに当てる必要があるという特性は、自動化において一つの課題となっています。しかし、最近ではロボットや搬送装置を活用した自動化ラインを導入する企業が増えており、人手不足への対応が進んでいます。特に、夜間稼働によって生産量を倍増させるなど、効率化が進んでいます。
自動化ラインの導入は、今後の技術革新において重要な要素の一つです。私たちは自社だけでなく、協業者とともにこの自動化を進めています。地域ごとに自動化に対応できる企業を探し、その企業と協力しながら自動化システムを構築しています。これにより、各地のお客様のニーズに応じた柔軟な対応が可能となり、自動化の進展とともに製品の品質と生産効率を維持しつつ、市場の変化に迅速に対応できる体制を整えています。今後も、この協業を通じてさらなる技術革新を進め、より多くのお客様に満足していただける製品を提供していきたいと考えています。

 

営業面での今後の展開について教えてください。

大内氏:当社では地方への展開を強化しています。展示会を中心に営業活動を行っていますが、年に10数回の展示会に出展することで、地方のニーズを直接把握し新たな市場を開拓しています。展示会は、コストを抑えつつも多くの地域で製品を紹介できる効果的な場です。地方の展示会への出展は、今後も重要な戦略の一環として続けていく予定です。

 

新商品の開発や改良についてもお聞かせください。

大内氏:今年の4月には新しい研磨材を開発し、従来の機械でも使用できるように改良を加えました。これにより、既存のお客様にも新たな価値を提供することができ、リピーター購入や入れ替え需要を喚起しています。このように、技術革新と市場対応を通じて、「SMAP」のさらなる進化を追求しています。

新開発メディア(研磨材)SP-12SDによる磨きサンプル

 

海外市場に関してはどのように考えていますか。

大内氏:海外展開も当社にとって重要な要素です。台湾や中国、韓国などの市場では、現地のディーラーや商社を通じて「SMAP」を広めています。私自身も、最低限の英語でのコミュニケーションができるようにするために、8か月ほどアメリカに滞在し、日常会話程度の英語力を身につけました。ビジネス英語が流暢に話せるわけではありませんが、現地での展示会に参加する際には、ディーラーや商社と共にお客様をアテンドしながら、製品をアピールするために努力しています。

 

生活と会社組織の調和

家業を継ぐことを決意した背景についてお聞かせください。

大内氏:家業を継ぐことを決意したのは、いくつかの要因がありました。私は別の会社で3年間働いていたのですが、その後、家業に戻ることになりました。私には姉がいますが、会社を継ぐとなると私しかいない状況でした。業界が縮小していることもあり、父は無理に継がなくても良いと言ってくれていましたが、親戚や他の経営者から「息子が継がなければ誰が継ぐんだ」と言われることもあり、次第に「この会社を自分が守らなければ」という気持ちが強くなっていきました。祖父が築き上げた会社がシャッターを閉じるのは寂しいと感じ、「やります」と手を挙げたんです。家業に戻ってからは、山梨の営業所での仕事や、海外取引のための営業活動を経て、8年目に社長に就任しました。

会社経営の中で大切にされていることをお聞かせください。

大内氏:地域とのつながりを大切にしつつ、社員が安心して働ける環境を整えることに注力しています。たとえば、地元の神社との関わりや、過去には社員寮の設置など、社員の生活を支える取り組みを行ってきました。東京メトロ南北線が開通する前、このエリアは比較的孤立していましたが、社員寮が重要な役割を果たしていました。また、地域の変遷に伴い、当社もビルを建ててテナント収入を得ることで、不況時でも社員に安定した生活を提供できるよう努めています。
職場環境の面では、中途採用を基本としながら、正社員雇用を推進し、家族的な雰囲気を大切にしています。社員が長く勤められるよう、年末年始やお盆休みの確保、有給取得の推進など、仕事と生活のバランスを重視した取り組みを行っています。私自身も幸い自宅が近いため、仕事が終わった後早めに帰宅し、家族と過ごす時間を確保できています。家庭と仕事の両立を図ることで、社員にも良い影響を与えたいと考えています。

 

未来への挑戦と企業の展望

今後の展望についてお聞かせください。

大内氏:当社は、これまでの経験を基に、未来に向けた新たな挑戦を続けています。特に、近年の技術革新や市場の変化に対応するため、営業や技術開発の面で積極的に取り組んでいます。展示会での出会いや新たな市場への展開を通じて、これからもお客様に最適なソリューションを提供し続けていきます。
今後も家族経営の強みを生かしつつ、時代に即した柔軟な経営方針を取り入れ、社員と共に成長していきたいと考えています。次の世代に繋がる企業を目指し、技術革新と市場対応を通じて、次世代のニーズに応える企業として進化を続けていきたいと思っています。


業種   研磨材の販売、鏡面ショットマシン「SMAP」シリーズなどの開発・製造

設立年月          1948年11月

資本金              24,000,000円

従業員数          27人

代表者              大内達平

本社所在地      〒108-0073 東京都港区三田1丁目2番22号

電話番号          03-3453-2351

公式HP        https://toyo-kenmazai-kogyo.jp/

この記事の著者

保科彰治

保科彰治中小企業診断士

2020年中小企業診断士登録。神奈川県在住。診断士兼技術者。ITシステム開発や市場サポートに豊富な経験を持ち、印刷業、EC食品販売、飲食業の経営支援や、マルチメディア処理、プリンター関連の開発・サポートを手がける。趣味はスポーツで体を動かし、その探求を楽しむ。

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