社員が自慢できる、働きやすい町工場を目指して(株式会社 上田製作所 代表取締役社長 上田大輔様 インタビュー①)

スイッチと金属加工に特化して70年

株式会社上田製作所は、自動車用、産業機器用スイッチの設計製造と金属の切削加工を行うメーカーである。自動車メーカーの一次サプライヤーとして、約70年にわたり自動車部品を製造する中で培われた経験と技術からなる高品質な製品は顧客の高い信頼を得ている。

本特集では同社が取り組んできた職場環境の改革と今後の展望について、代表取締役社長の上田大輔氏(以下、上田社長)に話を伺っていく。第一回は、同社の沿革と事業内容について取り上げる。

株式会社上田製作所 代表取締役社長 上田大輔氏

 

自動車メーカーの一次サプライヤーとしての歩み

創業70年以上の歴史ある会社ですが、これまでの沿革を教えてください。

上田社長:創業は、私の祖父上田勝が昭和21年に大田区大森西の自宅で個人起業したところから始まりました。法人化したのは昭和28年です。当時は、ものがない時代でしたので、簡易な機械を使ってものをつくり、加工するというだけで商売になったと聞いています。祖父は創業時にまだ自動車メーカーの社員でもあったので、そのご縁から商用自動車向けのスイッチを生産して納める、という取引が始まったそうです。スイッチの加工のために旋盤の機械を導入したのですが、スイッチ加工だけですと機械に空き時間ができてしまうので、それを埋めるために金属加工の仕事を少しずつ受注し、現在の主力事業であるスイッチと金属加工の2本柱の基礎ができました。

その後、1985年に私の父である上田勝義が社長に就任しました。それまでも少しずつ工場を拡張していたのですが、自宅兼工場では限界がありました。そこで、私が中学生の時に我々は別の場所に転居して、自宅部分をすべて工場にする大きな拡張を行いました。

私は2000年に入社し、2009年に3代目の社長に就任しました。2019年に現在の大森南に本社を移転して、現在に至ります。

2019年に移転した新本社工場

 

上田製作所の強み、セールスポイントを教えてください。

上田社長:スイッチ、電装品については、昭和20年代から長年培ってきたノウハウがありますので、それをベースとして設計開発から量産・組立・検査まで一貫して自社で行えるというのが強みではないかと思います。また、金属加工品については、他社にも素晴らしい技術を持った会社はありますが、大田区の中で商用車の部品を月産数千の単位で生産できる会社はそう多くありません。やはり一定の品質をクリアした上で「数」を求めるニーズもありますので、その点に当社に強みがあると感じています。

また、当社は大手企業と一次サプライヤーとして直接取引をさせていただいているので、最新の情報が入手しやすい、というメリットも感じています。直近ではインボイス制度や、少し前になりますがハラスメント対策、ISO9001の取得や更新など、社会的な制度や諸問題への取り組みが中小企業としては早いほうだと思います。これらの取り組みは、工場長が中心になって取り組んでくれているので、助かっています。

金属加工を得意とする同社の主力設備

 

今後の課題などあれば教えてください。

上田社長:当社の主力事業はトラックなどの商用車向けエンジンの部品です。今後、トラックもEV化が進んでいきますので、エンジン部品そのものの需要が減っていくことも予想しています。それを補う新たな事業を創出することの必要性を感じています。そしてヒトの問題ですね。現在の社員数を増やすというよりは、世代交代をスムーズに行いつつ、教育を充実させて、個々の能力を底上げして生産能力を上げていきたいと考えています。

 

30代の若さで社長に就任

上田社長の経歴について教えてください。

上田社長:私は、専門学校を卒業した後に、横浜にあるFA機器を扱う商社に総務経理職として就職しました。4年間勤めた2000年に、祖父である初代の上田勝が亡くなりまして、その時に父と相談し、上田製作所に入社する決心をしました。入社後はデスクワークを中心に生産管理の業務に携わり、2009年に代表取締役社長に就任しました。

 

2000年に入社された当初はご苦労などもありましたか

上田社長:そうですね。もともと家業を継ぐということもまったく考えていませんでしたし、商社では畑違いの仕事をしていたので、なにも分からないところから始まりました。まずは会社の事を知ろうと思い、何を作っているのか、どんな作り方をしているのか、どういう組織なのかといった基本的なところを理解するために、暇さえあれば現場に行っていました。

また、私は26歳で入社したのですが、当時社内で最も若かったこともあり年齢面でも苦労しました。私が子供の頃を知っているベテラン社員も多く、特に社長に就任した直後は揉めることも時々ありましたね(笑)。今にして思えば、完全に私のやり方が悪かったと反省しています。

 

入社から代表取締役社長に就任されるまで、事業承継はどのように進められたのでしょうか

上田社長:入社した時点で、いつかは会社を継ぐのだと決めていましたから、常に意識して仕事をしていました。特に大きな障害もなく、事業承継はスムーズにできたと思っています。就任後も父が代表権のある会長として会社に残ってくれましたので、変わらず相談する相手がいたことは大きかったですね。

 

上田社長の経営理念を教えてください。

上田社長:当社には「ものづくりを通じて社会に貢献する」と言う社是があります。自動車部品の製造を主に行っていますが、取引先には高い品質の製品を納めることで安定した企業経営を行い、社員の生活を守る、ということを心がけています。

 

上田社長が就任されたときに、「ここは変えていきたい」と思われたことはありますか。

上田社長:私が2000年に入社したときにはまだ本社工場が大森西にありました。自分が中学生まで住んでいた場所なのでよく知ってはいたのですが、社員として仕事をしてみると想像以上に老朽化が激しく、この設備で30年、40年と続けていくことは難しいなと実感しましたね。そのため、社長に就任した際は「本社工場の移転、もしくは建て替え」を自分の大きなミッションに設定しました。

主力商品である商用車向けのスイッチ


業種   自動車用、産業機器用スイッチの設計・開発・製造、金属切削加工

設立年月          1953年7月

資本金              30,000,000円

従業員数          42人

代表者              上田 大輔

本社所在地      東京都大田区大森南4-13-7

電話番号          03-6423-7520

公式HP           http://www.ueda-mfg.co.jp/

この記事の著者

玉川 信

玉川 信

2021年中小企業診断士登録。会社員として営業職を経験した後、現在はコインパーキング運営会社を経営。自らが中小企業経営者であることから、経営者でなければわからないお悩みやご苦労に寄り添った経営支援をモットーとする。

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