お客様から駆け込み寺として頼られる会社へ (新越精機株式会社 代表取締役社長 藤塚敏之様 インタビュー②)

思いを伝えて組織を動かす

新越精機株式会社は、創業以来、金型製作の技術を磨いてきた会社である。「研削加工」「切削加工」「放電加工」の高い技術力と豊富な経験をベースにした高精度の複合加工を得意としている。培った加工技術により高精度が要求される一品モノの特注部品や短納期の要望にも応えている。本特集では、新越精機株式会社の2代目社長 藤塚敏之氏にお話をうかがった。第二回は、社長就任後の取り組みについて取り上げる。

新越精機株式会社 代表取締役社長 藤塚敏之氏


2012年に社長に就任されてから取り組んだことを教えてください。

藤塚氏:入社した当時は、会社の売上の半分以上を1社で占めている一社依存の状況にあり、不安を感じていました。製品は時代の移り変わりと共に変化をしていく中で、今後は段々と売上も減少していくだろうという危機感があり、一社依存ではなくお客様の新規開拓が必須だと考えるようになりました。このままでは10年後がどうなっているかわからないと。新規顧客開拓のために、東京商工会議所主催の受発注商談会や葛飾区で実施している展示会へ積極的に出展するようになりました。また、初めの頃は、飛び込み営業もしていましたが、なかなか受注に結び付きませんでした。ただ、今となっては良い経験を積めたと思っています。色々なジャンルや業種に挑戦し、なるべく新しい仕事を受けることを意識して継続しています。その結果、新たなお客様との取引きを拡げることができ、現在では一番の取引先でも売上構成の2割にとどめており、一社依存からの脱却を図りました。

 

営業活動はどのようにしていますか。

藤塚氏:基本は私一人で行っています。営業専門の社員は設けておらず、管理職数名が営業を兼務しています。ある程度商談がまとまった段階で社員に営業を引き継ぐようにしています。いずれは営業専門の社員を設けなればと思っていますので、そのためにITツールを導入し情報を簡単に共有できるような仕組み作りを試行錯誤して取組んでいます。最新技術に興味があるのでIT利活用のため、自ら率先して情報収集や社内推進を行っています。ただし、どんなにIT導入を行ったとしても、人でしかできないことは変わらず大事にしていきたいです。

 

問い合わせはどこからが多いですか。

藤塚氏:ホームページやメール、電話など様々なルートから問い合わせをいただきます。また、展示会で配布したチラシがきっかけの問い合わせもあります。ホームページからの問い合わせは件数がありますが、受注まで結びつくことはあまり多くはありません。受注する確度が高いのはやはり紹介案件です。最近では、今まで付き合ってきた会社が廃業し新たな取引先を探していたという理由で問い合わせをいただくことも増えてきました。

 

展示会はどなたが担当されていますか。

藤塚氏:展示会は、私と社員で対応しています。普段の業務ではお客様の生の声を直接聞ける機会はありませんので、展示会に行ったことのない社員を優先的に選んでいます。展示会は社員がお客様と接点が持てるまたとない良い機会になっています。お客様の反応を直接得られるということで社員も喜んで展示会に参加するようになりました。また、普段は全く喋らない社員がお客様と熱のこもった会話をしている姿をみて、いつもと違った一面を発見できることも個人的な楽しみとなっています。展示会は、新たなお客様や出展している会社の横のつながりを得られる出会いの場として有益なものとなっています。

展示会ブース

 

広報活動について実施されていることを教えてください。

藤塚氏:かつしかライブファクトリーに第1回から参画しています。かつしかライブファクトリーは、葛飾のモノづくり文化を知ってもらうために町工場を実際にみて体験してもらうイベントで、企画趣旨に賛同した当社を含む9社で2019年から始まり2023年には5回目の開催となりました。参加したきっかけは、株式会社ミヨシの杉山社長から以前からやりたい企画があると伺い、興味もありやってみたいと思っていたので参加しました。今では、かつしかライブファクトリーの開催日は出勤日にして、社員全員が参加をしています。展示会同様に普段やっている業務を外部の人にみてもらう貴重な機会です。参加者から「すごい」などの言葉をかけていただくと、明らかに社員の顔つきが前向きなものに変化するのがわかります。また、「ものコト100(ワンハンドレッド)」(葛飾区の若手経営者を中心とした区域・業種を超えて産業の成長を目指した会)や「東京コネクト」(東京都中小企業振興公社主催の「事業承継塾」卒業生主体のグループによる勉強会)などに参加しています。私個人として学びの場が好きということもありますが、横のつながりや情報交換の場として刺激を受けています。

 

社内コミュニケーションの活性化の秘訣はありますか。

藤塚氏:基本は顔を合わせて話をし、大事なことは抜け漏れが生じないように毎回突き詰めていくことを意識しています。具体的には、毎朝、私と役職者でミーティングを実施しています。その後で、役職者は各現場の担当者とのミーティングを13時と16時の毎日2回実施しています。ミーティング時間は特に決めておらず短いと5分程で終わることもありますが、「伝えたいことは必ず伝える」、「どんなに短くても毎回実施する」の2点は守っています。以前から私と役職者、役職者と各現場の担当者間でコミュニケーションが取れているか、伝えたことがしっかりと理解されているか、について課題と思っていました。改善が図れないかと思案していた時に、現場の社員からミーティングについての提案をもらい実施するようになりました。今ではこのミーティングが社内で定着し、当初の狙い通りの成果をあげています。また、ベテランと若手が円滑なコミュニケーションを図れる場にもなっていると思います。

 

現場からの発案ということで風通しの良さを感じますが何か心がけていることはありますか。

藤塚氏:特に意識して取り組んでいることはないと思います。ただ、話を聞くことは意識しています。その辺りが社員にとって声のあげやすい環境になっているのかもしれません。

放電加工機


業種   金属加工業

設立年月          昭和44年2月

資本金              1,000万円

従業員数          17人

代表者              藤塚 敏之

本社所在地      東京都葛飾区立石8-54-7

電話番号          03-3696-0561

公式HP           https://www.shinetsuseiki.co.jp/

この記事の著者

鈴木好之

鈴木好之中小企業診断士

2021年中小企業診断士登録。東京都中小企業診断士協会 城北支部所属。台東区中小企業診断士会所属。 大学卒業後、情報通信の会社に入社し、CATVやISPの営業や間接部門など様々な職種を経験し、現在は管理部門に従事。企業内診断士として商店街支援を軸に活動中。趣味の読書は年間100冊読了。

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