地域に欠かせない町工場を目指して~株式会社丸和鋼材店山田信一社長インタビュー③

地域と共に盛り上がれる会社を目指して

株式会社丸和鋼材店は、熔断後の追工程が不要な精密熔断加工や鋼材卸を業とする町工場である。第三回はホームページの社長挨拶で紹介されている「大田区の町おこしにも貢献できるような地域に愛される企業」についての社長の考えを伺った。

「地域に貢献したい」と語る山田社長

 

繋がりで当社を知っていただく

会社を知っていただく活動とは。

社長: 今の業務のみで会社を続けていくのは、以前から厳しいと思っていました。当社のことを知っていただけるのであれば、お金にならなくても可能性のあることは何でもやって行く方針です。当社のホームページのバナーにはある美術家さんの芸術作品を掲載しています。美術家さんに材料を販売したことをきっかけにして、廃材を無償提供するなどの関係性ができ、お互いに何か発信できればなという気持ちがあって実現しました。従来の販路には無いことができましたので、一定の成果はあったと考えています。

 

工場見学も受け入れているのですか。

社長:今から3年くらい前ですが、国の方針で社会科見学が必修科目となる動きがあったそうです。私が卒業した小学校の担当者から、大田区の町工場数社に定期的な見学を受け入れて欲しいとの申し入れがありました。以前から地域に貢献したいと思っておりましたので、即座に引き受けました。それから毎年2回、小学校3年生の生徒さん8~10人を工場見学で受け入れています。熔断で火花が散る作業は生徒さん達の興味を引くようです。利益に直結しないことでも、当社ができることであれば、地域に貢献したいと思っています。

小学生に大人気の熔断作業

 

町工場同士の連携があるのですか。

社長:コロナの影響で売り上げが4~5割落ち込み営業にも出られず困っていたところ、玉川パイプさんからお声がけをいただき、クラウドファンディングで集めた資金で足踏み式消毒液スタンドの制作に関わらせていただきました。コロナがなければ、地域であれだけの数の企業が連携してひとつのものを作り上げることはなかったと思います。

 

もちろん当社と売り買いが活発な企業さんとはお付き合いがありますし、直接の売り買いがそれほどなくても会社同士で情報共有をしています。例えば、「ここでこういうモノあるけど」とか、「これどこかできるとこ知らない?」などという情報ですね。当社は鋼材を扱っており、加工もしていますので、問屋さんも知っています。普段お付き合いがある会社は50社で、全体では150社位と関わりがあると思います。多すぎてリスト化まではできないですが。

 

地域の中心となる工場に

今後、丸和鋼材店をどのような会社にしていきたいですか。

社長:祖父の代から3代続いた会社なので、熔断が必要とされる限りは、この業態を維持し続けたいと中長期的には考えています。しかしながら、現在の業態が成長することは難しいと以前から考えていました。そのため、従来のお客様とはしっかりと売り買いをしながら、新しい業態を立ち上げ、2つの業態の会社としてやって行きたいと思っています。ここには工場しかありませんが、別の業態で一般のお客様を呼び込めば工場自体の周知にもなりますし、地域の活性化にも貢献できるという想いがあります。

 

具体的な構想はありますか。

社長:事務所の建屋がかなり老朽化しており、全体的な立て直しを行う予定でした。この建屋は父の家族と私の家族で2世帯同居をしていますので、2階と3階を居住スペースにあてて、1階に別事業を入れる計画です。一般の方に利用していただけるような業態を考えていますが、施設を入れるだけでは面白みがないですし、町工場が経営している施設と判らなければ意味がありません。新業態は内装を工夫するなどして、町工場感が出るような仕掛けをしようと考えています。基本的には、現在の業態と新業態の2輪で経営していく構想です。

 

どのような新業態を考えていますか。

社長:まだまだ夢の段階ですが、複数ある候補の有力候補の一つにキックボクシングジムの経営があります。この土地の周囲は町工場が多く、騒音が問題になりませんし、当社の従業員ではありませんが、私の3番目の弟は過去に競技としてキックボクシングをしていました。もう一つの候補は整体院の経営で、この弟が現在身体を整える仕事をしているのが理由です。弟からも場所さえ提供してもらえるならと前向きな回答を得ています。兄弟という安心感もあるので、現時点では最有力案と考えていますが、会社の片輪を担う事業ですので、安定した利益を出さなければなりません。当社の考えを理解する人に委託をする方が良いかもしれません。どちらが良いのかは、本当に悩ましいところです。

 

新業態はできれば5年以内に実現したいと考えていますが、その前にまず本業をしっかりと上昇させていかなければという思いでやっています。

 

最後に社長が大事にしている言葉があれば教えてください。

社長:座右の銘と言うほどではありませんが、自分が会社に入るきっかけにもなった言葉です。「前を向いて歩く」。という言葉をどんなときも意識して動いていました。常に頭の中にある言葉だと思います。

 

祖父から3代続く工場で地域活性化を 山田誠一前社長(写真左)と 山田信一社長(写真右)


社名:株式会社丸和鋼材店

業種:鋼材卸・製造業

設立年月: 1966年12月1日

資本金:10,000,000円

従業員数: 8人

代表者 : 代表取締役社長 山田 信一

本社所在地 : 東京都大田区本羽田1-18-21

電話番号 : 03-3742-1421

公式HP : https:// maruwa-kouzai.com

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SS

埼玉県生まれ。大学卒業後、製造業に約30年勤務。主に現場管理や品質管理などの製造にかかわる業務に従事。業務経験を活かして製造分野で中小企業をサポートしたいと考え、資格取得を決意。2020年5月中小企業診断士登録し、東京都中小企業診断士協会に所属。趣味は旅行。

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