- 2024-10-8
- 取材・インタビュー
東洋研磨材工業の歴史と信頼—過去から築き上げた強さ
第一回では、東京都港区三田にある東洋研磨材工業の本社ビルを訪問し、同社の主力製品「SMAP」の技術的な魅力について詳しく紹介しました。ショールームで行われた実演では、「SMAP」の研磨力を実際に体感し、短時間で10円玉がピカピカに磨き上げられる様子を目の当たりにしました。また、「SMAP」の誕生秘話や技術の進化過程についても触れ、同社が如何にして業界内で信頼を築き上げてきたかをお伝えしました。展示会での効果的なアピール方法や営業戦略についても取り上げ、リアルな体験がいかに顧客の購買決定に影響を与えているかが明らかになりました。
今回は、大内社長に伺った東洋研磨材工業の歴史に焦点を当て、同社が現在の技術力と信頼をどのように築き上げたのかを探っていきます。長年の経験と技術の積み重ねが「SMAP」の開発にもどのように影響を与えたのか、その背景を掘り下げていきます。

東洋研磨材工業本社ビル
東洋研磨材工業の歩みと「SMAP」誕生までの軌跡
東洋研磨材工業の歴史について、特に創業から現在に至るまでの経緯を教えてください。
大内氏:当社の歴史は、戦前の広島にまで遡ります。もともとは、広島にあった「広島金剛砥石製造所」の東京出張所としてスタートしました。第二次世界大戦での原爆被害(1945年)で広島の工場が壊滅的な打撃を受け、製造所は一度解散を余儀なくされました。しかし、その困難を乗り越え、私の祖父が新たに東京で「東洋研磨材工業」として会社を立ち上げ再スタートを切ったのです。
戦後の東京での再建は、まさにゼロからの挑戦でした。最初は木造2階建ての小さな社屋で、商社的なビジネスモデルを採用して営業を始めました。具体的には、研磨材の原料を仕入れ、それを専門の加工会社に供給し、加工された砥石を再度仕入れて販売するというものでした。自社で加工を行わず、原材料から最終製品に至るまでのプロセスを外部パートナーと連携して進めることで、当社は早い段階で成長を遂げ、安定した供給と品質を保ちながら事業を拡大していくことができました。
現在の本社ビルはどのような経緯で建設されたのでしょうか。また、これまでのメンテナンスについても教えてください。
大内氏:現在の本社ビルは、旧社屋が開発区域に指定されたことを受けて、昭和63年に現在の場所に新築移転しました。創業当初から同じエリアで事業を展開しており、この移転は単なる物理的な移動ではなく、当社にとっての大きな飛躍の象徴でもありました。木造建築から鉄筋コンクリートの近代的な建物への移行は、業務効率や従業員の働く環境を大幅に改善し、当社の成長をさらに加速させるものとなりました。
築36〜37年が経過した現在でも、ビルのメンテナンスには細心の注意を払っています。たとえば、環境対策の一環としてPCB(ポリ塩化ビフェニル)の除去作業を行いましたし、安全性と利便性を高めるためにエレベーターの補強や設備の更新も定期的に実施しています。これらのメンテナンスは、社員が安心して働ける環境を維持し、お客様に高品質な製品とサービスを提供し続けるための重要な取り組みです。
創業当時の地域環境や物流について、何か興味深いエピソードはありますか。
大内氏:例えば、社屋の裏手には、今も流れる「古川」という川があり、東京湾に注いでいます。この川は、当時の物流に重要な役割を果たしていました。砥石や土木資材といった重量物を運搬する際には、川を利用することが一般的で、当社もその恩恵を受けていたと思われます。
また、研磨作業には大量の水が必要でしたので、川が近くにあることで水の確保や排水が容易だったという利点もありました。都電が通っていた頃の古い資料や写真には、当時の社屋や周辺環境の様子が記録されています。それらを見返すと、時代とともに会社と地域がどのように変遷してきたかを改めて実感します。
戦後の事業再建から現在まで、会社として大切にしてきた理念や姿勢はありますか。
大内氏:戦後の厳しい状況から再建を果たす中で、技術力を磨くメーカーとしての役割を維持しつつ、商社としての柔軟性を持つことで、多くの変化を乗り越えてきました。この姿勢は、時代の変化や市場のニーズに対応する上で非常に重要であり、現在も変わらず受け継がれています。これからも、歴史から学び、新しい技術やサービスを提供し続けていきたいと考えています。
「SMAP」と商社としての強み
商社としての強みや、「SMAP」を含む製品提案の幅についてお話しいただけますか。
大内氏:当社は、商社としての柔軟性を生かし、単なる製品の販売にとどまらず、顧客のニーズに応じて他社製品も提案できる点が強みです。特に、「SMAP」を主力商品としつつ、他社の機械も取り扱い、最適なソリューションを提供しています。また、最近では前処理の精度が向上しており、それに伴って最終処理での研磨効率をさらに高める提案が可能になっています。さらに、多品種小ロットのニーズにも対応できる柔軟さが、当社ならではの強みです。さらに、無償テストサービスを通じて、顧客に加工対応を提供し、実際の製品品質を確認していただくことも行っています。
また、当社は商社でありながら、技術研究部という部署を長年維持してきました。この部門は、研磨方法の研究や新技術の開発を行い、時代の変化に対応しています。創業者の祖父は、商社としての活動だけではなく、メーカーとしての立場も持つことが必要だと考えていました。商社は市場に依存する部分が多いので、メーカーとしての技術力を持つことが会社の強みになると信じていました。そのため、「東洋研磨材工業」という名前にある“工業”の部分を決して忘れず、商社でありながら技術開発に取り組む姿勢を保っているのです。
具体的には、「SMAP」の開発でも、技術研究部が重要な役割を果たしました。例えば、研磨材の粗取りに対する新しいニーズが顧客から寄せられた際には、技術研究部が中心となって、適切な研磨材や機械の開発を行います。製造パートナーと連携しながら、顧客の要望に応えるために新製品を生み出しています。こうした取り組みが、「SMAP」の進化や当社の技術力の向上につながっているのです。

ショールームにて:「SMAP」と技術研究部スタッフと大内社長
業種 研磨材の販売、鏡面ショットマシン「SMAP」シリーズなどの開発・製造
設立年月 1948年11月
資本金 24,000,000円
従業員数 27人
代表者 大内達平
本社所在地 〒108-0073 東京都港区三田1丁目2番22号
電話番号 03-3453-2351
公式HP https://toyo-kenmazai-kogyo.jp/