- 2024-3-19
- 取材・インタビュー
困りごとを解決する駆け込み寺に向けて
新越精機株式会社は、創業以来、金型製作の技術を磨いてきた会社である。「研削加工」「切削加工」「放電加工」の高い技術力と豊富な経験をベースにした高精度の複合加工を得意としている。培った加工技術により高精度が要求される一品モノの特注部品や短納期の要望にも応えている。本特集では、新越精機株式会社の2代目社長 藤塚敏之氏にお話をうかがった。第三回は、今後の展望について取り上げる。
持続的な成長を目指す
将来に向けて現場で取り組んでいることはありますか。
藤塚氏:現場では多能工化をすすめています。具体的には、一人で2~3の業務を対応できるようにしています。社員に対して、いきなりやってくれと言っても対応できるものではありませんので、あらかじめ期間を区切って行うジョブローテーションを数年前から少しずつ取り組んでいます。社員も多能工化の必要性を感じていて、かつ工場長含めて現場からも声があがってきたこともあり、社内での推進がしやすくなりました。特に、コロナ禍で仕事が減った時に研修に費やす時間を確保でき、危機感も共有できたことから必要性を実感し多能工化が進みました。
多能工化を推進するうえで社内の抵抗はありましたか。
藤塚氏:現場からの提案もあったので特に抵抗や反発などはなかったです。ただ、多能工化をすすめることの趣旨と効果を丁寧に説明し、理解してくれるまで何度も社員と話をしました。
以前は、上流工程と下流工程で作業量の差が生じていることで、上流工程は忙しいけれども下流工程では作業が流れてこないため定時で帰るなど全体の業務量のバランスが悪かった時期がありました。多能工化をすすめることで業務量が分散でき、今では皆が平均して早く帰れるように変化しました。皆も各自のスキル向上や業務量の負担の軽減などメリットを感じていますので、納得のうえで取り組んでくれています。また、自分の作業以外に関わることにより、全体視点で考えるきっかけにもなっていると思います。
多能工化以外ですすめていることはありますか。
藤塚氏:技術承継は永遠の課題と捉えています。社長に就任する以前から技術承継については課題と思っていて、足掛け15年くらい取り組んでいます。ある程度の改善はできましたが、まだ発展途上の段階です。作業をマニュアル化したり、動画撮影をしたりと色々と試行錯誤していますが、それだけですべてをカバーできるわけではありません。教える側の社員も、教える立場になって初めて自分が行っていた作業の気付きを得るケースも多くあります。それに関しては、自分自身の作業について、何のためにやっているのかを考える良いキッカケになったのではと好意的に捉えています。ただし、通常業務が忙しくなるとどうしても優先度が下がってしまい自発的に取り組むことが難しいので、ジョブローテーションなどで半ば強制的にやらざるを得ない環境をつくっています。職人による技術力が当社の強みでもあるので、何とかしてベテランの技術を若手に引き継ぎたいです。
将来に向けた展望をお聞かせください。
藤塚氏:お客様の困りごとを解決する駆け込み寺のような会社にしていきたいです。図面が用意されていてその通りに作ることは今でもできますので、そうではなく当社からお客様との対話を通じて課題やニーズを引き出し、解決策を提案するソリューション営業をできるようにしたいです。そうすれば、厳しい環境下においても今後も仕事はなくならないはずです。ソリューション営業は、既存や新規のお客様を問わず提案していきたいと考えています。私としては、やはり困りごとを解決しお客様に喜んでもらうことにやりがいを感じています。
ある程度リサーチしている業界はありますが、新規開拓はまだこれからです。当社の技術が役に立てる業界はないか情報収集に努めています。面白そうな業界であれば採算度外視でも挑戦したいです。
業種 金属加工業
設立年月 昭和44年2月
資本金 1,000万円
従業員数 17人
代表者 藤塚 敏之
本社所在地 東京都葛飾区立石8-54-7
電話番号 03-3696-0561
公式HP https://www.shinetsuseiki.co.jp/