0.001mmの凹凸もない“ゼロ”を作り出す技術力(関鉄工所 関社長インタビュー③)

「社会に貢献してこそ技術者」未知への挑戦 

ひょんなことから、今まで関わったこともない業種と協業することになった関鉄工所。物事の根本的な考え方の違いなどから、対立やうまくいかないことが多かったという。未知なる業界への挑戦の軌跡と、技術者としてあるべき姿について代表取締役社長の関英一氏にお話をうかがった。

異なる業種との協業は困難の連続

最近、新たに取り組まれたことがあれば教えてください。

関氏:介護サービスを提供する企業と協業をして、車いすの開発を行っております。介護サービスの業界の方々とはほとんど接点がなかったのですが、たまたま会合でお話する機会がありました。その際、体が不自由な人がどのようなところで不便を感じているのか、どのようなものがあればその人たちの生活をよくすることができるのか、考えたこともなかったような話をたくさんしていただきました。いろいろな話をしているうちに車いすの難点や、改良したい点をうかがい、設計や加工、組立まで扱う当社だからこそできることがあるのではないかと思い、協力させていただくことになりました。

 

実際の車いす開発にあたっては、どのようなところを改良することになったのですか。

関氏:あまり車いすに触れたことが無い方はわからないかもしれませんが、車いすをまっすぐ前進させることは結構難しいのです。道路は両サイドに排水溝があり、水が排水溝に流れるように両サイドが若干下がっているため、まっすぐ押しているつもりでも排水溝に向かって曲がってしまうことがあります。そのため、前輪を固定することで、左右に曲がってしまうことを防ぎました。ただ、前輪を固定してしまうと、左右に曲がる際、前輪を持ち上げなければいけません。そこで、少ない力で前輪を持ち上げられるように改良することで、前輪を固定していても簡単に曲がることができるようにしました。また、少ない力で前輪が持ち上がるため、段差を上る際にも容易に段差を上ることができます。そのような改良を施すことで、お年寄りの方でも、車いすを押して出かけやすい環境を作ることができるのではないかと考えています。

その車いすの恩恵を受ける人は、車いすを使う全体数からすると微々たる数かもしれませんが、喜ぶ人が少しでもいるなら頑張って届けたいなと、そう思っています。

 

まったく異なる業界との協業は、どのようなことがありましたか。

関氏:根底にある考え方や使用する専門用語が異なっているため、大変なことばかりでした。普段通り話していたつもりだったのですが、「今日1日、関さんの話は100%わかりませんでした」と言われたこともありました(笑) 。

いつもの取引先とは基本的に工業言語を使って意思疎通が図られていたため、意識したことはありませんでしたが、これは業界用語だな、一般的には理解しにくい言葉だな、ということを考えるいいきっかけになりました。また、我々は、車いすは「人を“運ぶ”」道具としてとらえていたのですが、先方は「人を“乗せる”、人が“座る”」という感覚ですので、そこでもズレがたくさんありました。我々が普段の感覚で「この程度でいいのでは」と思っても、先方は人の命を乗せている車いすなので、「完璧」を目指します。その辺の認識のズレも、何度も話し合いをするなかで解消していき、最終的には一緒に同じ方向を向いて完成に向かうことができました。

 

社会に貢献するための技術

今後やりたいと思っていることはありますか。

関氏:最近、人を幸せにする仕事をしたい、と思うようになりました。今までは、会社の利益のために仕事をやってきたところが多かったのですが、私たちが持っている技術は、「社会に貢献するため」にあるのだと、考えるように変わってきました。

 

何かきっかけのような出来事があったのでしょうか。

関氏:以前、ある個人のお客様から問い合わせがあり、自分のイメージしているハシゴを作ってほしいという依頼がありました。質感であったり素材であったり、非常に細かい要望だったのですが、当社の技術やコネクションを生かして、お客様がイメージするようなハシゴを作ることができました。結果的に、そのハシゴは数百万円かかりましたが、お客様は非常に喜んでおられ、その後の人生が豊かになったのだろうな、と思いました。もちろん、企業様の工場に機械部品を納品することも、世の中に貢献しているに違いないのですが、直接エンドユーザーと接することで、より自分たちの技術で人々を幸せに、豊かにしたいと考えるようになりました。

お客様の細かい要望に応え完成したハシゴ。

 

 

「社会貢献」のようなことを企業としてやっていきたいということでしょうか。

関氏:私だけではなく従業員全員が、自分たちの技術を活用して「社会貢献」をするという気持ちを持ってほしいですね。先ほど話した車いすの開発もそうですが、「社会貢献」につながる仕事をすることで、モチベーション向上や会社の意義を感じることができると思います。せっかく毎日必死に作業して手に付けた技術ですから、それを還元できなければもったいないですよね。「社会に貢献してこそ技術者」だと思います。

㈱カラーズと共同開発を行った車いす。完成までに6年の歳月がかかった。

 

介助用車いすの特許状。


業務内容          産業機械に関する部品製造、設計、組立、修理、出張修理

設立年月          1956年4月10日

資本金              3,000,000円

従業員数          20人

代表者              代表取締役社長 関 英一

本社    東京都大田区大森西6-7-11

電話番号          03-3761-3167

公式HP           https://sekiiron.com/

この記事の著者

堂田恵耶

堂田恵耶

1992年生まれ。埼玉県久喜市出身。都内在住。千葉大学文学部行動科学科を卒業後、生命保険会社に勤務。海外人事総務、海外子会社管理業務に従事し、2020年から法人営業を担当。福利厚生や健康経営等、企業の経営課題に対するソリューションを提供している。2020年度中小企業診断士試験登録。

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