- 2025-5-20
- 取材・インタビュー
更なる事業成長に向けた従業員エンゲージメントの向上
第二回では、ミズホ金属株式会社の先代からの事業承継、ゴムパッキンメーカーとのM&A、福島県南相馬市の新工場設立について紹介しました。本編最後となる第三回では、「勇気ある経営大賞」の受賞、2026年売上高12億円達成に向けた課題、今後の取り組みついて伺いました。
社会貢献の一環として、被災地の経済活性化を新工場の設立で実現
2024年に受賞された「勇気ある経営大賞」(東京商工会議所)ではどのような点が評価されたのでしょうか。
岡田氏:「勇気ある経営大賞」とは、東京商工会議所が過去に拘泥することなく高い障壁に挑戦し、理想の追求を行うなど勇気ある挑戦をした中小企業に対して顕彰する制度です。そして、今回の受賞理由として、当社のドラム缶部品用のゴム製品製造で培われた高品質・高精度な技術力で新市場向けゴム製品の自社製品に挑戦したことが評価されました。また、この実現において、福島県南相馬市に新工場(福島スマートファクトリー)を設立した功績も加わり、被災地の復興支援の観点で、後続企業に勇気を与え、地域経済の活性化に貢献したことが高く評価されました。

第21回勇気ある経営大賞の顕彰状
御社が目指す社会貢献という観点においても素晴らしい功績ですね。この新工場の設立により、地域経済の活性化にどのように貢献されたのでしょうか。
岡田氏:2つありまして、1つ目は、地域の雇用創出です。具体的には、2024年4月に中途・専門学校卒・高等学校卒の方、計8名を採用しています。新工場では、従来の「きつい」「汚い」「危険」という3Kのイメージを払拭し、明るく清潔感のある環境にやさしい工場で、若い世代や女性でも安心して働けるよう整備することで、将来的には20名規模まで増員する予定です。そして、2つ目は、南相馬市を日本のシリコンバレーにすることです。福島県の沿岸部を世界のイノベーションの中枢にする国家プロジェクト「福島イノベーション・コースト構想」があり、 福島発のイノベーションが既に実用化され始めています。そして、その構想を支える「福島ロボットテストフィールド」が南相馬市・復興工業団地内の東西約1,000m、南北約500mの敷地内に設立されています。ここは、研究開発・実証試験・性能評価・操縦訓練を行う世界に類を見ない一大研究開発拠点と言われているのです。

新工場内の明るくお洒落な打合せスペース (ミズホ金属株式会社から提供)
2026年売上高12億円達成に向けた課題と取り組み
2026年売上高12億円達成に向けた課題は何だとお考えですか。
岡田氏:ヒト、モノ、カネ、情報の経営資源で言うと「ヒト」です。具体的には、全ての従業員が、共通の目標を理解するだけではなく、自分の役割や達成しなくてはならない課題まで理解して率先して行動する。そして、従業員同士が密にコミュニケーションを図りながら、チームワークを第一に仕事を進めることです。
内部環境としては「ヒト」が重要課題なんですね。それでは、外部環境ではいかがでしょうか。
岡田氏:3つありまして、まず1つ目は、キャップシールの某工業所の廃業に伴い、ふくしま第二工場で内製化したことで受注機会を獲得しています。次に2つ目は、新規業界への参入で、売上とは別に、医療、ロケット部品、F1など技術を磨くためのフィールドとして積極的に挑戦していきます。最後3つ目は、多角化M&Aで、これまでのM&Aの実績を踏まえて、勘所は熟知しているので、今後、どのような会社と組んでも上手くやっていく自信があります。
外部環境の機会を上手く取り込んでいるんですね。それでは、内部環境の強み、外部環境の機会を活かした新たな取り組みは何になりますでしょうか。
岡田氏:ドラム缶のゴム製口金用パッキンの加工のスキル・ノウハウを活かして、新たな分野への進出として、建設機械や白物家電向けのゴム部品の受注が増えてきています。更に、自動車向けの小型ゴム製品の加工にも挑戦していきたいです。
高い目標に向けて、新たな取り組みが着実に進んでいる様子が伺えます。一方で、営業面での課題は何かありますか。
岡田氏:私は従業員へ「お客様には売上、利益目的で接しても関係性は決して長続きしない。お客様を思いやり、誠実に接することでお互いの関係が成立できるよう行動しよう」と言っています。お客様から感謝・喜び・感動・満足を、いかに得られ続けられるかが最大の課題かもしれません。
今後の展望について
改めて、今後の展望についてお聞かせください。
岡田氏:3つありまして、まず1つ目は、ドラム缶部品製造で培われた高品質製造の経験を活かし、事業拡大に向けて、ゴム製品製造に力を入れること。次に2つ目は、働きやすい職場環境に向けて、独自のオートメーション化を図ること。最後3つ目は、当社の経営理念でも掲げている「共に働く仲間と家族」を大切にすること。
この3つの中で、岡田社長が考えるもっとも重要なものは何でしょうか。
岡田氏:3つ目の「共に働く仲間と家族」を大切にすることです。今後、いかなる苦境や困難な状況に立たされても、その状況を打破するのは、私を含めた従業員だからです。そのために、従業員が当社の経営理念に共感し、業績向上のため自発的に貢献したい意欲を高める「従業員エンゲージメント」を向上させることが、この先、当社がさらに成長できるか否かの試金石になっていくと考えています。

東京工場でプレス機を操作する女性従業員
業種 ドラム缶部品の製造・販売およびゴム製品の製造
設立年月 1979年8月
資本金 1,000万円
従業員数 30人
代表者 岡田 真一
本社所在地 東京都葛飾区堀切1-25-9
電話番号 03-6657-6400