磨き上げた技術で水面計用ガラスを制す(株式会社安中特殊硝子製作所)

創業時から続く主力製品

株式会社安中特殊硝子製作所は、産業用などの特殊ガラスに特化したメーカーである。戦後まもなくから続く長い歴史の中でガラス加工の技術を高めてきた。本稿では、主力製品である水面計(液面計)用ガラスを紹介する。

水面計(液面計)とは、容器内の液体を外から目視できるようにする機器の総称だ。主に工業用ボイラーに使われていて、水面計(液面計)に用いられるガラスには、平型反射式水面計や平形透視式水面計、目盛り付きのガラス管等があり、高温、高圧などに耐えうる特性が求められる。目視で液位を明瞭に確認できるようガラス自体の透明度も重要だ。

安中特殊硝子製作所では、水面計(液面計)用ガラスを創業時から作り続けている。長年蓄積してきた技術で他社の追随を許さない。かつては数社で手掛けていたが、現在では国内1社独占状態となっている。水面計(液面計)用ガラスにおいて確固たる地位を築けたのは、顧客の要望に応え続け、支持されてきたからに他ならない。それを実現できたのはアナログ加工へのこだわりだ。

水面計(液面計)用ガラス(外観)

 

アナログの強さ

製造業全般で機械化や自動化が進む中、安中特殊硝子製作所はアナログの加工も大切にしている。職人が一つ一つ手作業で成形し、研磨を施していく。機械設備も用いるが、加工の精度を保っているのは熟練の職人によるものだ。

安中特殊硝子製作所においては安易な機械化が自社の強みを損ねる。それを強く自覚しているからこそ手加工にこだわる。多品種・小ロット生産においては煩雑な段取り替えが多く発生する。機械化では逆に生産性が落ちるので、あえて手を出さない。見据える先にはすべての顧客がいる。要望に対して迅速に対応することで信頼を得てきた。期待を裏切らない姿勢を貫く。アナログを極めることが他社との差別化にもつながっている。自動化は大量生産には向いている工法であるが、小ロット生産においては必ずしも最適解ではない。

水面計(液面計)用ガラス「平行四辺形」側面

 

人を育て、次へ繋ぐ

アナログの加工を高いレベルで実現しているのは人の力だ。創業時からの技術をOJTにより承継し、次の世代に伝える。人と人が対話を通じ、無形の技術を高めていくことをひたすら続けてきた。70年以上  もの歴史において、先人の努力を今も変わらずに引き継いでいる。製造現場では幅広い年齢の職人が密  に声をかけあっている。

成形や研磨といった加工の技術を高める一方、他の工程については協力企業のネットワークを駆使してそれぞれの専門性を活用する。限られた経営資源の中で水面計(液面計)用ガラスの付加価値を最大限  に高め、顧客の期待に応えていく。生み出された一品は水面計(液面計)に組み込まれ、インフラの中に溶け込み、これからも社会のために活躍し続けていく。

この記事の著者

石川慶成

石川慶成中小企業診断士

金属加工業に従事し、技術営業、工程設計、購買、生産管理、加工、検査測定、品質保証・品質管理を兼任。品質管理責任者として工場内の統括にあたる。中小企業出身者として、同じ立場にある中小企業やその経営者に寄り添った提案活動を日々行っている。2022年中小企業診断士登録。

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