社内派遣会社の設立で生産性向上を!(日本生産性本部 鍛冶田良)

社内派遣会社の設立で生産性向上を

中小製造業にとって、生産性の向上は最重要課題の一つです。

コロナ禍の影響で先行きは不透明は中、製造部の増員による生産性向上策は、固定費の増加に繋がるため簡単にはできないのが実情ではないでしょうか?そこで本記事では、社内派遣制度を活用した生産性向上の方法ついて、日本生産性本部の鍛冶田良さんがお話し下さいます。

応援できない複雑な現場の気持ち

生産性向上のための改善案を検討していると、必ず出てくるのが職場間応援です。その仕組みは簡単で、時間に余裕のある部門が忙しい部門を手伝うというものです。

多くの現場で職場間応援の推進という改善策を見てきましたが、うまくいった試しがありません。その理由を考えてみると、総論賛成・各論反対の現場の複雑な気持ちが見えてくるのです。

まず、応援に行く人は、慣れた業務を行っているほうが楽、応援しても足手まといになるのではないか、新しい仕事ができるようになるとさらに仕事が増えるのではないかといったことを考え、積極的に手伝おうという気になりません。

一方、応援を受け入れる側は、応援者に対しての教育やフォローなどで自分のペースで業務ができない、作業ミスが心配、別の人が自分の仕事をできるようになると自分の仕事がなくなるといった不安を感じます。こちらも積極的に応援者を受け入れようとはしません。

忙しい部門・人を応援するという 非常にシンプルなことですが、組織の中ではなかなかできないのです。このような状況を打開するためには、会社として社内派遣会社を作ることが役に立ちます。

 

社内派遣会社の作り方

派遣会社は人と仕事の情報を集め、人と仕事をマッチングしています。社内にも同じように、人のスキルと繁閑の情報、忙しい部門と仕事の情報を集め、忙しい部門に人を派遣する仕組みを作るのです。

たとえば、人のスキルの情報は、誰がどんなことをできるのかをスキルマップという形でまとめていきます。

人の繁閑の情報は、朝礼などで指示する人に情報が集まるようにします。繁閑の情報を集める際は「今日、手伝える?」といった聞き方ではなく「今日、20分以上時間を取れる人」といった具合に、具体的な時間を提示して聞くのがよいでしょう。忙しいか暇かは、それぞれの主観で決まるので、暇の基準を明確にしておくのが望ましいでしょう 。たとえば「15分以上の手空き時間があれば暇」といった具合です。

また、どの部門がどの仕事で忙しいかといった仕事の情報も、朝礼などで収集しておき、その場で応援の指示まで行ってしまうとよいでしょう。

 

社内派遣会社がうまくいく運用方法

これまでの経験では、社内派遣会社が機能すると、全体の生産性が上がり、企業の利益率が大きく上昇します。

しかし、機能させるためには、次の3つのポイントを押さえて運用する必要があります 。

1つ目は「長期的に考える」ということです。教育したとはいえ、これまでとは異なる人が仕事をするので、ミスなどが発生します。これは投資だと思って、ミスは大目に見てあげる ことが必要です。大目に見てあげないと、応援は進まなくなってしまいます。ミスしたときは「間違えるような業務のやり方だった」と発想を変え、やり方の改善をするとよいでしょう。

2つ目は「マニュアルの整備」です。業務マニュアルをきちんと作り、応援者が確認できるテキストを用意することが必要です。マニュアルがなければ、分からない点を聞きに行くので、答える側の生産性が低下しますし、ストレスにもなります。

最近では、動画を使った、より分かりやすいマニュアルをクライアント にはお薦めしています。中小企業の場合、スマートフォンやフリーソフト、YouTubeなどを使うことで簡単に安く作ることができます。

3つ目は「応援に対する評価」です。応援したら回数や時間を集計するなど、 実績を把握し、応援した部門に対して評価をしてあげることが重要となります。各部門が改善を行い、時間を作り、他部門を応援するといったスパイラルを作れば、業績は大きく変わっていきます。

 

この記事の著者

鍛冶田良

鍛冶田良日本生産性本部 主任経営コンサルタント

青山学院大学 理工学部卒業後、中堅建材メーカーにて現場でのモノづくりを実践後、中小企業診断士を取得し、日本生産性本部経営コンサルタントとして、中小中堅企業の事業の収益力向上支援をしている。

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