~ガラス業界の駆け込み寺として~繋ぐを大切に、協力会社と力を合わせ顧客満足度向上へ(安中特殊硝子製作所 志田和海様 インタビュー②)

要望に応えるだけでなく、上をいく提案を
株式会社安中特殊硝子製作所は、産業用、工業用、研究用などの特殊ガラスを製造している会社である。70年以上積み上げてきた技術力をもとに、多岐にわたる用途のガラス製品を製造し、顧客の支持を獲得してきた。長い年月をかけて築いてきた協力会社とのネットワークも駆使して高い付加価値を生み出している。第二回は特殊ガラス製造にあたっての強みやこだわり、組織づくりへの取り組み、営業体制や販売促進の強化についてうかがった。

株式会社安中特殊硝子製作所 代表取締役社長 志田和海氏

 

 

特殊ガラスを製造するにあたって御社のこだわりや強みを教えてください。

志田氏:積み上げてきたノウハウや知見による対応力が強みの一つです。要求通りに製造することが基本ですが、図面をもとに、お客様と二人三脚でご希望に沿った製品を作り上げていくことができます。弊社の製品は、半導体関係や化学プラント、船舶のボイラー用など多岐にわたりますが、設立74年という歴史によって蓄積してきた経験値をもとに、おかげさまで顧客にも納得いただける満足度の高いガラス製品を提供できています。

 

取引先が800社以上にも及ぶということは多品種生産なのでしょうか。

志田氏:量産品、リピート品もありますが少量多品種です。案件ごとの生産が多いですね。生産性の問題もあるので少量の注文でも多めに作って在庫しておくこともあります。ただ、注文が入らなければデッドストックとなってしまうので悩ましいところです。商社との取引だと多くのエンドユーザー様を抱えているというメリットはありますが、在庫品に注文が入るかどうか読みにくいです。エンドユーザー  様との直接取引ではリピート品が多いので在庫の問題はありません。

 

値付けはどうされていますか。昨今は電気代など原価の高騰もあるかと存じます。

志田氏:案件ごとに原価を算出しています。工数、時間、材料費、協力会社への外注費など多くの要素があります。昨今の物価高については原価に含めていますが追いつきません。値上げを申請してから反映できるまで半年から一年はかかるので、値上げした頃にはまた電気代や輸送費が上がっています。原価が上がってもすぐに反映できないので、その間は利幅がない状況になっています。値上げ交渉には根拠を要求されますので情報の収集・集約も大変ですね。

寸分の狂いもなく行われる熟練のカット作業

 

最適な組織を目指して

東京の本社と工場以外にも複数拠点があります。どのような役割となっていますか。

志田氏:本社は経理や営業業務を担っています。近くに工場があり、従業員の多くはそちらにいます。大阪にも営業所があり、ここはもともと同業他社の会社を吸収してできた営業所です。関東と関西で商圏も違いますのでうまくすみ分けができています。他に独立採算で運営している工場が茨城にあります。東京の工場と同じようにガラスの生産を行っています。

 

大阪とは距離が離れているのでコミュニケーションに苦労はありませんか。

志田氏:距離が離れているのもありますが、大阪営業所はもともと別会社だったこともありこまめなコミュニケーションに苦労しました。現在では、オンラインシステムを活用したり、月に一度は現地へ赴くようにしたりして円滑に業務が進むように努めています。

手際よくガラスを磨き上げる研磨工程

 

 

信頼関係は積み上げるもの

営業や販売促進の体制はいかがでしょうか。

志田氏:東京で3名、大阪で2名の営業担当をおいています。月に20件程度新規の問い合わせがあります。ホームページ経由が多いですね。自社サイトは社内で作り、解析ツールやブログなど活用しながらSEO対策にも力を入れています。おかげさまで多くの新規顧客と取引させていただいています。

 

取引先が多岐にわたると対応が大変ではないでしょうか。

志田氏:取引先数よりも相手との関係性構築が大切だと感じています。既存の顧客でも、大きな会社では毎年のように購買担当が変わります。担当者間であまり引継ぎがされていないようで、異動の度に1からまた弊社の製品をお伝えする必要があります。先方の担当者様は値下げができれば自分の成績になるようで価格交渉に及ぶこともあります。値下げを追及されると弊社にとっては厳しいですが取引額が大きいだけに悩ましいところですね。中小企業の顧客は基本的に担当者が変わらないので定期的にお会いして人間関係を深めています。どちらにしても時間をかけて信頼を積み重ねていくことが大事です。

 

営業の方はそれぞれ担当の顧客が決まっていますか。

志田氏:担当営業は決まっていますが属人的にならないようにしています。まだシステムづくりの途中ですが、営業部内で顧客情報や自身の行動をデータ化し共有しています。円滑に営業活動ができるよう何故このようなことをするのか意味付けをしながら進めています。

 

小ロット、短納期での対応を謳っておられます。それを可能にする取り組みはどういったものですか。

志田氏:全体の生産管理をしっかりとコントロールしています。現場に過度な負担がかからないように、案件の中身を精査して、極力納期の要望に応える方針です。そして、人材の育成も重要と考えています。新しい職人が熟練の職人に付いて70年以上続くノウハウを継承しています。人が変わったとしても常に一定の品質を納期内に提供できるよう一人前に育てていくことは欠かせません。


業種       ガラス製品製造業

設立年月          1949年10月19日

資本金              45,600,000円

従業員数          30人

代表者              志田 和海

本社所在地      東京都江東区大島5-51-13

電話番号          03-3683-5161

公式HP           https://annaka-tg.com/

 

この記事の著者

石川慶成

石川慶成中小企業診断士

金属加工業に従事し、技術営業、工程設計、購買、生産管理、加工、検査測定、品質保証・品質管理を兼任。品質管理責任者として工場内の統括にあたる。中小企業出身者として、同じ立場にある中小企業やその経営者に寄り添った提案活動を日々行っている。2022年中小企業診断士登録。

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