一度決めたら諦めない。特徴ある精密部品と自社ブランド品で不況のない会社へ (ザオー工業 代表取締役社長 鈴木国博様 インタビュー②)

やりきる覚悟と先頭に立って推進すること
ザオー工業株式会社は、金属プレス部品製造と銘板(ネームプレート)を製作する精密プレス部品製造会社である。創業当時からのネームプレート印刷技術を生かし、金型製作・プレス加工・シルク印刷ネームプレート製作までの一貫生産が可能な都内でも稀有な存在である。最近は自社ブランド品として、消費者向けのザオーブロックの製造販売にも注力している。第二回は、営業活動の特徴や自社ブランド品であるザオーブロック開発への想いについてお話しを伺った。

ザオー工業株式会社 代表取締役社長 鈴木国博氏

営業しかできない。でも営業ができればなんとかなる。

貴社の顧客構成や営業活動について教えてください。

鈴木氏:現在当社が依頼を請け負う業界の割合は、弱電関係が5割、自動車が3割、その他2割くらいの構成です。営業活動は、私(社長)が一人でやっています。私のキャリアはずっと営業です。父も営業社長でした。「仕事があればやれることはいろいろある、仕事さえ取ってくればブローカーとしてでも食べていける、まずは仕事を取ってきなさい。」という教えのもとで営業をやってきたので、社長になる前もなった後もずっと営業です。金型もシルク印刷も、当社には専門家がいるので任せており、私は営業しかできない。最近は昔みたいな飛び込み営業が殆どできないので、苦労はあります。いきなり訪問してもまず会ってくれないですし、電話しても断られてしまいます。最近はビジネスマッチングのような人が集まる機会を利用するのはよいかもしれないですね。サプライヤーが減っていることもあり、割と発注側も本気度が増しています。商工会議所や公社など活用できるところを積極的に利用するのが有効かと思います。

お一人での営業は苦労されるのではないでしょうか。

鈴木氏:本当は営業ができる人を入れればよいのですが、営業で仕事を取ってこないと売上があがらず経営が成り立たないという連鎖があるので、着実な経営をやるために今は自分が営業をやっています。それと営業を採用するには覚悟がいりますね。ずっとついて回るわけにはいかないので、信用のおける人で、かつしっかり当社製品をアピールし売上をあげてもらわないといけない。ここは父も一緒で踏み切れなかったところです。

採用活動はされているのですか?

鈴木氏:採用活動には苦労しています。なかなか新卒の採用は難しいです。そのため、足立区の機関から紹介を受けて営業以外の業務サポートとして人財研修センターの方等に来てもらっています。ザオーブロック(後述)のイベント時のお手伝いなどもこの機関から来てもらっています。

 

自社ブランド品「ザオーブロック」開発への想い

ザオーブロックの話題がでましたが、自社ブランド品のザオーブロックを開発するきっかけや現在の状況に関して教えてください。

鈴木氏:ザオーブロックは、金属プレス加工で出る端材を材料にした金属パーツ(玩具等)です。若いスタッフが「端材を使って製作してみました」と提案してきて出品した作品が、2011年に「TASKものづくり大賞」という、城東地区のモノづくりの品評会のような大会で奨励賞(銅賞)を受賞したことがきっかけとなり、現在の開発に至っています。評判がよかったのですが、問題点もいくつかあり、それを解決するのに6~7年かかりました。その後いきなり販売する前にまずワークショップを開始し、そこで手応えを感じました。並行して展示会ではアイキャッチになるような恐竜のオブジェをザオーブロックで制作して展示したり、様々な販売用のキットも作っていきました。そこから展示会に多数参加させていただき、去年(2022年)、スカイツリーでの大昆虫展ではカマキリとトンボのオブジェ制作のオファー頂き、製作して展示しました。  

 

デザイン料としてXXX万円は結構な投資ですね。その時の心境を教えてください。

鈴木氏:恐竜のオブジェ制作で我々中小企業が回収できるか分からないものに三桁の金額を使うのは非常にリスクが高いのでさんざん悩みました。最終的に、「やりきる、何があってもやめない」という覚悟を決めてデザイナーと契約しました。自社製品を作って展示したり販売したりすることはよくありますが、そう簡単に売れる訳はないですよね。よほど斬新だったり、見たことのないようなデザインであれば、メディアが取り上げて販売に繋がるかもしれませんが、世の中にないものなんて殆どありません。その中で出していくわけですから、日の目を見ない状況が続いて大抵の人はそこで諦めちゃうんですよね。諦めるというか、続けられなくなる。お金や人手の問題、中小企業は特に時間の問題もある。月曜日から金曜日までを本業で働き、自社製品は土日に展示会やワークショップを行うことになる。そうなると、続けていけなくなってしまう。また、自社製品は、製造業であれば作るには作れるのですが、作ったものを売るためにプロモーションしてブランディングしていかないといけない。そこが難しいのです。もちろん外部の方に手伝ってもらってもよいし、それも時には必要な方法ですが、最後はやはり自社でやらないといけない。そして行動しないといけないのは、やはり社長なんですよね。社長が先頭に立って進めていかないとだめだと思っています。

ザオーブロックで制作「トンボ」



最終的には事業の柱としたいのでしょうか?

 鈴木氏:そうなればよいと思っています。別の事業で挑戦されている先輩に、自分でマーケットを作り、価格をコントロールできるようになれば非常に強いと教わりました。その域に達するのは難しいですが、そういう目標を掲げてやっていきたいです。また、当社は完全な受注生産なので、こちらから生産してB to Cで販売できれば、不況の時本業が厳しくなっても少しは売上がたちます。世界経済の影響のないところで、趣味の世界や実用のところで買ってくれるお客様がいれば、不況になりづらい会社になれる。そのために柱の一つとして成長してくれればよいなと思っています。

 

現在、少しずつ売れてきているのでしょうか?

 鈴木氏:今は認知度を上げる段階で、認知度が上がるにつれ、少しずつ売れてき始めています。ただ、これまでワークショップや展示会をやってきた中では、やはり実用品が求められていると感じます。実用品は手に取って購入してもらいやすい。趣味の世界のプラモデルやブロックなどは、ブランド力がすごく重要。株式会社バンダイのプラモデルやレゴRブロックなど、ブランドがあれば置物として成立します。我々のザオーブロックは、リアリティを追求していますが、置物としての趣味の世界では、認知度が低いので難しい。そこで認知度を広めるために様々な発信をするのと同時に、実用品への展開も進めています。

種々のザオーブロック


業種   金属プレス部品製造

設立年月          1968年3月

資本金              10,000,000円

従業員数          18人

代表者              鈴木国博

本社所在地      東京都足立区関原2-11-26

電話番号          03-3848-2301

公式HP           https://zaoh.com

この記事の著者

大島隆裕

大島隆裕中小企業診断士

2022年中小企業診断士登録。東京都中小企業診断士協会城東支部所属。大学卒業後、化学品商社に入社し、法人営業、財務部門、海外子会社への出向等を経験。現在はバックオフィスの管理全般業務に従事するとともに、企業内診断士として支援活動・研究活動を行っている。

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