0.001mmの凹凸もない“ゼロ”を作り出す技術力(関鉄工所 関社長インタビュー①)

「他社にはできない」唯一無二の技術力

有限会社関鉄工所 代表取締役社長 関 英一氏

部品加工・製作から組立、修理まですべてを行い、様々な要望に応えていくことで顧客の信頼を得てきた関鉄工所は、2021年に創立70年を迎えた。

親子3代で事業を拡大することができた背景には、数十年にも渡り、継承され続けてきた技術があった。「他社にはできない」と自信を持つ技術力、そして様々なニーズに応える対応力について、同社の代表取締役関英一氏にお話をうかがった。

顧客ニーズ優先の結果、広がった事業

御社の創業からの事業展開について教えてください。

関氏:弊社は祖父が創業してから私で3代目になります。創業当初は、祖父1人で部品加工を行っておりましたが、取引先の要望に応えるようにして、組立や修理など事業を拡大していきました。また、機械の大型化ニーズに対応するため、大森工場に加えて神奈川県の座間市に工場を構え、現在の2工場体制が構築されました。自ら事業を拡大していったというよりは、顧客からの依頼に対応するためには、事業や工場を拡大する必要があったということです。その結果として、大型機械部品の加工から小さな部品加工、そして組立、修理と幅広いニーズに対応することができています。

その中でも多くの依頼をいただいているメイン業務は、大型の横中繰り盤やMCフライス盤を使用した切削加工による機械部品製作です。

 

従業員の人数と担当割を教えてください。

関氏:従業員は、大森工場に7名、座間工場に11名の合計18名です。座間工場は1名の事務担当を除いて全員加工を主業務として担当しておりますが、大森工場は加工と組立の兼務や組立と営業の兼務など、複数業務を担当している従業員が大半です。

 

部品加工はすべて自社で行っているのでしょうか。

関氏:人数も限られていますし、築き上げてきたネットワークをうまく活用して4割程は外注しています。旋盤加工は外注をして、穴あけは当社でやる、焼き入れ、研磨は外注といったようなことはよくあります。このように、自社だけではなく外注を活用し、様々な依頼に対応できるのも、長年培ってきた当社ならではのネットワークがあるからです。

 

納期管理が大変そうですね。

関氏:納期の管理は基本的に営業が行っているのですが、従業員全体が「最終納期はいつだからここまでにこれを終わらせないといけない」という流れがわかっています。そのため、どこかで遅れが生じていたら誰しもが気づく状態なので、納期管理で大きな問題が起こったことはありません。ただ、このやり方を変えていかなければいけないと感じているのも事実です。朝や夕方に各製造ラインや工場全体で打ち合わせを行いながら、納期の確認や人員の割り振りなどを行うことで、より効率的でミスの少ない的確な作業ができると思っています。私が当社に入社する前に勤めていた企業では、打ち合わせが毎日あり、従業員の急な出張や休暇があっても問題なく対応できる体制が構築されていました。こういう知見は、当社だけでなく外の世界を見たからこそ身に付いたものだと思っているので、他社で働かせていただいた経験が生きているなと感じます。

 

長年培われた技術と幅広い対応力

社長が考える御社の強みを教えてください

関氏:一番の強みは技術力ですね。当社には長年モノづくりに携わってきた熟練の職人がいます。

均一な平面を作り出すための「きさげ加工」。この技術を持っている従業員は非常に希少だという。


例えば、液体を流し込む機械の部品では、部品と部品の接地面が正しく密着するように調整する「すり合わせ」という作業が非常に重要になります。部品に0.001mmの凹凸があるだけで、液体が漏れてしまいます。その凹凸をゼロにする作業は、職人の手の感覚で調整しているため、機械で代替することができません。その技術は、大手容器メーカーの容器製造機械部品にも使われており、祖父の代から当社で部品の受注を行っております。一朝一夕で他社には真似できない強みだと思います。

 

それだけの技術力をお持ちだと、依頼をお断りするケースはほとんどないのでしょうか。

関氏:もちろん納期や予算の関係でお断りをしなければいけないケースというのはまれにありますが、技術力や工場のキャパシティ、つまり加工物の大きさなどの理由でお断りすることはほとんどありません。というのも、座間の大型機械部品用の工場では、1辺が2mの立方体でも切削加工ができます。ここまでの大きい機械部品加工ができるというのも、当社の強みと言えるでしょう。

 

部品加工だけでなく、組立、修理まで行えるというのも強みになりうるのでしょうか。

関氏:もちろん強みだと思っています。機械は、部品がそろっただけでは動きませんし、故障したらそれもまた動きません。組立と修理は重要な技術であり、部品加工に加えてそれができるというのはお客様から大変重宝されます。機械設計者が一番恐れることは、それぞれの機械部品を組み立てるときに部品が合わないことですが、当社は加工した部品を事前に仮組みをして部品の組み合わせをチェックできるので、設計者からすると大変ありがたいことだと思います。
お客様に困りごとや要望があれば、「大抵のことは当社で対応できます。」そう言える体制を持っていることで、お客様の信頼を得ることができていると思います。

座間工場。大きな機械部品の組立や加工を行うことができる。

座間工場で制作された砂利分別機。長さ約3400mm、直径900mm。


業務内容          産業機械に関する部品製造、設計、組立、修理、出張修理

設立年月          1956年4月10日

資本金              3,000,000円

従業員数          20人

代表者              代表取締役社長 関 英一

本社    東京都大田区大森西6-7-11

電話番号          03-3761-3167

公式HP           https://sekiiron.com/

この記事の著者

堂田恵耶

堂田恵耶

1992年生まれ。埼玉県久喜市出身。都内在住。千葉大学文学部行動科学科を卒業後、生命保険会社に勤務。海外人事総務、海外子会社管理業務に従事し、2020年から法人営業を担当。福利厚生や健康経営等、企業の経営課題に対するソリューションを提供している。2020年度中小企業診断士試験登録。

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