地域に欠かせない町工場を目指して~株式会社丸和鋼材店山田信一社長インタビュー①

高い熔断加工技術でお客様に貢献する

大田区本羽田にある株式会社丸和鋼材店は、精密熔断加工や鋼材卸を業とする町工場である。通常、熔断後は切断面の削りや磨きなどの仕上げ作業などが必要となるが、丸和鋼材店の技術により誤差1㎜以下で熔断加工を行うため追工程が不要であり、高品質を求めるお客様からの信頼も厚い。第一回は山田信一社長に、株式会社丸和鋼材店の熔断加工技術がお客様に評価されている理由を伺った。

株式会社丸和鋼材店 山田信一代表取締役社長

 

誤差1mm以内の熔断技術

どのようなお客さんが多いのでしょうか。

山田信一代表取締役社長(以下社長):町工場のお客さんは中小企業が多いのですが、当社のお客様は大会社から中小企業まで幅広くいらっしゃいます。オーダーメードに近い受注が多く、昨年は1年間で1万種類程度の注文がありました。お客様の業種は、電車、飛行機、自動車などの乗り物関係やエレベーター、建築資材、家電まで様々です。最終製品の材料としての納品がほとんどで、お客様からの品質的な要求度の高いことが特徴です。

 

鋼材卸も手掛けていて、幅広いラインアップの鋼材を扱っています。在庫が発注点になったら、浦安工業団地から仕入れます。コロナ禍で物流が混乱し、どこに行っても鋼材が手に入らないこともありましたが、現在はそのような混乱はなく落ち着いている状態です。

 

鋼材の熔断は誤差1mm範囲を目指しているそうですが。

社長:熔断加工は5㎜程度の誤差がある加工が一般的ですが、当社は精度が1mm違えば別の製品と考えて加工をしています。お客様からの依頼で最も厳しかった要求は0.5mm精度の注文でした。さすがにこの精度になると、鋼材の厚み、長さ、季節の気温変動などを考慮しても、初見でうまくいくことは稀です。まず1回熔断を行い、鋼材の冷却による収縮分を微調整して、規格通りの精度で製品を納品しました。実はこの話には後日談があります。お客様が金型の遊び分を見越して注文したので規格通りの精度では困るとの理由で返品になりました。その後は規格よりも0.2~0.3mm大き目の製品を納品するようにしています。

 

誤差と言えば、1つの鋼材から左右同じ大きさの2つの穴を熔断で中抜きをする製品でも気を使います。左右で同じ穴を熔断しても加工してみると非対称の製品ができてしまうのです。これは、一つ目の中抜きで鋼材に熱がかかり膨張するので、熱による材料の膨張を考慮せずに二つ目の穴を同様に中抜きすると、製品が冷めたときには収縮によって製品が非対称になってしまった事例です。10回以上の試行錯誤の末、なんとか左右対称の製品を作ることができました。

mm単位の精度で左右対象に熔断された製品

 

 

普通の熔断では難しい加工でお客様に貢献

寸法以外で難しい加工はありますか。

社長:鋼材を立体で熔断して欲しいという依頼です。立体の加工は鋳物を使うことが多いのですが、鋳物では安全基準を満たす強度が出ないと伺いました。鋼材の溶接でも同様に強度不足になるので、鋼材を立体加工できる業者を方々探し、やっと当社にたどり着いたお客様がいらっしゃいました。鋼材の立体加工は1枚の鋼板からお客様の要望の形を熔断のみで切り出します。工程が複雑で作業時間も長く、途中で失敗すると新しい鋼材で最初の工程からやり直さなければなりません。当社では、技術力、マンパワーおよび相当の作業時間が必要でしたが、お客様の予算も限られており、厳しい仕事になりました。

 

あとはレーザー加工より価格の安い熔断加工で、レーザーで加工したように仕上げて欲しいという依頼です。熔断した製品を手作業で全面サンダー仕上げして納品しました。また、レーザー加工で穴開けができない製品の熔断をしたこともあります。25㎜厚の製品にΦ12.5㎜の穴を開ける仕事でした。レーザー加工会社では膜厚以下になる穴開けは引き受けてもらえず、熔断を引き受ける会社もなかったため、依頼主は自社のドリルで穴開けをなさっていたそうです。しかし、その方法では芯ブレの問題があり苦労しているという話を伺って、当社の試作品を提案しました。その後は、継続したご注文をいただいています。当社には一般的な熔断会社ではできない相談が持ち込まれることが多いです。

 

価格面ではどうでしょうか 。

社長:当社は同業者のなかでは高めの価格を設定しています。一般的な熔断は熔断後に切断面の削りや磨きなどの仕上げ作業を行うことが前提ですので、当社ほどの精度で熔断していません。当社は切断面の削りや磨きなどの仕上げなどの追加工をできるだけ省く熔断をしています。追加工を含めたコストと熔断のみの工程のコストとを比較していただき、トータルコストでは丸和鋼材店の方が安いよね、とお客様に言っていただける仕事を目指しています。熔断加工はレーザー加工より安いので、レーザー加工で行う追加工なしで部品をはめ込めるようにする熔断や追工程で一切削らないですむ熔断などの仕事が多いです。

 

例えば東京スカイツリーの展望台より上部を支えるジョイント金具と呼ばれる三角形の部品は、追工程で一切削らないですむ熔断の仕事でした。ジョイント金具は柱の間に三角形の部品をはめ込み、立てていく柱が倒れてこないようにする補強材です。補強材ですので柱にあてがう面を溶接して固定しますが、金具が正しく直角に熔断されていないと、あてがう面が柱から浮いた状態になり、必要な構造強度がでません。正しく直角に熔断されていない金具は、長方形の面を削って直角にする追工程が発生します。東京スカイツリーの建築に、当社は熔断工程のみで作成した千個近くの金具を納入しました。追加工が発生しなかったことで、時間とコストの面でもお客様に貢献できたと思います。

やり直しができない立体溶断作業風景

 


社名:株式会社丸和鋼材店

業種:鋼材卸・製造業

設立年月: 1966年12月1日

資本金:10,000,000円

従業員数: 8人

代表者 : 代表取締役社長 山田 信一

本社所在地 : 東京都大田区本羽田1-18-21

電話番号 : 03-3742-1421

公式HP : https:// maruwa-kouzai.com

この記事の著者

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埼玉県生まれ。大学卒業後、製造業に約30年勤務。主に現場管理や品質管理などの製造にかかわる業務に従事。業務経験を活かして製造分野で中小企業をサポートしたいと考え、資格取得を決意。2020年5月中小企業診断士登録し、東京都中小企業診断士協会に所属。趣味は旅行。

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