願うは社員の幸せ。本業は金属加工業、そして異色のゴルフパター製作②(株式会社ニュープラン 代表取締役 遠藤 宏 様)

リーマンショック前の金属加工事業、そして今
 大田区仲六郷にある株式会社ニュープランは試作品加工を主力とする金属加工企業だ。1999年に創業し、短納期とアルミワイヤーカットを強みに売り上げを伸ばしてきた。コロナ禍の苦境のなかユニークな新事業パター(ゴルフクラブ)の製作を始めた。
本特集では、株式会社ニュープランの2代目社長である遠藤宏氏にお話を伺った。第二回目はニュープランの主力事業について取り上げる。

株式会社ニュープラン代表取締役 遠藤宏氏

 

主力事業の試作品事業

今の主力事業について教えてください

遠藤氏:主力事業は試作です。最終的な製品は大手メーカーの複写機や、自動車の部品らしいです。うちが製作しているのは一部品で、最終的に何に使われるか9割以上の部品で分かりません。

 

どんな加工が得意ですか

遠藤氏:得意な加工は切削です。手のひらサイズのものの加工が多いですね。マシニングセンターは7台あります。従業員は両親と僕を含めて7人、現場で作業をするのは僕を含めて5人ですね。理想的にはマシニングセンターは、比較的単純で数量を多く作る製品(数物)を1台で作りながらもう1台を動かすなど、1人で2台動かしたいですが、試作だと1人が1台に付きっきりの作業になるので、なかなかできていないのが実情です。

 

数物の依頼は少ないのですか

遠藤氏:数物の引き合いは沢山あるのですが、単価が安くなかなか受注できません。試作物は昔は単価が高かったのですが、今はそれほど取れなくなりました。それでも工数で考えると、数物の単価は試作物の半分くらいだと思います。だから数物は1人で同時に2台動かしてやっと収支が見合うような感覚ですね。

 

ホームページには、一般的に嫌がられるアルミのワイヤー加工を行うとありましたが、これも御社の強みでしょうか

遠藤氏:当社の売り上げは材料で言うとアルミが半分で、残りの半分は鉄とステンレスです。アルミのワイヤーカットをやる会社は少なく、金型屋さんやプレス屋さんでもワイヤーカットを行っていますが、材料は鉄がメインです。アルミを加工するとろ過フィルターの目がすぐ詰まってフィルターが駄目になってしまうので、アルミのワイヤー加工は嫌がられ、やる会社はなくはないですが少ないです。うちは、フィルター代も含めた単価であれば喜んでやりますよ。

ワイヤー放電加工機DIAXFA10S(三菱電機製) ※書類は修正加工済み

 

短納期が強みだったリーマンショック前

御社が、他社と差別化できていると思う点は何ですか

遠藤氏:リーマンショック前は、当社は短納期に対応できていたから生き延びていたように思います。リーマンショック前は午後3時に注文が入れば、1日後または中1日おいて納品ということもありました。例えば、午後3時に注文を受けたら、午後6時頃までやっている材料屋さんに注文し、その日のうちに材料を切ってもらい、翌朝か翌日夜には当社で加工に取りかかっていました。数点もしくは10~20個といった試作を、材料手配から加工まで平均して1週間で完成させて、その1週間後には別の受注が継続して入っている状況でした。

 

相見積もりに変化したリーマンショック後

リーマンショック後はどう変わりましたか

遠藤氏:リーマンショック後は、相見積もりを取った後に発注される流れに変わりました。リーマンショック前は「ものが欲しいからとにかく走ってくれ」と言われて、加工しながら同時に価格の交渉が進んでいました。今は、加工業者の相見積もりが出揃ってから発注されます。リーマンショック後は、10回見積もりを出して全部失注するとか、1回しか受注できないのが当たり前になりました。また、一時期は単価の安い依頼は中国に多く流れて、難易度が高い加工だけが日本に残ったイメージがありました。調べたわけではないですが、今は中国も徐々に加工費が上がり、流れが変わってきている印象を受けますね。

 

リーマン後に相見積もりになったのは、顧客がコスト感覚に厳しくなったからですか

遠藤氏:そうだと思いますね。今は周りの加工業者が暇になってきているので、単価を下げないと仕事が取れない状況です。忙しくなると周囲が単価をあげてきますから、その結果うちが受注できたということもあります。

 

営業先開拓

営業はどのようにされていますか

遠藤氏:色々な知り合いのところに僕が行って「仕事ないですか」と声掛けをして仕事をもらうことや、紹介をもらうことがほとんどです。新規開拓でいえば、交流会で名刺交換した方に再度連絡をとったら取引が始まったパターンがあります。稀なケースでは、近所に夜遅くまで仕事をしている会社があり気になっていたのですが、その会社の駐車場がうちの隣にあったので、その会社の方が車を離れるタイミングで名刺交換をお願いして「何かあればお願いします」と声をかけたこともありました。不躾でしたが、そこから取引が始まりました。

 

今感じている課題はありますか

遠藤氏:売り上げが課題です。コロナ禍中の2021~2022年に比べればだいぶ戻りつつありますが、それでも戻りきってはいないです。今はコロナ前に比べて7~8割くらいの売り上げになりました。売り上げが伸びないから、従業員にボーナスを出せなかったり、手当を十分出せないのが苦しいところです。当社は9月決算ですが前期は赤字でした。今期こそは何としてでも黒字にしたいですが苦しいですね。でも、まだまだこれからです。

 

採用活動とGoogleストリートビュー

Googleストリートビューに工場内360度写真が見られるようになっていましたが

遠藤氏:あれはGoogleの方が飛び込みで営業してきたのです。当時、飲食業はすでに同様の取り組みがあったのですが、その方は工場の写真を増やしたいと言っていました。実はこの取り組みは採用活動にも役立っています。
採用活動で若い子に会社に来てもらい面接をしたのですが、後日採用の連絡をすると「別の会社に決まった」と言われたことが何度かありました。多分その子にとって、働く場所のイメージが違ったのでしょう。もっと綺麗なところで働きたいという気持ちがあったのだと思います。当社は昔ながらの工場で油臭さもある。今の若い人はHPで会社を調べて応募しますから、それだったら初めから全部さらけ出すことにしました。それでも面接に来てくれるのであれば対応しようと思ったんです。面接はこちらも相手も時間と労力を使うので、お互いに無駄な時間になってしまいます。採用通知を出すということは他の人を断っているわけですよ。そういったことを極力無くせるのではないかという試みが合致して、Googleの担当者の方に中に入ってもらって撮影してもらいました。

工場内部はGoogleストリートビューで公開している※書類は修正加工済み



業種   金属加工業

設立年月          1999年6月1日

資本金              10,000,000円

従業員数          7人

代表者              遠藤 宏

本社所在地      東京都大田区仲六郷3-28-5

電話番号          03-3734-8611

公式HP           https://newplan1999.com/

この記事の著者

牛屋広和

牛屋広和中小企業診断士

大卒業後、建設会社にて民間建築の営業を担当。AI分野などの幅広い知識を習得し、常に最新のトレンドや技術動向に敏感になることを心がけている。2021年には中小企業診断士としての登録。自身の成長と共に顧客に貢献し、最善のアドバイス提供することを目指している。1歳の娘の子育て中。

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