地域に欠かせない町工場を目指して~株式会社丸和鋼材店山田信一社長インタビュー②

経営者になって感じた人の大事さ

株式会社丸和鋼材店は、熔断後の追工程が不要な精密熔断加工や鋼材卸を業とする町工場である。第二回はアルバイト入社を経て3代目社長になった山田信一社長に、WEB媒体に力を入れる理由や経営者ならではの悩みを伺った。

山田誠一前社長(写真左)と 山田信一社長(写真右)

 

苦労した新規顧客の開拓

会社でアルバイトを始めたきっかけを教えてください。

山田信一代表取締役社長(以下社長):やることもなくブラブラしているのなら、ウチで働けと父親の先代社長から声を掛けられたのがきっかけです。当社は技術職の会社なので、3年間で技術が身につかなければ会社を辞めるという条件を先代社長から提示され、17歳の時にアルバイトとして入社しました。最初は熟練工の先輩について仕事を習いましたが、難しかったのは鋼材に合う熱量の習得です。どうしても言葉にはできない作業で、作業が身体に染み込むまで何度も失敗しました。その努力もあって、入社1年後には私の熔断技術が認められ、正社員として採用されました。アルバイトを始めたときは、会社を継ぐ意思はありませんでしたが、2年、3年と仕事を続けるうち、私の気持ちが変化しました。父の代で丸和鋼材店を終わらせずに、私が後を継ごうと考えるようになりました。

 

専務になってから一番苦労したことは。

社長:従業員としてしばらく働いていましたが、約10年前に社長の仕事であった既存顧客の対外交渉を専務として任されるようになりました。会社の引継ぎ期間だったと思います。専務になって一番苦労したのは、新規顧客の開拓です。現場の仕事が空いた時間にエリアを決めて飛込み営業を繰り返しました。まず会っていただくのが大変で、居留守を使われたりしましたし、話を聞いてくれるお客様は2、3件という状況でした。その当時は当社に専門の営業職が居なかったこともありますが、継続性のない営業方法だったと思います。その点も踏まえて営業を務めてもらう予定の社員を最近採用しました。私が営業で苦労しましたので、まずは既存の顧客から回ってもらおうと考えています。

 

ホームページやWEB媒体に力を入れていますね。

社長:当社のリピーターの多くは、当社の業務内容や強みを様々な媒体を通じ、知っていただいてから相談にこられたお客様です。当社を知っていただくことが大事ですので、ホームページの他にTwitterやYouTubeなどのメディアを使って情報を発信しています。当社の情報をお客様に知っていただくための良いツールだと捉えています。

 

現在当社はこの業務のみであれば既存のお客様に注力する営業方針ですが、この先もずっとこの業務のみを行っていても会社は生き残っていけません。収益は考えずに、まず当社のことをお客様に知っていただくことに意義があると思っています。

熔断作業風景 ~YouTubeで動画配信中~ 株式会社丸和鋼材店https://www.youtube.com/channel/UC1J9w5d8044p3htTfp2zCOQ/videos

 

経営者の課題は人

経営者になって意識は変わりましたか。

社長:社長になってまだ1年経っていませんが、専務時代と違って大変なことばかりでした。専務時代は自分の業務にのみ専念すれば良かったのですが、社長になってからは会社の人事に気を配るようになりました。雇用活動は事務統括の弟に任せっきりでしたが、最終面接だけは自分で行うようにしています。数カ月前に20代の新入社員が入社したのですが、その頃から社長として社員にどう接するかも意識するようになりました。

 

また、社外の人の私への接し方が変わりました。社長という立場の私に接してくるようになったのです。同時に私も社外の人との接し方を考えるようになりました。社長の立場になってみると、しっかりと相手を見て、社外の人と私の間の落としどころを探ることが、前よりも大変になったと感じています。社外の人とお付き合いをさせていただく際は、相手とお互いに良い関係を築けていけるかを見極めることが重要だと感じるようになりました。

 

育成について考えをお聞かせください。

社長: やはり職人の世界ですので、高度な熔断には天性のセンスが必要だと考えています。当社でシルバー人材を3人雇用した際に私が教育を担当しました。年齢の影響もあるとは思いますが、私の判断では3人とも高度な熔断を習得するのは難しかったです。最近若い作業員が入社したのですが、初見でセンスを感じました。高度な熔断ができるかは最初の1カ月間の仕事ぶりを見れば判断がつきます。このまま上達して、高度な熔断ができる技術者に育つことを期待しています。

一方、シルバー人材の方には高度な熔断作業とは別の業務に配置転換しましたが、結果として適材適所になりました。非常に几帳面な性格の人で、異動先の機械で規格通りに熔断を行えることが判ったのです。現在も当社の社員として活躍していただいています。

 

採用は難しいですか。

社長: 難しいです。当社の最高齢の社員は、トラックの運転手ですが、年内には退社される予定です。すでに退職日も決まっていますので、引継ぎ期間を確保するため約1年前から後任運転手の求人広告を出し始めましたが、応募者がなかなか集まりません。マイナビやタウンワークなど、有名どころの求人会社はほとんど使いましたし、ハローワークでは常時従業員を募集していました。それでも応募者が来ないので、中小の求人会社も使って採用活動を行い、欺まがいの会社に引っかかったこともあります。運転手の退職日が近づいてくることに焦りはありましたが、ようやく最近になって新しい運転手を採用することができました。

「経営の課題は人」と語る山田信一社長


社名:株式会社丸和鋼材店

業種:鋼材卸・製造業

設立年月: 1966年12月1日

資本金:10,000,000円

従業員数: 8人

代表者 : 代表取締役社長 山田 信一

本社所在地 : 東京都大田区本羽田1-18-21

電話番号 : 03-3742-1421

公式HP : https:// maruwa-kouzai.com

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埼玉県生まれ。大学卒業後、製造業に約30年勤務。主に現場管理や品質管理などの製造にかかわる業務に従事。業務経験を活かして製造分野で中小企業をサポートしたいと考え、資格取得を決意。2020年5月中小企業診断士登録し、東京都中小企業診断士協会に所属。趣味は旅行。

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