中小企業のデジタル化の失敗を防ぐポイント(日本生産性本部 鍛冶田 良)

中小企業のデジタル化の失敗を防ぐポイント

中小企業のデジタル化支援の現場での気づき

スマートフォンやインフラの普及、データ処理技術の進展など、様々な要因を背景にデジタル化が進んでいます。さらに、新型コロナウイルス感染症蔓延防止のためリモートワークが推進され、業務のデジタル化を急激に進めている企業も少なくありません。中小企業の生産性向上を支援している私も、デジタル化の相談を受ける件数が増加しています。

デジタル化は生産性向上につながることも多い一方、うまくいかないことも多いものです。現場でよく見られるのは、①投資に見合う改善効果を得ることができない、②デジタルツールを導入しても現場で活用がされず、当初想定していた効果を得られなかったという2つの状況です。

 

うまくいかない原因

 デジタルツールの導入による投資効果が得られないのは、過大投資になっていることが多いからです。過大投資の原因としては、①デジタルツールへの期待が高まり、様々な機能を付加してしまうこと、②例外処理も含めてすべてに対応しようとしてしまうことが挙げられます。

 あるクライアントでは、生産管理システムの活用度を調べたところ、活用していたのは受発注に使う帳票の発行だけで、残りの9割の機能は使用していませんでした。

 また別のクライアントでは、年数回しか発生しない例外的な業務に対してもRPAの導入を検討していました。人手で行っても3時間くらいの業務に、年間百万円弱の費用をかけるところでした。

 

デジタルツール導入の前にすべきことは業務の見直し

 このような失敗を防ぐためには、業務を冷静に見つめ直すことが必要です。どのような業務があるのか、個々の業務がどのような効果をもたらし、どれくらいの時間をかけているのかを明確にするのです。

業務を見つめ直すための手法の一つが業務の棚卸しです。業務の棚卸しは、行っているすべての業務を洗い出し、それぞれに使っている時間を明確にしていく手法です。(具体的なやり方は下記の動画をご覧ください。)この手法により、どのような業務があり、どれくらいの時間をかけているかが明確になります。地味なやり方ですが、業務に潜む問題点が明確になります。

 業務棚卸表の中の「標準化されていて、時間のかかっている業務」からデジタル化に着手すると、失敗は少なくなります。

 「業務が先、デジタルツールが後」と考え、デジタルツールは業務で使う道具であることを認識することが最も重要なのです。

 

業務の棚卸しの具体的なやり方は、こちらの動画を参照ください。

https://www.youtube.com/watch?v=JfNnL3BwUBs

 

この記事の著者

鍛冶田良

鍛冶田良日本生産性本部 主任経営コンサルタント

青山学院大学 理工学部卒業後、中堅建材メーカーにて現場でのモノづくりを実践後、中小企業診断士を取得し、日本生産性本部経営コンサルタントとして、中小中堅企業の事業の収益力向上支援をしている。

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