~ガラス業界の駆け込み寺として~繋ぐを大切に、協力会社と力を合わせ顧客満足度向上へ(安中特殊硝子製作所 志田和海様 インタビュー③)

 100年企業を目指して

株式会社安中特殊硝子製作所は、産業用、工業用、研究用などの特殊ガラスを製造している会社である。70年以上積み上げてきた技術力をもとに、多岐にわたる用途のガラス製品を製造し、顧客の支持を獲得してきた。長い年月をかけて築いてきた協力会社とのネットワークも駆使して高い付加価値を生み出している。第三回は新規事業のMAROWブランド、協力会社のネットワーク、今後の展望についてうかがった。

各社の技術を結集して作られた江戸切子ガラスペン

 

技術を合わせて付加価値を

MAROWという新規事業を始められています。一般消費者向けのガラスペンの販売ということですが、立ち上げの経緯はどういったものでしょうか。

志田氏:弊社の企業理念「ガラス業界に携わる全ての人の駆け込み寺である事」に基づき理化学加工が専門の有限会社竹内製作所様より、江戸切子をガラスペンに施せないか。と相談を受けたことがMAROWブランドを始めたきっかけです。

江戸切子は東京都の伝統工芸品で歴史ある技術ですが職人の数は限られます。弊社は以前より硝子工業会に所属しており、根本硝子工芸代表根本達也氏と交流があったため、竹内製作所様と3社で商品開発を進めることとなりました。試作品を作る中で弊社が販売を引き受けることになり、ブランディング含め話を詰めていきました。

伝統工芸士の根本達也氏にお力添えをいただきましたが、人気作家としてご多忙の中ご協力いただき大変感謝しております。卓越した技術を有しており、緻密で美しい文様でガラスペンの装飾を施していただきました。竹内製作所様はガス加工を得意としており、その加工技術でガラスペンの成形を担っていただきました。そうして3社の力を合わせることで江戸切子ガラスペンが完成しました。

 

MAROW事業のねらいは何でしょうか。

志田氏:竹内製作所様からの相談から始まった事業ですが、伝統工芸と特殊硝子の技術をかけ合わせることで新しい価値を生み出していきたい、というねらいがあります。弊社はBtoB事業が主で製品の性質上、何に使われているか教えていただけません。社会の役に立つ硝子部品を製作しているのは間違いありませんが、消費者様の声が届くことはありません。そんな環境の中、弊社の技術を駆使した硝子主軸を製作し「江戸切子ガラスペン」が完成することで消費者様の声が聞けたり雑誌掲載や有名百貨店に置いていただいたりすることにより社員のモチベーション向上にも繋がりました。みんな新しいことにチャレンジしたい!という土壌が作れたと感じています。

 

MAROW事業では既存事業と異なる大変さはありますか。

志田氏:新商品の展開などこちらからアクションを起こしていくところが大きく異なるのでその点では大変といえば大変かもしれません。と同時にダイレクトに商品の感想をいただけるのでやりがいも感じています。

 

企業理念とも合っていて、協業の取り組みが素晴らしいと感じました。MAROWブランドについてどう思われていますか。今後の展開もお聞かせください。

志田氏:MAROWで行っていることはまさに「駆け込み寺」だと思います。それぞれの技術を持ち寄って、1つのものができているという感触はあります。製品そのものではありませんが、ガラスペンを納める化粧箱にもこだわり、特別版の箱として有限会社篠原紙工様に協力をいただきました。江戸切子ガラスペンに合わせ、伝統文様菊繋ぎを箔押しで表現しました。また、底面に鏡を置くことにより輝きが増す効果があります。

MAROWブランドでは、ガラスと他の伝統工芸でコラボレーションができないか試行錯誤しています。このブランドで弊社を知っていただき、少しでも興味を持っていただけたら嬉しく思います。

ガラスペンを収める特別版の化粧箱

 

横のつながりを大切に

さまざまな企業と協力して新しい製品を生み出しました。 他の会社とのお付き合いはどのように生まれたのでしょうか。

 志田氏:ガラス関係の会社で構成される一般社団法人東部硝子工業会に加入しています。その会員で構成される東硝会という二世会の集まりがあります。現在13社ほどが参加していて、毎月情報交換を行っています。他にも関連する団体とのつながりもあって幅広い付き合いがあります。業界自体が大きくないため、みんなで協力してうまくやっていこうという関係です。

 

同業他社の方々と話されていて、昨今の景気動向をどのように感じておられますか。

志田氏:ガラス業に関しては、景気はさほど変わりません。安定していると思います。大きく伸びるわけではないですが、ニーズ自体は変わらないからです。ニッチな分野なので、全国を見渡しても特殊ガラスを生産できる会社は30社あるかないかです。東京に限ると20社に満たないくらいです。競争というよりは共存共栄ですね。

志田和海氏(左)と社長を支える弟の志田晃海氏(右)

 

周りから求められる企業をこの先も

今後、会社としてこういうことをやっていきたい、あるいは社長ご自身がこういうことを目指している、という展望を教えていただけますでしょうか。

志田氏:まずは100年企業を目指します。そして創業者、二代目社長が繋げてきてくれたことを顧客や地域の方々に還元できればと思います。また、アナログにこだわった加工力の強化にも力を入れていきたいと考えています。

 

100年企業を目指されている中、持株会の設立、ビジョンの共有、組織体制の整備といった具体的なアクションに落とし込まれています。取り組みについての考えをお聞かせください。

志田氏:話をあげるのは簡単ですが働いているみんなが腹落ちしなければ前に進んでいけないので日々試行錯誤しています。考え続けていかなければそこで終わりです。歴史を引き継ぎながら、時代の流れに合わせて変えるところは変えていきたいと思います。


業種       ガラス製品製造業

設立年月          1949年10月19日

資本金              45,600,000円

従業員数          30人

代表者              志田 和海

本社所在地      東京都江東区大島5-51-13

電話番号          03-3683-5161

公式HP           https://annaka-tg.com/

 

この記事の著者

石川慶成

石川慶成中小企業診断士

金属加工業に従事し、技術営業、工程設計、購買、生産管理、加工、検査測定、品質保証・品質管理を兼任。品質管理責任者として工場内の統括にあたる。中小企業出身者として、同じ立場にある中小企業やその経営者に寄り添った提案活動を日々行っている。2022年中小企業診断士登録。

この著者の最新の記事

関連記事

ページ上部へ戻る