不良ゼロを支える技術 精密部品メーカー昭和とは(株式会社昭和 インタビュー①)

横浜の工場では、精密機械が一定のリズムで動き続けている。金属を削る微細な音、樹脂を加工する振動。通信機器や医療機器に使われる電子部品の多くは、こうした静かな現場から生まれている。

株式会社昭和は、創業47年の精密加工メーカーだ。1mm前後の金属端子や樹脂部品といった、わずかな誤差が製品全体の品質を左右する領域で、同社は35年以上にわたり主要取引先からの信頼を積み重ねてきた。

第一回となる今回は、同社がどのように事業を発展させ、横浜と米沢の二拠点体制を築き、現在の主力事業へと至ったのか。企業としての歩みと事業の全体像について、代表取締役・濵野邦彦氏に話を伺った。

工場内の濵野代表取締役

 

協業が育てた技術と信頼 -昭和という会社

―御社の事業内容について教えてください。

 濵野氏:当社は、通信機器や医療機器に使われる精密電子部品を製造しています。主力は、1mm前後の金属端子や樹脂部品で、基板に取り付けるための小さなネジ加工など、精度が求められる製品が中心です。主要取引先のマックエイトさん向けだけで月400万個ほど、年間では5,000万個ほどになります。品種も多く、同じシリーズでもサイズ違いが20種類以上あるなど、多品種・大ロットの生産が特徴です。

 

—横浜と米沢の二拠点体制についても教えてください。

濵野氏:横浜工場では、新製品の試作や技術開発を担っています。米沢工場は量産が中心で、コロナ禍で電子部品需要が急増した際には、大きく役立ちました。

 

—創業の背景についてもお聞かせいただけますか。

濵野氏:先代は私の親戚にあたるのですが、もともと電子部品のブローカーのような仕事をしていました。その後、独立して加工業を始めたのが昭和のスタートです。先代が会長として営業をし、先代の兄弟が製造をするという小さな体制から始まり、マックエイトさんとの取引をきっかけに事業が大きく伸びていきました。

 

“1mmの技術”が広げた多分野への展開

―主要取引先であるマックエイト様とは、永いお付き合いだと伺いました。

濵野氏:はい。協業は35年以上になります。創業当初はヘッダー加工(鍛造)が中心でしたが、マックエイトさんから「樹脂内部にネジを切る加工ができないか」と相談を受けたことが転機でした。当時は連続加工が難しく、納期遅延が発生していたようです。そこで先代が機械を独自に改造し、量産に耐えられる設備を作り上げました。それが評価され、現在の主力事業につながっています。

 

—昭和の製品は、通信機器や医療機器など幅広い分野で使われていると伺いました。どのように事業を拡大していったのでしょうか。

濵野氏:最初は本当に小さな加工から始まったのですが、マックエイトさんとの協業を続ける中で、扱う製品の種類が徐々に増えていきました。特に大きな転機になったのは、先に少し触れましたが、樹脂内部にネジを切る加工を量産化できたことです。これが評価され、通信機器向けの部品や医療機器向けの部品など、用途が広がっていきました。

5G関連のアンテナ部品も手掛けていて、コロナ前後で特に需要が伸びました。ある通信会社のアンテナに採用されたことで、月50万〜70万個という大きな注文が入った時期もあります。電子部品全体の需要が高まっていたこともあり、工場は24時間体制で稼働していました。

また、医療機器向けは、コロナ禍で人工呼吸器やECMO(体外式膜型人工肺:重症呼吸不全患者または重症心不全患者に対して行われる生命維持のための人工心肺)関連の部品が急に必要になり、こちらも大きな需要がありました。年間100万個程度だった製品が、月20万個必要になるなど、想定を大きく超える依頼が続きました。

 

—その需要に対応するために、米沢工場を立ち上げられたのですね。

濵野氏:そうです。実は、米沢工場はマックエイトさんに内緒で準備を進めていたんです。需要が急増していた時期だったので、増産体制を整える必要がありました。工場を建ててから「実は米沢に工場を造りました」と伝えたところ、「良いタイミングで造ってくれたね」と言っていただけました。

敷地が広いので、増築の余地があります。景気や需要の状況を見ながら、2期工事、3期工事と進められるように準備しています。

米沢工場外観

 

米沢工場では廊下に並ぶアートの一つが窓で、中の職場が見える

 

 

圧倒的品質を支える仕組みと、変動市場への挑戦

—御社の強みの一つである品質面について詳しく教えていただけますか。

濵野氏:品質に関しては「不良ゼロ」を掲げています。特に画像検査機を導入してからは、7年間、不良の社外流出はゼロです。計3台の全数検査機があり、カメラ4台で複数方向から確認できるため、人の目では見落としやすい部分も確実に検査できます。人の目だけでは限界がありますし、疲労により検査の精度がおちていきます。機械ができるところは機械に任せ、人はより高度な判断に集中する。その体制が品質維持につながっています。

 

—納期遵守も御社の大きな強みだと伺いました。

濵野氏:はい。納期は絶対に守るというのが当社の姿勢です。見積り段階で若手に図面を渡し、実際に試作してもらうことで、リードタイムの乖離をなくしています。見積りと現場の感覚がずれると、納期遅延や価格の不一致が起きてしまいますから。

 

—見積り段階で試作まで行う会社は珍しいですね。

濵野氏:若手育成にもつながりますし、加工の難易度を事前に把握できるので、お客様とのやり取りもスムーズになります。「この寸法公差は出にくいので緩和できませんか」といった提案も、見積り段階で行えるようになります。

 

—生産管理や図面管理についても工夫されているのでしょうか。

濵野氏:図面管理は2年前にシステム化しました。図面をアップしておけば、横浜でも米沢でもタブレットからすぐに確認できます。品種が非常に多いので、図面管理の効率化は大きな効果がありました。

 

—一方で、どのような点を課題として捉えていますか。

濵野氏:やはり需要変動の大きさですね。コロナ禍のように急激に需要が増えることもあれば、景気の影響で受注が落ち込むこともあります。また、売上げの9割をマックエイトさんが占めているため、一社依存のリスクは常に意識しています。

 

—そのリスクに対して、どのように向き合っているのでしょうか。

濵野氏:まずは、マックエイトさんからの信頼を維持し続けることが最優先です。そのうえで、米沢工場の拡張や設備投資を進め、より幅広い製品に対応できる体制を整えています。新規案件の相談も増えてきているので、少しずつ裾野を広げていきたいと考えています。

全数検査機を通して不良ゼロの部品を製造

 


業種   電子部品製造

設立年月          1979年3月

資本金              1,000万円

従業員数          17人

代表者              濵野邦彦

本社所在地      神奈川県横浜市緑区白山4-67-19

電話番号          045-442-7623

公式HP           https://www.sho-wa-inc.com/company.html

この記事の著者

川崎 悟

川崎 悟合同会社セールス・トータルサポーターズ 認定経営革新等支援機関 代表社員

神奈川県横浜市出身。東京電機大学大学院 機械システム工学科修了。 上場企業のエンジニアから中小企業(水処理機器の商社)の営業マンに転身。「顧客ゼロ・ノウハウゼロ」から新規顧客開拓により売上高3億2000万円(営業所全体の売上高の約70%)を獲得しトップ営業マンになった実績を持つ。現在は、経営コンサルタントとして中小企業を中心とした営業戦略支援、技術営業支援などを行っている。

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