転写シールを文化に(株式会社扶桑 富田社長 インタビュー①)

事業承継と、強みを確立するための取り組み

株式会社扶桑は、転写シールの製造および販売を行っている企業です。顧客ニーズに応じて、自社の技術とアイデア、そして製造現場の力を最大限活用して課題を解決してきました。2017年度の「東京ビジネスデザインアワード」では最優秀賞を受賞し、同社初のBtoC向け製品「irodo(イロド)」の商品化をスタートさせています。本記事では、代表取締役 富田成昭氏にお話をうかがい、第一回の今回は、同社の歴史と事業内容、強みなどについて紹介します。

株式会社扶桑 代表取締役社長 富田成昭氏 写真

株式会社扶桑 代表取締役社長 富田成昭氏

 

時代に合わせた事業の変遷

―創業から現在に至るまでの御社の沿革、これまでの歩みについてお聞かせください。

富田氏:私の祖父が当社を立ち上げ、2025年で61年目になります。創業は浅草橋でしたが約1年後に葛飾区に移転し、現在は主に葛飾区で事業を行っています。その後、祖父から父に事業が承継され、父が技術畑の人間だったこともあり、今のコア事業である転写シールの製造事業を時代の流れに合わせて強化していきました。当初は自転車のスポークに貼るようなロゴマークの国内シェアの7~8割を占めていたようです。しかし、自転車の製造が日本から海外へ移行するにつれて、ロゴマークの製造も海外に移行していきました。

 

―時代の流れで事業の浮き沈みがあったのですね。その後はどのように対処されたのでしょうか?

富田氏:その後は、技術を生かしてファンシー文具と言われるキャラクター関係の製品に移行したり、文房具メーカーの下請けをやるようになりました。また、イベント関係のライブグッズとして、肌用転写シールを販売するなど、対象領域を広げています。さらに私が事業を承継してからは、自社製品の製造・販売に注力をしています。

 

―富田社長は、もともと別の会社でお勤めだったとお聞きしました。

富田氏: はい、コンサル系の会社に勤めていました。そこは地方自治体や国交省などがお客様になる会社で、入社後すぐに新潟勤務となり、新潟に約3年いました。その時、父から「会社をたたむ」という話をされ、戻ってきたという経緯があります。

私は四男の末っ子で、父とは50歳の年齢差があります。当時私は25歳、父は75歳でした。会社では兄や親族も働いていたのですが、事業を継続させるのは現実的に難しいと判断し、廃業しようとしていたのです。

 

―その中で、なぜ四男の富田社長が事業を継ぐことになったのでしょうか?

富田氏: もともとは事業を継ぐために戻ったわけではなかったのですが、家族経営では廃業するとすべてがなくなるんです。それはちょっと忍びなく、まずは再建のために入社し、経営状況を良くしたら外に出ていこうと思っていました。

幸い入社後1年目で黒字化できなんとか落ち着いた頃に、この後は誰が継ぐのかを兄弟で膝を突き合わせて話をしたんです。当時は長男・次男・四男の私の3人がいたため、筋から言えば長男である兄が事業を継ぐべきだと考えていました。しかし、兄は技術者で、人前に出ることやお金の管理が非常に苦手でした。そこで最終的に、私が事業を継ぎ、兄は技術面を担当するという形で役割分担をすることになりました。

事務所で説明する富田社長

 

自社の顔が見える事業活動を目指して

―御社の事業内容についてお聞かせください。

富田氏: 転写シールの企画製造がメインです。あとは、関連する印刷業務を一緒に請け負うことがあります。設備は持っているので、転写シールを発注いただいたお客様から「資材用のシールが欲しい」とか、「名刺を作って欲しい」というご要望をいただいた時、付随するサービスとしてパッケージまで全部対応して納入することがあります。そういった付随サービスを行うことで、少しずつ粗利を稼いでいる形です。

売上構成的には、OEM事業が8割、自社製品が2割ぐらいで、OEM事業では、工業製品向け・文具関係・イベント関係を、ほぼ同じくらいの比率で対応しています。

主力商品 転写シール

 

 

―御社の強みを教えてください。

富田氏:印刷業界では、決められた材料に対して印刷加工をして納入するという流れが多いのですが、私たちは決められた材料ではなく、原料から調合してオリジナルの材料を使うことで品質を向上させている点がアドバンテージですね。調合の加減には黄金比みたいなものがあり、正直面倒くさいんですね。さらに、面倒くさいものって機械を壊したりすることがあるので他の企業は避けたがる。それをやっているのが、他社との大きな違いです。

また、材料を微調整することで、貼る対象(金属、布、紙など)によって仕様を変え、何にでも貼れるシールを実現できることが強みだと自負しています。そのため、個性的なご相談が多いですね。VRゴーグル、三味線、ロウソク、ルアーや、コンクリートに貼っている人もいて、結構様々ですね。印刷とかデザインを付与したいと考えてもなかなか実現できず、巡り巡ってご相談いただくことが多いですね。

 

―強みを確立するために意識したことや取り組みは、どのようなことですか?

富田氏:印刷方式の違いにより、印刷機は種類がたくさんあるので、そういったものを組み合わせています。例えばフルカラー印刷の場合、オフセット印刷は画像がきれいで、かつ生産性が高かったりします。一方で、シルクスクリーン印刷は生産性は低いのですが、加工できる材料や、二次加工が幅広く対応できたりします。さらにデジタル印刷用の小ロット向け設備なども組み合わせながら対応しています。そういった組み合わせをしようとすると、いろんな弊害が出てきますが、粘り強く対処していることが、強みの確立につながっているのかなと思います。
あとは、自社の顔が見える事業活動をしている印刷会社は少ないんですね。業界的に一部分の仕事が多く、どうしても自社の顔が見えづらくなる。私たちはそれをなるべく一貫して対応するようにしています。

印刷物はクリエイティブな要素もあるので、デザイナーも必要だったりしますが、うちは10人規模の会社ながらデザイナーが2人いて、デザインの起こしからも対応できますし、お客様からもらったデータを加工して対応することももちろん可能です。そのような活動をしながら、自社の存在をアピールしています。

半自動スクリーン印刷機


業種   シール・ステッカーの製造および販売(シール印刷業)

設立年月          1964年2月

資本金              1000万円

従業員数          10人

代表取締役      富田成昭

本社所在地      〒124-0012 東京都葛飾区立石8丁目41番2号

電話番号          03-3691-6490

公式HP           https://kkfusou.co.jp/

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